連れていくなんて言って俺は桃に会いに行けてない。最低な人だ。
「…桃。 」
「ごめん。」
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「桃々~?今日はね~あの先生が段差でつまづいてるとこ見てさ!」
「まじ面白くてみんなで爆笑してたら怒られてさ!誰だって笑うって~って思って」
翠がそう楽しそうに話す。
翠、瑞、赫、黈が毎日、学校であった話をしてくれる。でも俺はそれに反応なんてしなかった。
瑞が続けた、
「瑞もさ~、今日さトイレから出てきたら先生とぶつかって~!前見ろよって怒られたの。」
「理不尽!」
興味ないわけでも話したくない訳でもない。
それでも、俺は今のこの現状ですら受け入れられてないから。
「…明日は紫連れてくるな。」
赫がそう言う。
この台詞は最近ずっと聞いている。
聞き飽きた。期待したって無駄なことだと最初から知っている。
もう紫と会わなくなって1週間が経つ。
「…桃々はそれでいいの。」
1週間ぶりに黈の声を聞いた。
ずっと黙りして静かに俺を見ていた、俺と似たような人が不安な声をして聞いてきた。
でも俺はそれに何も答えなかった。
それでいい、なんて言ったら死ぬことを理解してしまう気がしたんだ。
「まだ心が追いつかない?」
そう聞く黈はきっと俺のことを見透かしてる。
だから俺は何も答えない。
「…1つ、嫌なことを聞いてもいいか。」
赫が申し訳なさそうに言う。
俺は軽く承諾する頷きをすると赫が言った。
「…桃は後どれくらい生きれるんだ。」
それは本当に弱々しい声で、怖いことも、不安なことも全部声から伝わった。
ずっと気にしてて、それでも優しい赫だからこそ聞かずに待っていてくれたんだろう。
でも黈が突然それでいいのなんて聞いたら残り少ないと悟ったのだろうね。
俺は紙に“にしゅうかん“と平仮名で書いた。
それに全員が疑問に思ったことぐらい分かっていた。
“2週間“と書くのが普通だろう。
それでも俺はもうそれが、“書けない“から。
黈は俺とずっと一緒にいた、
でも病状までは教えていない。
だからこそ俺はこの時
嘘をついた。
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