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雪景色、未来へ。

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雪景色、未来へ。

10 - episode10

2025年11月04日

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「なぁ桃、一度も外を出れないのか?」

そう聞くと、桃が少し医者を見てからこちらを見て

「体調良ければいいんじゃない?」

それに嘘は感じなかった。

なのに、どうして医者も黈も悲しい顔をするのだろう。どうしてそんなに辛い顔をするのだろう。翠も赫も、瑞もそんなに嫌な顔をするの。

桃だけが笑顔でいた。


~黈side

嘘だよ、

桃々どうしてそんな平気な顔して嘘をつくの。

どうして、笑ってるの、おかしいよ。

だって桃はもう、長くない。


だから外になんて行けるはずがなかった。

たった1人だけが桃の言うことを信じていた。

いや信じたかったんだろう。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

「じゃあさ、桃ッ、元気な時教えてよ。 」

「俺がさ桃のこと、海とか沢山行ってさ!」

「思い出作って、それで…」

そこまで話した時に赫が止めた。

「…なに、」

「言っちゃいけねぇとは思うけどさ、」

「…桃は外には出れないよ」

そう赫が言った、

翠もみんなして赫の意見には同意していた。

桃のことを見ると、笑顔でこちらを見ていた。

出れない?嘘だよ、だって…こんな元気そうでさッ、もう残りの人生病院でいろなんて、

「…嘘だよな、桃ッ…だってほら、ッ桃は!」

信じれるわけない。

信じたくない。

なぁ桃…嘘だよって言ってくれるよな?

ほら、未来が見るような顔して、言ってくれればッ…俺だって安心出来るんだ。

「…紫、」

俺の名前を呼んで、桃が俺の手を取って微笑みながら言った。

「いいよ、」

その感情はなに?

教えてよ、桃。わかんない。

なんの“いいよ、“なんだよ…。

「…俺の事連れてって、楽しませて?」

医者がすかさず止めようとしたが、桃が人差し指を立てて黙るように指示した。

周りのヤツらもそれがどういう意味か理解していたのだろう。

でも俺だけは、

「なら海とか桃の行きたいところ行こう。」

そう桃の提案に乗って誘う。

桃が微笑んでくれた。

それだけでよかったんだ。

「俺この病院の中庭が好きなんだ。」

「行こう?」

そう桃が誘ってくれるので俺はその誘いに乗った。桃がふと立ち止まり、

「先に行ってて。すぐ追いつくから。 」

そう言うので言葉通り先に病室を出た

~桃side

「…お前どういうつもり?」

赫が不安そうな顔をして問う。

「…いいじゃん、だってどうしようと俺に未来はない。」

そう言うと医者も全員も止めようとしなかった

「…最後くらい紫に嘘ついても許されるかな」

普段感情や嘘とかそんなことすぐに気づく紫が俺の嘘に気づかず周りは気づいていた。

それは、信じたくないからだろう。

ならその信用を最後まで持っておく。

だってその方が、お互い幸せだったから。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

「…何処に行こっか。」

そう桃が声をかける。

「…そうだな…海には行きたいな。」

「寒いよ?」

「そうだな…」

なんて何気ない会話の中に何処か終わりを感じるのは気のせいなのだろうか?


いや俺が気の所為にしたいだけだろう。


勘違いだと教えて欲しい。


「…俺ら20歳なってお酒飲んで、笑いあって生きていけるよな?」

そう聞くが答えは“YES“の返事のみを期待していた。

なのに、桃はその問いに答えずただ黙っていた。少し期待させてよ。

「…ッ桃ッ!」

俺は声を少し荒らげて桃を呼んだ。

俺の頬に1粒の水が流れ落ちた。

桃は俺のことを見てくれなかった、それでも“なに“と返事してくれた。

「…ッ…好きだよ。」

この言葉はあと何回言えるのだろう。

“俺も“なんて返してくれる返事はあと何度聞けるのだろうか。


俺は桃と何度会えるのだろうか。


そんなことを考えてしまうと俺は桃のところへ行けなくなってしまった。


~赫side

今日も1人病室にいる君に会いに行った。

本当はいて欲しいはずの紫を連れずに。

「やっほ」

そう桃が挨拶してくれるが入る前まで咳き込んでたことなんてみんな知ってる。

「桃く~ん、会いたかった~!」

瑞がそう言いながら桃に抱きつく。

そういえばこいつそんなやつだった。

「瑞ちゃん、離れなさい」

翠が瑞を引っ張りあげると桃が咳き込んだ。

「…大丈夫か?」

そう聞いても

「噎せただけ!」

そう誤魔化す。桃がふと窓の外を見ると

「…もしさ、俺が死んでも紫が俺の元に来なかったら、代わりに怒ってくれる?」

そう言うが表情こそ見えないが多分悲しい顔してる。

「…そうする。」

「でも、葬式ぐらいは来るんじゃね?」

「ちょっと、」

俺の言うことは良くないことは分かってる。

だからこそ翠が止めることもわかるが、

「…生きてるうちにもう一度お前らは話しておいてくれなきゃ俺が困るんだけど。」

そう言い放つと桃がこちらを向いて微笑んで

「そうだね。」

それだけ言って、また窓の外を眺めた。

「…人の死が近づく時、死んだ大切な人が迎えに来てくれるんだって。」

突如桃がそんなことを言い出した。

「…俺はお父さんかな~…」

能天気にそう言うが、口調は少し強ばっている。当然だろう。誰だって死は怖い。

桃は怖いという気持ちを表にしない。


紫、お前がいたら、桃は笑顔でいれると思んだ。

お前今何してんだよ…


雪景色、未来へ。

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