テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
引き寄せられたまま。
さっきよりも近くて、逃げ場がない。
でも――
離れないのは、エリオットの方も同じだった。
「……っ、」
息が少し乱れる。
頭がじんわり熱い。
チャンスの手が背中に回ったまま、ほんの少し強くなる。
「……やばいな」
低く、ぼそっと。
余裕が削れてる声。
それだけで、エリオットの心臓がまた跳ねる。
(……ほんとに本気だ)
そう思った瞬間。
ぞくっとする。
怖いんじゃない。
むしろ――
嬉しい、に近い感覚。
エリオットは無意識に、チャンスの服を掴む力を強める。
「……なに」
かすれた声。
チャンスが一瞬だけ目を細める。
「それ以上やるな」
「……なにが」
わざと聞き返す。
でも声は少し震えてる。
チャンスが近づく。
ほとんど触れてる距離。
「それ」
視線が唇に落ちる。
「無自覚でやってんのが一番悪い」
エリオットは一瞬だけ止まる。
(……また?)
でも。
今回は――わかってる。
自分がどう見えてるか。
それでも。
少しだけ、指で自分の唇をなぞる。
さっきと同じ仕草。
今度は、ゆっくり。
わざと。
「……こういうの?」
一瞬の沈黙。
チャンスの呼吸が止まる。
「……っ」
完全に、限界。
手が強く引く。
距離が一気にゼロになる。
でも――
その寸前で止まる。
「……ほんとにいいのか」
最後の確認。
低くて、真剣な声。
エリオットは少しだけ息を整える。
心臓はうるさいまま。
でも、目は逸らさない。
むしろ、ほんの少しだけ笑う。
「……もう聞くのそれ?」
軽く煽る。
でも。
次の一言は、ちゃんと本音。
「……離れたくない」
空気が変わる。
一瞬で。
チャンスの目が揺れる。
それだけで十分だった。
次の瞬間――
距離が完全に消える。
強くはない。
でも、逃げ場もない。
さっきよりずっと近くて。
さっきよりずっと、迷いがない。
エリオットの思考がまた白くなる。
でも今度は――
ちゃんと掴んでる。
この距離も、この温度も。
背中に回る手を、自分から引き寄せる。
離れないように。
「……っ、チャンス」
名前を呼ぶ声が、少しだけ震える。
チャンスが一瞬止まる。
でも、離れない。
むしろ。
額を軽く当てて、息を整える。
「……これ以上は」
低く言う。
「止まれなくなる」
正直な声。
エリオットは少しだけ目を細める。
まだ息が乱れてるまま。
でも。
小さく笑う。
「……じゃあ」
少しだけ、距離を詰めて。
「止まらなきゃいいじゃん」
完全に、引き返せない一言。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
#Paycheck
ゆゆゆゆ
ゆゆゆゆ