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犬の訓練は、訓練管理官(ハンドラー)と呼ばれる人間が中心となって行う。
犬は、完全な縦の社会を持った生物だ。群れを作り、強いものがリーダーとなり、リーダーに従って行動する。また、そのリーダーが強く優しいなら、犬はリーダーを信頼し、従うことに誇りを持つようになる。
訓練は、この習性を利用して行われた。訓練は、ハンドラー1人と犬1匹がペアになり、その犬と常に行動を共にし、仲良くなり、信頼関係を築くことから始める。まずはボール遊びやかけっこなどの簡単なことから始め、徐々に難しい課題を課していった。犬と信頼関係を築くには、褒めることが不可欠である。犬が命令に従えたら、これでもかというくらい褒め、犬に自信をつけていくのもハンドラーの仕事の一つだ。
このように接していれば、ハンドラーもすぐに犬に対して友情や愛情を抱く。軍用犬や警察犬を育成するときにはこれらの効果は大きな利点となるが、今回のミッションでは、これがハンドラーを苦しめた。
ハンドラーも、犬が生きて地球に戻ってこないことはわかっている。しかも、宇宙に行くのは、ほかの犬と比べて最も優秀な犬のため、自分が訓練すればするほどその犬は死に近づくことになる。しかし、ハンドラーも仕事として働いているわけだから、犬を訓練せずにいることはできない。
死んでほしくない。だが、やるしかない。この葛藤が、ハンドラーの中にいつも渦巻いていた。
そうして、様々な準備が進められた。
ついに、宇宙に行く犬を決定する打ち上げ4日前となった。
厳しい健康状態のチェックや訓練結果の精査により、宇宙に行くのは、ライカに決まった。その時、その決定を聞いていたハンドラーは、何を思ったのだろうか。