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目を覚ました瞬間、俺は確信した。
ーーこれ、絶対まともな転生じゃない。
体は軽い。視界はクリア。
なのに、天井がない。壁も曖昧。
白い空間に、病室っぽい床だけが存在している。
「…いや、雑じゃない? 世界設計。」
起き上がって服を見る。
知らない服。ピッタリすぎて逆に怖い。
「転生したはずだよな、俺…。」
「ーー意識確認ヨシ。」
足元から声がした。
「…は?」
見下ろすと、そこにいた。
ネコだ。
正確には、ネコ型ロボット
丸いフォルム。金属ボディ。
色はーー青くない。
ポケットは…あるような、ないような。
「…ちょっと待て。」
嫌な既視感が、脳を殴った。
「お前、その形…どっかで見たことあるぞ。」
「当ユニット、神(?)の使いデス。」
ネコが、機械音声で答える。
「私は監督補助ユニット、通称《ミトラ》デス。」
「いやいやいや。」
俺は一歩引いた。
「ネコ型ロボットって時点でアウトなのに、そのフォルムは完全にーー。」
「類似キャラクターの存在は把握していマス。」
「把握してんのかよ!」
「著作権的配慮により、色・性能・性格は差別化されていマス。」
差別化ってそこかよ。
「じゃあ道具出すの?」
「出しまセン。」
「夢ねぇな!」
ミトラは気にせず続ける。
「ミトラは、あなたに必要な情報を提供する役割を担っていマス。」
「神(?)の使い、だっけ。」
「ソウデス。なお、神(?)は現在、『めんどくさいから任せた』と言っていマシタ。」
「あの人さぁ…。」
想像通りすぎて、逆に腹も立たない。
「じゃあ聞くけど。」
俺は周囲を見回しながら言った。
「ここ、どんな世界なんだ?」
ミトラの目が、ピッと光る。
「ーーその質問には、現時点では回答できまセン。」
「便利な言葉だな、それ。」
「代わりに、事実だけを伝えマス。」
ミトラは指(っぽいもの)を一本立てた。
「あなたは現在、人間デス。」
「それは分かる。」
「この世界は、高度に管理されていマス。」
「不穏。」
「あなたは“想定外要素”デス、」
「もっと不穏。」
「しかし、ミトラはあなたの味方デス。」
最後だけ、やけに強調された。
「…信用していいんだよな?」
「ミトラは、嘘をつきまセン。」
一拍。
「ただし、すべてを話さないだけデス。」
「それを嘘って言うんだよ!」
そのとき。
スゥ…と、空間の一部が動いた。
壁だと思っていた白が、静かに割れる。
「外部環境への接続が開始されマス。」
ミトラが言う。
「まもなく、あなたはこの世界に出マス。」
「心の準備とかないの?」
「必要ありまセン。」
ドアの向こうから、
かすかに“音”が聞こえた。
規則正しい、人工的な音。
「なあ、ミトラ。」
俺は一歩、ドアに近づきながら聞いた。
「この世界、平和…だよな?」
ミトラは、ほんの一瞬だけ黙った。
そして、こう答えた。
「ーー非常に、安定していマス。」
その言い方が、一番ヤバい。
ドアが開く。
俺はまだ知らない。
この世界が、どれほど人間に優しくて、残酷なのかを。