テラーノベル
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めちゃくちゃ平和です。
🍓→ガザーナ
🐸→アルル
🍿→コットン
🦢→ヒシ
この4人が出てきます。
朝の陽ざしが差し込む中、ヒシは森の中の小屋で読書をしていた。
静けさを好む彼にとって、こんな穏やかな朝こそが“理想”だった。
…しかし、それは束の間の静けさにすぎなかった。
いきなりドンッとドアを開ける音が聞こえた。
驚きつつもドアの方へ向かう。
🍿「ヒーシ!お出かけ行きたーい!!」
コットンの底抜けに明るい声が、木々を抜けて耳に届いた瞬間、ヒシの顔がぴくっと引きつる。
🦢「…お前かよ!行かねえぞ…俺は。他誘え!」
🍿「えー…?絶対面白い日になる!ヒシが黙ってついてくるならもっと楽しい!」
🦢「ああもう…俺の静けさ返せよ…。」
それでも、ヒシは何だかんだで立ち上がる。
【映画館】
🍿「ポップコーンは塩!いやいや、バターでしょ!?あ、甘いやつもある!」
🦢「っはぁ…。もう…。全部買ってくる気か…?つーか、お前ポップコーン出せるだろ!」
🍿「あ、そっか。そうだわ。」
上映中。笑いが起こるシーンでコットンが爆笑し始める。
🍿「ぎゃはははは!!こいつ顔ヤバすぎ!」
その度にコットンのメガホンの耳がキーーンと鳴って劇場に響く。
観客はそんなコットンを見て嫌そうな顔をしている。
🦢「あああ!もう…!うるせー!!皆がお前迷惑だって見てるだろーが!!」
ヒシがその場で立ち上がり大声で怒鳴ると、今度は観客の視線が一斉に彼へ向いた。
《(うるさいのあいつじゃね…。)》
《(怒鳴ってる方が迷惑…。)》
ヒシは周りからの無言の目線に、ぎゅっと口をつぐむ。
🍿「はっ…。ヒシの声、劇場中に響いたね〜♪」
🦢「……っっだああ!!なんで俺が恥かかなきゃなんねぇんだよ!!」
【水族館】
🍿「うおおお!くらげー!!光ってるー!」
コットンはガラスに張りついてテンション爆上がり。
🍿「ヒシも早く来いよ!これ!これ見て!!」
🦢「…ああうるせえ。ガラス曇るだろ。お前の顔面脂で。」
🍿「えっ…。それは流石に言いすぎじゃない?」
魚のトンネルゾーンに入ると、静かに座り込む小さな女の子が居る。
アルルだ。
🐸「……あーあ…お人形さん、落としてきちゃった…。」
🦢「うわっ…、なんでいるんだよ…お前…。」
ヒシは見るからに嫌そうな顔をして後ずさり。
その不機嫌そうなヒシを見つめて今にも泣きそうな顔でアルルはヒシの服の裾を引っ張る。
🐸「ヒシ、ひどい…会えて…嬉しいのに…。」
🦢「ったく…。引っ付くなバカ。」
「アルル!元気だった?」とコットンがアルルに話しかけた瞬間
その後ろから「あ!コットンにヒシ!」と水族館の背景には似合わない様なやけに着飾った服で手を振っているガザーナがいる。
🍓「偶然だね。皆、水族館に興味があったの?」
🦢「…俺はコットンに拉致られただけだよ…。」
🍓「ふふ…。でも嬉しいよ。こんな偶然に会えるなんて。」
ガザーナはロボットのくせに(?)やたらと感情豊かに微笑んでいた。
【お土産コーナー】
🐸「このペンギンのキーホルダー、かわいい…。」
🍓「このイチゴのお皿、家にあっても可愛いかも!」
🍿「こっちには白鳥のしおりがあるぞー!ヒシ!」
🦢「お前ら…。全員で金使わせる気か?」
レジ前で、なぜか3人が次々にヒシに商品を手渡していく。
🍿「これも欲しいなー♡ヒシ払ってよ!」
🍓「ヒシって素敵なサポート係ね?」
