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こちらを見て、頬をぷくっと膨らませながら、桔音が口を開いた。
「笑い事じゃありませんっ!桜閣様はいつも頑張っているのに、夢のせいで休む事もままならなくなっているんですよ!?」
…怒っている、のかな?
桔音はいつも、誰に対しても警戒を解かずに淡白で、声も表情もいつも変わらない。私の前だと少し表情は緩むけれど、ここまで分かりやすく変化する事は滅多になかった。
その事にびっくりしている私を置いて、桔音は話を続けた。
「桜閣様は休みが足りないから、休める時に休まなきゃなのに!謎の夢のせいで、寝る事が難しくなっているのに!こんな生活じゃ、いつ死んでもおかしくありません!」
そこまでを言い終えると、目に僅かに涙を溜めて、こちらをじーっと見つめる桔音。
正直に言えば、ここまで桔音が私に対して怒るとは思っていなかった。
…親友でありたいと、親友だと思われてほしいと、そう思っている筈なのに。願っている筈なのに。
(…どうして?どうして私は…桔音に信頼されてないと…警戒されていると思っていたの?)
そう考えた瞬間、頭に僅かな痛みが走った。よく言う例えだと…頭を鈍器で殴られた、そんな感じの痛みだった。痛みの余韻がひしひしと伝わってくる。
『――ごめんね。』