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アリィ「次こっち。」
アマラ「うひぃ〜!こりゃ大変だ…!」
ジークが兵士の1人を気絶させたと同時刻、アリィとアマラは兵士から逃走し続けていた。
アマラ「コフリーが選んだ道なら挟み撃ちはされにくいだろうが…このままじゃ埒が明かないな…!」
アリィ「そうだね。」
アリィは素っ気なく、ただ一言答えた。
アマラ「ってここ行き止まり…!?」
アリィ「安心して、わざと選んだんだよ。」
兵士の軍勢「追い詰めたぞ!さぁ観念しろ!」
アリィ「悪いけれど、そう簡単に捕まるほど諦めの良い人間じゃないの、私。」
アリィはそう言うと、あるものを投げる。
兵士の1人「なんだこれ?花?」
兵士の1人が疑問に思い、投げられた花に手を触れようとする。すると、ガタイのいい隊長だろうか。恐らく高い役職の人間が叫ぶ。
隊長と思わしき人間「それに触れるな!」
兵士の1人「え?」
しかし間に合わず。触れられた花は噴煙を撒き散らす。
噴煙が撒き散らされる寸前、アマラはアリィを抱き抱え屋根の上に離脱する。
アマラ「アリィ平気か?煙を吸ってたり…」
アリィ「平気。吸ってても私はあれくらいなら大丈夫。アマラが追い詰められたフリをしてくれたおかげで、兵士の油断を誘えたよ。ありがとう。」
アマラ「…ああ。」
(演技じゃなかったなんて口が裂けても言えねぇ…!)
アリィ「メクチカ作戦、大成功だね。」
決行日数日前のこと。
ジーク「なるべく早く終わらせるけど、ずっとただ逃げるだけで、時間って稼げそうか?」
アリィ「ただの追いかけっこなら出来たけれど…」
コフリー「相手は王城に勤務してる兵士だ。ずっと、そのままのやり方ではいずれ捕まるだろうな。」
キール「それこそ包囲網を作られれば終わりですね。徐々に狭くなっていき、最終的にどこにも逃げられなくなる。こちらより、人数はあちらのが優勢ですからね。」
アマラ「あんまり本当にヒトを殺す訳にはいかないしな。理想は気絶か昏睡だが…中々そう上手い話はないよな。」
アリィ「あ、ならはい。」
思考の海に沈んでいた空間にアリィが挙手する。
アマラ「なんだねアリィくん。」
アリィ「ノリノリじゃん。昏睡ならいい方法があるよ。ジークも知ってるはずだよ。」
ジーク「俺も?」
アリィ「ほら、あれ。メクチカの花。」
アリィがメクチカという単語を出すと、ジークの顔がハッとする。
ジーク「そうだ!メクチカの花だ!なんで忘れてたんだ!あれなら大勢を昏睡させられる!」
コフリー「ええと…」
アマラ「悪いがアタシ達3人は置いてけぼりだぞ。どんな花なのか教えてくれないか?」
アリィ「えっとね。メクチカの花は、比喩とか何でもなく花なんだけど…その生態が爆弾みたいなものなんだ。」
キール「全くもってどういうことか…」
ジーク「アリィ、多分実演した方が早いと思う。花はあるんだよな?」
アリィ「なかったら言わないよ。そうだね。3人は危ないから少し下がってて。」
アマラ「お、おう。」
アリィの指示に従って3人は大人しく下がる。下がったのを見届けると、アリィは1輪の花をそっと慎重に置く。
アマラ「それがメクチカの花か?」
アリィ「うん。ジークいい?」
ジーク「ああ。」
アリィ「えい。」
ジークが返事をすると、アリィは白金色の花弁を指でそっとつつく。直後、花から白色の噴煙が撒き散らされる。目の前に光景に3人は硬直する。真っ先に足が動いたのはキールだった。しかし、すぐに制止される。
ジーク「近付くな。俺達なら平気だ。」
アリィ「私達は煙たいくらいにしか感じないから大丈夫だよー。」
片手で煙を仰ぎながらアリィは立ち上がる。
コフリー「これは…」
ジーク「毒だ。こいつは悪意の塊みたいな習性でな。ちょっとでも刺激を与えれば、この通り撒き散らす。」
アリィ「麻酔毒って思ってもらえればいいかな。」
アマラ「毒って…まずいんじゃ…」
アリィとジークは静かに顔を見合わせる。毒が効かないのはセヌス国籍の人間特有の抗体があるからだ。しかし、国籍を教えればその分指名手配者として特定されやすくなる。言葉は交わさない。何年も共に旅してきた相手なのだ。これくらいのことであれば伝わる。ジークは1歩後ろに下がる。アリィから伝えろ。そういうことだろう。
アリィ「…私達はセヌス国籍なんだ。」
キール「年間で自然に殺される人が最も多い国ですね。」
アマラ「毒の国なんて呼ばれてるところだな。その分医療技術も高いが。」
キール「うーん…それは分かったし安心ですけど…効果がいまいち分からないというか…」
アマラ「よし!」
コフリー「っ…!?」
キールの言葉を聞いた直後、アマラは勢いよくコフリーを倒す。咄嗟のことにコフリーは為す術なく、メクチカの花に向かって倒れていく。
アマラ「どうだー?意識あるか?」
コフリー「……。」
コフリーからの返事はない。
アマラ「効果はバッチリみたいだな!」
キール「味方で試さないでくださいよ!」
ジーク「それセヌス国では雑草扱い。」
キール「こっっっわ!?」
アリィ「ちなみにこれ、地面に突き刺しとくと、次の日には根っこがはるよ。」
アマラ「なにそれきっしょ…。」
アリィ「アマラにも効かないのは意外だったけどね。」
アマラ「メシュエネはなにかと頑丈だからな。でも、お前アレを持ち歩いてたのはどうかと思うぞ…。」
アリィ「まぁまぁ。」
(本当は私とジークの逃走用に保管してたんだよね…。繁殖力が強いから、育つ時間さえあればほぼ無限だし。)
アリィ「でもこれで根こそぎ狩れた訳じゃない。」
アマラ「ああ。砂漠に適応できるセヌス人は滅多に居ないが、メシュエネとなれば話は別だ。」
アリィ「メシュエネ…砂漠の民と呼ばれるほどの砂漠での人口を誇る種族。多分あの隊長っぽい人はメクチカの花のことを知ってたみたいだし、狩れてはないと思う。」
アマラ「どうするんだ?相手もメシュエネだったらアタシは無理だぞ。」
アリィ「雇い主なんだからもう少し考えて欲しいんだけど…」
アマラ「ヒトには不得意、得意がある。私は力仕事。もしくは嘘をついてるか見抜くくらいだ。この作戦はお前にかかってる。」
アリィ「候補はメシュエネか、セヌス人。セヌス人ならやりようがある。特定すればいいだけだよ。ルートや方法は私が選ぶ。アマラは、追いかけてくるのがどっちか見抜いて。人の心を読むのは得意なんでしょ?」
アマラ「あの時聞いたこと怒ってる…?」
アリィ「?なにが?」
アマラ「まぁいいや、あいわかった。」
兵士「上だ!」
アリィ「見つかっちゃったね。やるよ。」
アマラ「覚悟ならバッチリだぜ。」