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第10話裏
あの真実を知ってから一夜明け、翌日
何故か蒼は僕の部屋に居続けている
〘いいじゃないですか!〙
〘それに、さくらちゃんの昇格のことも気になるので…仕事したくないんです!w〙
「だからって…」
正直困る
この館の格子になったと言っていたし、僕が何かに巻き込まれるのだけは避けたい
それにこの時間帯、舞が部屋に突撃してくるからだ
{さくらー!起きてるー?!}
ほら案の定、舞が部屋に来た
{早く支度しなよー!?}
{…っと、え…??}
舞は、僕にくっついている蒼を見て固まっていた
{…どういう状況?}
戸惑うのも無理はない
僕も舞と同じ立場なら石のように固まっていただろう
「えーと…、」
僕は一から説明した
{なるほどね〜、理解したわ…}
{それにしても…、あんなに敵視してた白山さんとそんな関係だったとはね〜…}
厭味のように言う
「敵視なんて…、ただ侮れないと思っていただけだよ」
「そんな誤解を生むようなこと言ったかな?」
カマをかけてみる
{いや?ただなんとなく、ね}
{私とさくらとの長い時間の末の勘よ}
…やはりボロは出さないか、と心の中で少し落胆
舞の弱みを握れたら、ここでの立ち回りは楽になるだろう
なんて、友人に思うようなことではない物騒なことを思ってしまう
僕はおかしいのだろうか…?
〘さてと…!さっきはああ言いましたけど、うち今日指名入っているので…お先に失礼しますね!〙
蒼が襖に手をかけ、出ていこうとする
〘あ、そうでした…さくらちゃん、今日女将に呼ばれていましたよ〙
〘早く行ったほうがいいと思います…!〙
蒼はにこっと微笑み、階段を降りていく
{さくら、また?何かやらかしたの?}
「うちが呼ばれるときは大体やらかしたって思うのやめてほしいんだけど?」
数秒見つめ合い、2人とも吹き出して笑ってしまう
「さ、うちはもう行くよ」
「舞は今日何するの?」
何気に聞いてみる
{え、?いや〜…私は特に何も、かな…}
……何かはぐらかされたような気がする
舞は饒舌だが、隠し事は苦手だ
欠点があるのはいいことだが、バレバレすぎるのもどうかと思う
「…そっか、じゃあもう行くね」
作り笑いを浮かべて、部屋を後にする
廊下を歩き、木が軋む音がする
流石にここも古いからね、そろそろ移転するだろうか
どうでもいいことを考えながら女将の部屋へ向かう
コンコンコン
「音ノ瀬です」
[入ってちょうだい、]
声からわかる
少しお疲れ気味だ
「失礼します、」
襖を開けると、部屋はごちゃごちゃ
そして、その部屋の中には花御格子もいた
「…!?」
僕は即座に正座する
[いいのよ、畏まらなくて]
[今日来てもらったのは他でもない、貴方の昇格を邪魔した者についてよ]
そういえば昨日、蒼にも言われたな…
本当にそんな奴がいるのだろうか
…いや、僕は此処では嫌われものだ
恐らくは、その辺の遊女にでも恨みを買ったんだろう
それにしても何故、花御格子まで…?
[貴方の周りに、上層に仕えている散茶の遊女がいるらしいの]
[あ、この情報の源は探らないでね]
…なるほど、裏の道を使ってでも調べてくれたのだな
探るわけない、と心の中で誓う
[でも、詳しい名前は出てこなかった…]
[上層が、貴方を昇格させることに首を振らないのは、その遊女が上層に大きく影響しているかららしいの]
[その遊女が首を縦に振らなければ上層も許可を出せない]
[そんな御偉いさん貴方の周りにいる?]
……正直なところ、蒼しかわからない
…でも、蒼がやったとは到底考えにくい
そもそも僕の周りに散茶はいない
…どういうことだ…?
「申し上げますと、うちの周りには散茶の遊女はいません」
「それに、家柄がいいと言えるのは白山さんのみだと思います」
「ですが、うちは白山さんがやったとは思えません」
《どうして?》
花御格子が口を開く
「…先程と、昨夜、白山さんはうちの昇格についての情報をつかんでいました」
「そして、誰かが邪魔をしている、と教えてくれました」
「もし白山さんが犯人ならば、自分につながるような情報を自ら教えるでしょうか…?」
すらすらと、考えていたことを口にする
本当はただの勘だ
でもこの人達には説明がないと通らないだろう
ここで二人の誤解を解かないと蒼が疑われることになる
それだけは避けたい
[…そうね、私達は白山さんが犯人かと思っていたのですが…]
《なるほどね、うちもそうだと思ってた》
《貴方の周りだと白山さん以上の家柄の人はいないからね》
そうだと思った、僕も不覚にも最初はそうだと思ってしまったから…
《なら、誰なのかしら…》
「…というか、何故花御格子がここに…?」
突拍子に話題を変えてしまう
心の中で少し謝る
《あ、言ってなかったっけ?》
《うち、店の格子という立場と、こういうトラブルの時に調査したりする役回りがあるのよ》
《だからこの前少し白山さんにちょっかいをかけたのだけれど…》
《まさかお客様に止められるとは思ってなかったわ…》
…なるほど、この前のはそういうことだったか
見ていたことを口に出したら、きっと面倒なことになるので黙っておこう
「あ、」
ふと、思いついてしまった
いや、そんなはずはないとわかっている
そんなことをしても彼女には何の利益もないはず…
なのに…何故か朝の言動がおかしく思えた
最近の様子が可笑しいと今になって感じてしまった
[…誰か思い当たったようね、]
「…核心はありません、でも…」
「舞が怪しいと、僕は思います」
最近やけに朝、部屋に来ると思った
僕を昇格させるためにやっているのかと勘違いしていた
僕の部屋には時計がない
つまりは…、舞が来たら朝なのだと僕が勘違いしていたら、僕の遊女としての価値はだだ下がり
昇格という名目こそなくなっていただろう
そして、日中仕事しなければ、指名されても支度もできない
…舞の考えそうなことだ
《舞って…あの貴方の周りにいつもいる…?》
「はい、」
《でもあの子って散茶でもないし、家柄だって…》
そう言いかけた所で気づいたらしい
ここの履歴書はいくらでも誤魔化せる
だってここは余り高級遊郭とは言い難い場所
わざわざ確認する物好きなどいない
《なるほどね〜…、ここの立地を利用したわけか…》
ひくひくと、眉をひそめる
たしかに、ここの調査員をしているという花御格子にはムカつくことだろうな
[とにかく…、舞という子をここに呼びましょう]
「…いえ、その必要はないと思います」
[どうして?]
舞は今朝、僕が予定を聞いた時、嘘をついていた
恐らく、上層に行くのか、それとも__
「多分そこにいるので」
初めから話を聞きに来ていたか、のどちらかだ
襖が開く
{なんで…!}
悔しそうに顔を歪める舞
「今から説明するよ」
たった一言、なのに舞の顔はわなわなと、青ざめていった
第11話正体➫♡90