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第二話 「生前の記憶は役に立つのか」
私の大好きな乙女ゲームの攻略される側に転生してから、1週間。ここでの生活は慣れた。もともと一周プレイしていて、二周目の途中だったこともあり、だいたいはわかってしまう。
それでもストーリーに少し出てきただけのレオンの暮らす城の構造なんて、そんなのうろ覚えでしかない。
私はよくある転生モノと同じだと思っていたがそういうわけでもなく、ある程度成長してからの転生とはいえ、いままでのレオンの記憶はない。いままでどのようなことがレオンに起こったかは、レオンの体は覚えていないのだ。
私にあるのは生前の記憶のみ。それが役に立たないというのなら絶望だ。
神様、この世界に転生させてくれるまでは良かったけど、レオンの記憶くらいちょうだい。
このレオンは魔法学校に入る一年前のレオンだ。
猶予は一年。それまでに失った13年分の記憶を補う・・・!!
えっと、まず貴族しか入学することは許されていないのが、王都にある魔法学校。14歳から18歳まで通う。魔法学校の折り返し、16歳の年は、成人の年でもあり、16歳になる年から夜会に出られる。基本婚約者と。貴族はだいたい魔法学校に入る前に婚約者を迎えるのがしきたりだ。
ゲームの主人公であるヒロインは、レオンの一個下。だから2年後に入ってくることになるが、ヒロインはお決まりストーリーで平民設定のため、「特例」で入ってくることになる。
この国に存在する「聖女伝説」は、100年に一度、この国を正道へと導く麗しの聖女が生まれると言われている。聖女は産まれると首の辺りに痣が浮かび上がり、いままで起きていた暴動や天災はなくなるという。やがて聖女は王子と結ばれ、国は穏やかになり、めでたしめでたしという伝説。
伝説ではあるが、ちゃんと実在する。先代聖女は20年前に寿命で死んだし、先先代も先先先代も王家に伝わる歴史書に書いてある。
レオンはというと、この伝説によりいずれ聖女と結婚するから、とめちゃめちゃに躾けられて育っている、はず。それゆえに感情がおさらばしていて、「氷の王子」と言われている、はず。そしてその氷を溶かすのが、聖女。のはず。
私、レオンには悪役令嬢のレティーリアがあるけど、確かヒロインの入学歓迎パーティーで婚約破棄されるはず。でも私、結構レティーリアのビジュアル好きなんだよね。婚約破棄は痛苦しいのでやらない方向で進めたい。でもそうなるとゲームのストーリーには変化があるのだろうか?レティーリアはまず間違いなくレオンのとこが好きだから、それを踏まえて考えると・・・。
だめだ。いろんな情報で頭がパンクする。レオンは優秀らしい、いままでの城の講義を全てノートにとっている。今日のところはそれを読もう。
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