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第8話昇格
晴れた天気
太陽の光が差し込み目が覚める
やばい寝坊した
それにしても、昨日の天気が嘘のようだ
快晴。と言ってもいいだろう
ドタドタドタドタ
バンッっ!
{さぁくらぁっ〜!?あんたまた寝坊して!}
{そんなんじゃ昇格できないよ!?}
別に昇格なんて…、僕には無縁だ
昇格なんかしなくったって残り3ヶ月程度でここを去るんだ
なら関係ないだろ
ただ、このことを舞には言っていない
だからこそ、舞は気にかけてくれているのだ
優しいやつなのか、はたまた僕の眠りを妨げる悪なのか…
そんな変なことを考えてしまう程に、平凡で平和な朝だった
この数時間後にトラブルが起きようとも知らずに_
ガラガラ(扉
「…失礼します、」
新しい女将の自室を訪ねる
つい先程、下女の一人から女将が僕を呼んでいると言われたからだ
なんだなんだと思いつつも、僕自身は何も問題を起こしているわけでもないので安堵していた
[来てもらって悪いね]
[音ノ瀬さん、貴方に一つ提案があるのだけれど]
…勿体ぶらず早く言えばいいのに
なんて本音を言ってしまったらどれだけ驚かれるだろうな
「なんでしょうか」
僕は一言、間違いのない言葉を選んで発した
[貴方、黒崎様のお気に入りだそうね]
[下っ端の遊女だと私は知らなかったから…]
[昇格させようかと思ってね]
「…え、?」
女将が目を見開いてこちら見ている
しまった、口に出ていた
ここでは本音を言ってしまえば喰われるだけだ
情報というものはそれ程までに凶暴である
[ふふっ…、びっくりするのも可笑しくないわ]
クスクスと、可愛らしく微笑み笑う女将が何故か女神のように思えた
それに、僕よりも年下に見えるのは流石に気の所為だろう
[貴方は今、切見世でしょう?]
[散茶くらいまで昇格しておかないと、黒崎様のお気に入りとして周りに示しがつかないわ]
[それに、貴方が切見世だからと黒崎様が窘められるのも嫌でしょう?]
たしかに、と不覚にも思ってしまった
あの人はああ見えて以外とお偉方なのだ
僕のせいで評判を落とされてはたまったものじゃない
「……謹んで拝命致します、」
硬っ苦しい物言いに最初は少しばかり驚いていた女将だが、少し話せば慣れたようだ
別れ際には何も動じなくなっていた
[では、明日までに貴方を昇格する手続きをしておくわね]
にこっと又もや微笑む
それがどうにも先程とは違うような作り笑いに違和感を覚える
だが今の僕には何もできない
気にすることすら忘れて、自室へ戻った
翌日の早朝
朝霜が日に照らされて薄く光る
早起きすれば他では見られないこの自室から見える絶景がある
早起きすれば、の話だが
僕は何故か落ち着きのない様子で、支度を済ませ、沈黙が流れる部屋で女将に呼ばれるのをじっと待っていた
トントントン
襖を叩く音に少しばかり飛び跳ねるほどの驚きを覚えた
それ程までに緊張していたのかと、今更ながら思えてしまう
[女将がお呼びです。至急部屋までお越しください]
ついに来たかと、僕は意を決して襖を出る
ちなみに舞には言っていない
面倒になりそうだからだ
…面倒なことは嫌いだ
「失礼します、音ノ瀬です」
[入って]
襖の向こうからほっこりとした温かみのある声が聞こえた
部屋にはいると、昨日とは違い机のうえには資料が山積み
心なしか、机の横の小さな本棚も位置が少しズレているように思える
僕のためにここまでしてくれたのか、と思いたいところだが、店の為だろう
遊女同士が謀反を起こさないように
[これを]
少し険しい顔の女将が渡してきたのは何やら重要そうな書類
