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実は、このミッションでは、始動前から決まっていたことがあった。
それは、「犬は地球には帰還させない」というものだった。
ロケットが地球に帰還するには、軌道修正や姿勢制御のほかに、耐熱シールドや減速機構が必要だ。耐熱シールドは、大気圏再突入時に機体と空気の摩擦で発生する熱を防ぎ、減速機構パラシュートや逆噴射用ロケットなどのことで、着陸、着水時に機体が受ける衝撃を和らげる。
これらは、機体の設計など、すべての準備が終わったら始める予定だった。
もちろん、どちらも1ヶ月程度で準備できるはずがなかった。
これらは、現在でも、完成されたシステムを組み込むだけでも数ヶ月から1年ほど必要なのだ。新規開発の場合は、3年から8年ほどかかる作業である。
さらに、帰還に向けた訓練も必要であり、それらの時間はないと判断された。
それに加え、予算の問題もあった。冷戦が行われていた当時は、宇宙開発ばかりに多額の資金を投じ続けることはできなかった。
よって、この計画に参加するということは、死へのカウントダウンが始まったということなのである。犬たちは、余命宣告を受けたも同然だった。
打ち上げ日が決定すると、犬の準備が本格的に進められた。
体にセンサーを取り付けるための外科手術や、血圧計の装着訓練、犬の動きを検知する装置の取り付けなど、3匹の犬は訓練を着々と進めていった。
しかし、犬たちの訓練管理官は、犬たちに対してどう接すればよいかわからなかった。