雨が好きだと嘆いた日、僕は嫌いだと否定された。
何故好きなの?と問われたから、楽器みたいだからって答えた。
逆に何故嫌いなの?と問うたら、事故が多いからと答えられた。
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咲藍(雨は好き?
湊(嫌いです。
咲藍(どうして?
湊(事故が多いからですかね?
咲藍(何故疑問形なのよ
湊(咲藍さんは雨、好きですか?
咲藍(えぇ。楽器みたいに綺麗な音色を奏でてくれる。
「「昔、貴方と同じ質問をした人がいたの」」
「「そして、同じ答えを言った人がいた」」
雨脚が強くなった。
ビニール傘を叩く雨の音。
地面に、看板に、車に、打ち付けられる雨の音は次第に大きくなり、話し声は掻き消されてしまう。それでも彼らはお互いの声を聞き逃さなかった。
咲藍(……..紗倉 湊音
あの不思議な作文を書いた少年の名前だ。
湊 咲空 と 紗倉 湊音
漢字と順番は違えど、読み方は一緒だ。
咲藍(……少し、昔話をしよう。
雨風を凌ぐような優しい声でそう呟いた。
◆
─────特別親しいという訳でもなかったけれど、周りから夫婦と呼ばれるくらいには相性が良かったらしい私と貴方。
お互い深く干渉はしなかった。
だから好きになる筈はないと思っていたのに、何時しか私の心はさくらで埋もれていた。
その気持ちに気付いたのは、貴方がサクラとなってシんだあの日。
埋もれていたさくらが散ってしまったかの様に、心に穴が開いた。
その穴はいくらピアノを弾いても埋まることが無かった。
そして私から笑顔を奪った。
毎日毎日、壊れた人形の様にピアノを弾き続け早6年。突然聞こえたその声に、手が止まった。
「やっと見つけた」
私の世界に光が戻った。空になった心にさくらが舞い戻った。
自然と涙が溢れて、それを見た貴方がオドオドしながら私を心配してくれた。─────
◆
咲藍(………ねぇ咲空。
貴方は湊音なの?
湊(…………..僕は「さくら」なんですよ
「貴方の心に埋もれていた、さくらなんですよ」
第7話「Helping hand」
コメント
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どうしてこんなにも凄い話をかけるんだあああああああ! 感動して泣いたよおおおおおおお!