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私
には何も見えなかったのです! 私自身さえ見ることができませんでした! それは私が見たかったものではなかったからです! 私はまだ何も見てはいません。
まだ何も始まってはいない。
私には見えるはずがないのです。
しかし私は見ることになるでしょう。
私がまだ知らないことが起こるのを見るでしょう。
私には聞こえるはずがなかったのです。
私にとってあまりにも遠い声だったからです。
しかしその声を聞くことでしょう。
私にとっては取るに足らないものかもしれません。
しかし私にとって価値のあるものではあるかもしれないのです。
私には分かるはずもなかったのです。
私自身がすでに知っていたことだったとしても。
それでもやはり、そうなることは分かっていたのです。
私には何も分からないはずではなかったのです。
そして私はついに理解したのだ! ああ、そうだったのか! 私が間違っていた! 私はずっと、自分の間違いに気づいていなかった! なんて愚かなことだろう! こんな簡単なことに気づかなかったなんて! もっと早く気づくべきだった! そうだとも! この世は全てゲームなのだ! 私達はみんな、ゲームの駒に過ぎない! このゲームはチェスではないぞ! 盤面をひっくり返してごらんよ! ほら、見えるかい!? そこに広がっているのは何だと思うね? これが現実さ! 私達が生きている世界だよ! 君たちはここでしか生きられないんだ! もうすぐゲームマスターが現れるだろう! そのときこそ、全てが終わるときなんだ! 君たちもきっと驚くに違いない! 私達は何もかも思い通りにしてきたじゃないか! ところが今はどうだい? 君たちの人生は思い通りにならないことばかりじゃないかね? 君はどうして自分が生まれてきたと思う? なぜここに存在していると思う? もし本当に君たちに目的がないとしたら、それは実に悲しい話だと思わないか? だから、そろそろ目を覚ましてもいい頃合いだよ! さあ、おいで! 新しい世界に行こうじゃないか! 君の望み通りの未来を見せよう! 君たちを縛るものはもはや存在しない! なぜなら、ここは仮想空間だからね! 現実では、誰も君たちを止めたりしないんだよ! 好きなことをすればいい! 欲しいものは何でも手に入る! 望むままに生きるといい! ただし! もしも願い事がひとつだけ叶うとしたら、何をお願いしたいかな? どんなことでも叶えてあげるよ! 例えば……永遠に眠りたいと願えば、永遠の命を手に入れられるかもしれないね! ああ、それから! 君たちはもう二度と目覚めることはないから安心して眠ってくれても構わないよ! もちろん、目覚めたければいつでも目を開けることはできるけどね! ただ、眠っている間は完全に自由だし、ずっと楽しい夢を見ていられることを保証するよ! ところで、これから皆様方にお見せするのはとある王国の物語です。
その王国はとても栄えていましたが、ある時を境に滅亡してしまいました。
滅びの原因となったのは”黒き魔女”と呼ばれる存在です。
彼女は様々な魔法を使いこなし、人々を操って国を滅ぼしてしまったのです。
しかし、全ての人間が彼女の手にかかったわけではありません。
“黒き魔女”の力を持ってしても滅ぼせなかった人々がいました。
彼らは生き残り、散り散りになって隠れ住みながら生き続けました。
その後長い年月を経て、彼らの子孫達は各地に集落を作り平和に暮らしていました。しかしある日突然、人間達の暮らす大陸から遠く離れた島に暮らしていた彼らが住む島へ巨大な隕石が落ちてきました。そして彼らはその衝撃により絶滅したのです。
「……ん?」
「どうかなさいましたか?」
「いや、なんか急に頭が痛くなってさ」
「それは大変ですね。念のため診てもらいましょうか?」
「そうだね、頼むよ」
僕は医者に連れられて病院へと向かった。そして検査の結果は特に異常は無かったものの、頭痛の原因は不明だった。
「うーん、おかしいなぁ。特に思い当たる節は無いんだけどなぁ」
「そうですか。原因不明となると困ったものですね。一応お薬を出しときますんで、様子を見て下さい」
「うん、分かったよ」
医者の言葉通り僕はしばらく様子見をしたのだが一向に良くなる兆しは無く、むしろ日を追うごとに悪化していった。そこで僕は知り合いのお坊さんに相談してみた。
「ふぅむ、なるほどのぉ。それはおそらく脳波の乱れじゃろうな」
「えっと、つまりどういうことでしょうか?」
「簡単に言えばお前さんの頭の中には常に何かしらの電波が飛んでいて、それが邪魔をして痛みを感じさせておるというわけじゃな」
「そっか、そういうことだったんですか!」
「まああくまでワシの考えじゃからの。実際のところはよく分からぬわ」
「いえ、ありがとうございます! おかげで謎が解けました!」
「ああ、うん……」
「あのー、それでですね……
ひとつお願いがあるのですが」
「ん?」
「わたしの師匠になってください!!」
「えぇ!?」
***
―――というわけで。
僕はいま、謎の女の子に『弟子入り』された状態で、 彼女の家(?)に向かって歩いているところだったりする。
「えっとさぁ……どうして僕なんかに弟子入りしたいと思ったのかな?」
「はい!それはもちろん、『愛ゆえです!』」
(あ、あいゆえ)
彼女は迷いなく言い切った。