その文面には、【音ノ瀬さくら:散茶に昇格することを認めない】
「…え?」
昨日と同じような展開になってしまった
間抜けな声と共に、女将が溜息をする
[ごめんなさい、上層には許可が降りなかった…]
[理由はわからない、教えてくれなかったの]
まあ、僕としては別にどちらでもいいと思っていたから
なんともない、と言えたらよかった
少し、いや大分精神にこたえた
今朝からあんなに緊張したのに
ショックと言う他ないだろう
だが、上層が決めたことならば覆ることはないだろう
やはり、舞には言わなくてよかった
女将の部屋を後にし、とぼとぼと廊下を歩く
自室に着くなり、布団へ飛び込む
少しばかり、目の奥がじんと熱くなったから
第9話:真実
あのショック事件から数日
僕は少し気力がなくて、仕事を休んでいた
暖かい日差しが差し込む部屋でただ呆然と何をするわけでもなく、ぼーっとしていた
舞は心配しているだろうな
黒崎様は来てくれているのだろうか
蒼さんは大丈夫かな
なんて、気にしなくていいことまで頭に浮かんでくる
雑念が多いことに少し苛立ちを覚えるが、その怒りを何にもぶつけることもできず、我慢
いつか爆弾のように爆発してしまわないか心配だ
コンコンコン
「…なんでしょうか」
〘さくらさん、白山です…〙
〘厨房さんからお食事をお持ちしました〙
〘入ってもいいでしょうか…?〙
本当は誰にも会いたくない
予想以上にダメージを喰らったようで、顔を合わせることができないからだ
でも、ご飯を持ってきてくれたのなら入れる他ないだろう
「…どうぞ」
渋々だ
別に、蒼さんは大丈夫かなって、今朝思っていたからじゃない
仕方なく、だ
〘失礼します、!〙
少し声に震えがあるのは気の所為だろう
彼女がそんなわかりやすい緊張をするはずがない
「…持ってきてくれてありがと、そこに置いておいて」
冷たく背を向けて放った
本当は色々話したい
また嫌がらせを受けていないかとか、気になることがたくさんなのに
…僕は想いを、本音を言葉にすることが少々苦手らしい
〘あ、あの…、!〙
すぐに帰ると思った
冷たくしたから
でも、まだそこにいた
〘これはうちの独り言です…、〙
〘返事はしなくていいです〙
そうして彼女が口にしたことは
“僕の昇格は誰かが難癖をつけて撤廃したものだ”
つまり、僕は誰かに邪魔された、というわけだ
本来ならすでに昇格できるらしい
そして、もう一つ驚くべきことが、
〘…さくらさんの昇格を実現するべく、黒崎様が上層へ話をつけに行ったそうです〙
……は、?
黒崎様が…?
僕のためにそんなことを、
僕は一遊女にすぎない
なのに何故…、
胸の奥で音が高鳴る
鼓動が聞こえる
頬が、熱くなって、自分じゃないみたいに
話し終えた蒼さんは僕の様子が可笑しいことに気づいたようだ
こちらに来て顔を覗かれた
「…っ…、//」
恥ずかしさのあまり、布団に顔を突っ込んだ
そろそろと、蒼さんを下から見上げる
するとその表情は少し寂しげだった
〘さくらさん、少し昔話をしてもいいですか?〙
「昔話…?」
気になって、顔を上げる
蒼さんは話し始める
〘昔、小さい頃の少女は貧乏で、よく大人や周りの人から疎まれてきた
何にも恵まれず、ただただ退屈で生きるのに必死だった日々
そんなときに、少女と同じくらいの背丈で、話しかけて来た
その彼女との生活はとても楽しかったそうで、毎日毎日笑って過ごしていたそうです
今までの白黒の世界に彩りをくれた
でも、そう長続きはしなかった
少女は金持ちの屋敷に買われた
彼女は少しばかり裕福な家庭だったためか、少女と戯れることを許さなかった
二人は離れ離れになった
でも、少女は金持ちの屋敷ですくすくと育ち、気がつくと18歳までになっていた
