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飼われてるのいいねぇ…♡(((
キャラ崩壊?それは・・・き、き、き・・・気のせいですよ・・・ッって思いながらいつも小説書いてる
中也が任務の「残務処理」のために一時間だけ部屋を離れた、その隙だった。
太宰は一人、リビングの絨毯の上に座り込んでいた。手元には中也が買い与えた知育玩具や絵本が散らばっている。けれど、その瞳には幼子特有の好奇心など微塵もなく、ただ冷徹な計算と、拭い去れない焦燥が渦巻いていた。
(……あんな瞳をする中也は、私の知らない中也だ)
今朝、首筋に刻まれた歯形の跡がいまだに熱い。 中也の執着は、もはや「保護」という名の皮を被ることをやめつつある。記憶があることを隠し、中也を依存させているつもりだった自分が、いつの間にか中也の巨大な独占欲という胃袋の中にいたのだと気づき、太宰は震えた。
「……ちょっと散歩でもして落ち着かないと……」
狭い部屋を歩くうち、太宰は小さな体で、音を立てないように中也の書斎へ潜り込んだ。 子供の自分には高すぎるデスク。その一番下の引き出しが、わずかに開いている。 中を覗き込んだ太宰は、そこで息を呑んだ。
そこにあったのは、太宰が大人だった頃に身につけていた私物――黒外套、ホルスター、予備の包帯のすべてが、細かく切り刻まれている残骸だった。
「……ッ、」
喉の奥がヒュッと鳴る。 中也は、太宰が大人に戻るための「縁」をすべて物理的に破壊していたのだ。 それだけではない。引き出しの奥、重厚な黒い小箱の中に鎮座していたのは、冷たく光る銀の首輪だった。
それは子供用ではない。大人である太宰治の首に、ぴったりと適合するように特注されたものだ。
(中也は……私が大人に戻ることも、最初から織り込み済みで……)
その時、背後で玄関の鍵が開く音がした。 心臓が口から飛び出しそうなほど跳ねる。太宰は音速で思考を回転させた。ここで「見た」ことがバレれば、その瞬間にこの首輪を嵌められるかもしれない。
(演じろ。まだ、私は何も知らない『可哀想な子供』だ)
「……太宰? どこだ」
足音が近づいてくる。 太宰は慌ててリビングに戻り、ぬいぐるみの一つを抱きしめて、わざと床に丸くなって震えて見せた。
「……うぅ、……ちゅうや……?」
「なんだ、起きてたのか。寂しくなったか?」
書斎から出てきた太宰に気づかず、中也が背後から歩み寄る。 中也の手が太宰の肩に置かれた。その瞬間、太宰は反射的に身を強張らせそうになるのを、必死に理性で抑え込んだ。
「……ちゅうや……おそいよぉ。……どこいってたの? こわかった、よ……」
太宰は中也の胸に顔を埋めた。 視界の端で、中也が太宰の首筋を……今朝つけた歯形の場所を、満足げに親指でなぞるのが見えた。その指先が、まるで見えない首輪を締めているかのように感じて、太宰はガチの恐怖で涙を零した。
「……よしよし。悪かったな。もうどこへも行かねぇよ」
中也の声は、どこまでも優しく、慈悲に満ちている。 けれど、その腕はもう、抱擁というよりは拘束だ。 太宰は中也の首にしがみつきながら、必死に声を殺して泣いた。
(中也は……狂ってる。……私を、一歩も外に出すつもりなんてないんだ)
中也の執着に本能的な恐怖を抱きながらも、太宰は中也の胸を離れることができない。 もし、この「演技」が破綻した時。 自分を待っているのは、あの銀の首輪と、一生終わることのない「飼育」なのだと理解してしまったから。
「……ちゅうや。……だいすき。……ずっと、いっしょに……いてね……」
ひらがなの甘い毒を吐きながら、太宰は自分の震えが中也に伝わらないことだけを、必死に祈り続けた。