🐸「ヒシ……たまには優しくして…?」
🦢「いや俺は財布じゃねぇぇぇ!!!」
と大声を出した後に視線を感じ、見渡すと周りの客にまた映画館の時の様に変な目で見られていて、ヒシはぐっと唇を噛み締めた。
周りの客の目線と3人の圧によって結局財布を出し、仕方なく商品を買った。
3人はヒシに買ってもらった商品が入っている荷物を持つわけもなく、ヒシが荷物を全部持ってダルそうに歩く。3人はご機嫌なご様子。
🦢「なぁ、この後どうすんの…?」
🍿「お腹減ったー!」
🍓「そうだね、私の家で鍋パーティーでもしようか?」
🍿「賛成!」
🐸「私も賛成…。」
🦢「は?やだー…。」
多数決により 不賛成1 賛成3 でガザーナの家に行くことが決定した。
【ガザーナの家/鍋パーティー】
テーブルに並ぶたくさんの具材。
🦢「で…鍋、誰が作んの…?」
🍓「あ…。」
🍿「俺作るか?」
🦢「やめとけお前は!クソみたいな料理しか出来ねえだろ…。」
🐸「皆で作ろうよ…!その方が楽しいでしょ?」
🍿「確かに。そうしよう!」
🍓「いいね!」
🦢「そうだな……ちょ!レシピ!!レシピ見ろ!」
🍿「ヒシピうるさいよ〜…。」
🦢「おいこら、レシピみたいに言うな。」
そう色々と揉めながらもレシピの本を開き料理を始める。
🍿「あ、これここに入れて…あ、間違えた。間違えて生肉先に入れちゃった…。」
🦢「はあ!?ったく…最初からやり直し…。」
🍿「これ生肉先に入れちゃだめなの?」
🦢「レシピ見ろよレシピ。ほれ。」
コットンの顔面にレシピの本を近付ける。
コットンはその顔の近くにあるレシピを見ずに退けて弱そうなチワワが怒った時みたいな顔をしている。
🍿「ちょわかったからヒシピ…。」
🦢「だーかーら…。もういい…。」
レシピのことで揉めてからヒシピと言う新たなあだ名が付けられた。
もう何だか怒るのも疲れてきてしまった。
🍓「えーっと…?
“鍋にお肉を並べ、水、料理酒、塩を加えて強火でひと煮立ちさせます。蓋をして中火で30分程煮ます。” …だって!」
ガザーナがヒシが羽で持ち上げていたレシピをバッと手に取りレシピに書いてあることを一通り読み上げる。
🍿「ふむふむ…。こうか…。」
なんやかんやで料理を終え4人で作ったにしては温かくて美味しそうなお鍋が目の前に。
🍿「美味しそー!」
🍓「なかなか上出来じゃん!やったね!」
「お人形さんにも…お豆腐あげよ…。」とアルルがウサギ柄の可愛い箸を持ち、ポロポロと机の上に豆腐が落ちながらもぬいぐるみに豆腐を差し出す。
🦢「アルル、豆腐はお前が食え。ぬいぐるみに食わせても腹は膨れねぇだろ。」
🐸「ひどい……ひどいよヒシ…っ…。」
🦢「や、やめろ!泣くな!!また俺が悪者になるだろーがっ!!」
ヒシが焦ってる横で、コットンは大爆笑していた。
🍿「これだからみんなでお鍋って最高だよな!」
🦢「お前はいちいちうるせえよ!!」
皆でご飯を食べ終えた後
アルルは遊び疲れてぬいぐるみをギュッと抱かえ、すやすやと眠っている。
ヒシはしばらく天井を見上げ、力なくつぶやいた。
🦢「はぁ…。俺…今日一日で寿命10年分くらい縮んだ気がする…。」
🍓「でもすごく楽しそうだったよ?」とガザーナがニコリと笑う。
🦢「は?楽しそうじゃねぇよ。俺は振り回されただけで…。」
🍿「ね?また来週も皆で行こうよ!今度は遊園地とかさあ!」
🦢「はあ!?絶対行かねぇーー!!!」
でもその“絶対”が、どれだけ薄っぺらいかなんて、
ヒシ自身が一番よくわかっていた。