『流星群にお願い事すると叶うって本当かな』
ふと彼女が病室で溢した言葉。俺が「どうして?」と問えば、「こんな私でもまだ、生きてたいと願うからかな〜」と言った。
確かに彼女は、世界で症例の少ない未知の病に侵されている。でも、決死の延命治療で命を繋いできた。彼女の口癖は「きっと前世で何か悪い事をしたんだろうね。そのツケが回って来たんだ」と。ありもしない事を考えてしまうのも病床で滅入っているからだろう。彼女を担当して、今年で5年…そろそろ命の灯火も消えかけていた。 流星群が流れるのは3日後…俺はどうしても彼女に流星群を見せてやりたかった。彼女の最後のワガママな気がしたから…
3日後、俺は彼女を真っ白な病室から連れ出した。最初は驚いていた彼女も、段々と楽しくなって来たのか笑みを綻ばせていた。そして着いたのは、何も無い草原。俺が新人時代仕事に慣れなくて、苦しくてもがいていた下積み時代を支えてくれた思い出の場所だ。青空の下では新緑を輝かせるが、夜空の下では深緑を見せてくれる。彼女を星空が見渡せる場所へと案内し、そこに座る。時刻は午前0時を迎えた…ポツポツと流れ始める、流れ星…隣の彼女を見ればその綺麗な琥珀色の瞳に涙を浮かべていた。「どうしたの?どこか痛い?」「違うよ、分からないんだ。どうして泣いているのか…涙が止まらないよ」そう言って、ボロボロと泣く彼女を抱きしめて僕はこう言った。「今、願い事を言っていい?」「じゃあ私も!」
「「貴方(君の)未来が(来世が)末永く幸せであり ますよう」」
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気がつけば俺は病院にいた。彼女はというと冷たくなって動かなくなっていた。霊安室に横たわる彼女の亡骸を撫でて「お疲れ様」と呟いた。霊安室から出れば俺の上司に当たる人がいた。どうやら、昨晩の事で罰則があるらしい。何かを言い出そうとした上司に僕は辞職届と押し付けた。そして、「今までお世話になりました」と言い、病院を出た。いつもは嫌だったこの青空を少し好きになった。だって、この空の何処かに君がいるって思えるから…
ーーまた、一歩、今日も踏み出すーー
コメント
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とても素敵なお話でした。古都波さんの長編小説も読んでみたいです。
感動🥹! 他の短編集も読みたい!