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三文小説
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「ふっか!!」
病室へ飛び込んできた岩本は、深澤の姿を見つけると足を止めた。
頭からつま先まで何度も確認する。
「……。」
次の瞬間。
力が抜けたように、その場へへたり込んだ。
「照!」
阿部が慌てて駆け寄る。
岩本は肩で大きく息をしながら、額を押さえた。
「……よかった。」
「本当に……よかった。」
深澤は戸惑ったように見つめる。
「照……。」
岩本はゆっくりと顔を上げる。
「何日か前。」
「ラウとめめと飯行ったんだ。」
阿部は思い出す。
確かにそんな予定があると言っていた。
「その時。」
「ラウが言ってたんだ。」
「『ふっかさんと翔太くんも、もしかしたら阿部ちゃんみたいになってるんじゃないかな』って。」
病室が静かになる。
「その時は。」
「まさかって思った。」
「でも。」
岩本は渡辺が送ってきたメッセージを開いて見せた。
『ふっかが事故にあった。早く○○病院○○号室に来い。』
「これ見た瞬間。」
「俺。」
「女の子になったうえに事故まで遭ったのかって。」
「頭の中が真っ白になった。」
声が少し震えていた。
「車の中で。」
「頼むから無事でいてくれって。」
「それしか考えられなかった。」
渡辺は静かに手を合わせる。
「……ごめん。」
岩本は立ち上がる。
渡辺の前まで歩いていき、人差し指を向けた。
「翔太。」
「はい。」
「後でお説教。」
「……はい。」
「覚悟しとけ。」
「はい……。」
そのやり取りに阿部は少しだけ笑ってしまう。
岩本はそのまま深澤の方へ向き直った。
目が合う。
何も言わないまま、一歩近づく。
そして。
そっと深澤を抱きしめた。
力強く。
でも壊れないように優しく。
「……。」
深澤は一瞬驚いたものの、そのまま岩本の背中へ腕を回した。
岩本の肩が小さく震えている。
「本当に。」
かすれた声が耳元で聞こえる。
「本当に無事でよかった……。」
そのまま岩本は涙をこぼした。
「照……。」
深澤の胸も熱くなる。
こんなに心配をかけていたのか。
こんなに大切に思われていたのか。
改めて実感する。
「ごめん。」
深澤は岩本の背中を優しくさすった。
「心配かけて、ごめん。」
岩本は首を横に振る。
「謝るな。」
「生きててくれただけでいい。」
その一言に、深澤の目にも涙が浮かんだ。
病室の隅では、阿部と渡辺が静かにその様子を見守っている。
阿部は小さく微笑み、渡辺へ囁いた。
「照の答え、出たね。」
渡辺も安心したように息を吐く。
「……ああ。」
「少なくとも。」
「ふっかが一人で悩む必要は、もうなさそうだ。」
病室には、張り詰めていた空気の代わりに、少しずつ安堵が広がっていった。
コメント
1件
照、めちゃくちゃ焦ってたんだな……。病室に飛び込んでへたり込むシーン、映像が目に浮かんだわ。ラウとの会話で阿部ちゃんみたいになってるんじゃないかって言われた伏線がここで生きてくるの、構成上手すぎる。「女の子になったうえに事故」って混乱っぷりもリアルで、泣きながら抱きしめるところは完全にやられた。深澤が「こんなに大切に思われていたのか」って気づく流れ、じんわりきた。照の答えが出たって阿部ちゃんの一言が全部を締めてて、良い回だった。