そして、昔遊んでくれていた彼女を探すため、情報を集めだした
すると、彼女は父親に売られて遊女になっていると聞く
少女は育ての父親に許可を取り、遊女として仕事に入ることになった〙
……まさか、そんなこと、
聞き覚えのある話に戸惑う僕を置き去りに蒼さんは話し続ける
〘ねぇ、さくらさん、いえ、さくらちゃん〙
〘もう一度聞きます。本当にうちのこと知らないですか…?〙
そう問う彼女の顔は今にも泣き出しそうな表情だった
僕は思わず、蒼さんの首に手を回して抱きしめていた
「知ってる、知ってるよ」
「…苗字が違ったからわからなかった、」
「ごめん、」
すると、蒼は、泣き笑顔で〘よかったです、!〙と、一言
こんな出会いもあるのだと、思いつつ少し避けてしまっていた自分に反省をした
いつの間にか、ダメージを受けたはずの精神もすっかり直って、二人でまた笑っていたのだった
おまけ #杠とどうなった?byさくら.蒼
あの真実のあと…
「そういえば、この前杠に手を引かれて行ってたけどどうしたの?」
横に座る蒼に聞く
〘え!?見てたの…!?〙
「もうばっちりに」
ええ……、と嘆いている蒼は杠が惚れるのもわかる程に可愛らしい
……いや、杠はそもそも惚れてるのか分かりづらい
「で、何があったの?」
〘そ、それは……//〙
どうせ、壁に押し倒されたりでもしたんだろと、苦笑を浮かべる
〘…なんか、離れた廊下に連れられて、頭撫でられた…だけ、です、//〙
……なんだ、それだけか
杠もまだまだだなと、にやにやしながら、撫でられただけで照れてしまっている蒼の頭をわしゃわしゃと撫でる
〘も、もう…、!さくらちゃんにはもう何も言いません!〙
棘が多いように感じるが、そんな言葉のなかにも照れが残っている
照れ隠しはもう少し上手くやれ、と心の中で御説教
「あ、そういえば、」
急に話題を転換する
この話題はなんらかのボロが出そうだ
「なんで急にさっきの昔話の話になったの?」
「それと、なんでうちの昇格の問題を知ってるの?」
〘それはですね、さっきさくらちゃんが照れながら布団に突っ伏してるところを見て、昔を思い出したからです!〙
〘小さい頃、さくらちゃん照れると壁とか手とかで顔を覆う癖があったでしょう?〙
〘だから、思い出して、つい言ってしまったってかんじです、!〙
なるほど、と思う
たしかに僕は昔から照れた時の顔を見られたくないがため、その場にある何にでも顔を隠していた
〘2つ目の質問ですけど、1つは杠さんが教えてくれたのと、うちが昇格したからです!〙
「……え?」
〘言ってなかったんですけど、うち入ったときから父の影響で散茶で、この前格子になったんです!〙
〘丁度さくらちゃんが昇格をする直前くらいですね〙
「……あー、やみそ、w」(急な現代語((
〘病みそう、とは…??〙
「んーなんだろーねー(棒」
〘なんですか!?〙
「というか、蒼のほうが年上なんだから敬語はなし」
〘は、はい…、じゃなくて、!うん!〙
〘なので、今度からはうちがさくらちゃんを守る!〙
〘そのためにここに来たの、!〙
本当か、と少し引き気味になりそうだ
でもこの子なりの優しさなのは間違いない
だからこそ、頼らせてもらおう
「…というかやっぱ杠情報か…」
〘…?〙
「…これからも杠と睦み合いながら頑張って、w」
〘なっ、!?//〙
〘ちょ、さくらちゃん!今のは本当にやめて!?//〙
この後、隣室から煩いと苦情がきた
睦み合い=イチャイチャ((
次回第10話:裏➫♡70
…面白入った、w
長くてごめんね、💦(5000文字w
コメント
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え、好き