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京都の空には、戦の匂いが満ちていた。信長の軍は、上杉謙信と武田信玄の二つの大軍に挟まれ、もはや退路を断たれていた。西から上杉、東から武田が迫るその状況下で、織田信長は焦ることなく、冷徹なまでに計算された一手を打つことを決意していた。
「岐阜にわたる。だが、無駄な足掻きはしない。」
信長は、このまま突っ込んでいけば、上杉の猛攻と武田の執拗な追撃に遭い、壊滅を招くだけだと見抜いていた。そこで彼は、一部を囮に使い迂回作戦を決断した。目を引きつけておいて、その隙岐阜に渡る――それこそが、信長が繰り出す最初の策だった。
だが、岐阜に到達した瞬間、信長は異常さに気づく。周囲があまりにも静かすぎる。どこか不気味な空気が立ち込めていた。信長の耳に届くのは、風の音と、響く足音だけ。何かが待ち伏せている――。
そのとき、信長の側近である黒田官兵衛が、しっかりとした声で言った。
「おそらく、この地には無数の忍びが潜んでいるはずです。」
信長は無言で頷く。彼の目が鋭くなり、冷徹な計算が再び動き出した。岐阜の地には、伝説の忍者集団「甲賀」「伊賀」が多く潜んでおり、信長も知っていた。自らに忍者の知識を持つ者を加え、警戒を強化していたが、それでも完全には油断できなかった。
信長は一呼吸おいて、再び決断を下す。
「忍者を倒す方法がある。」
彼が取った策は、計略において真骨頂を見せるものだった。信長は、まず岐阜を一斉に囲むように陣を張り、その隙間をわざと作った。兵たちは、無防備に見えるように振舞い、食料や兵糧を補充するように装った。忍者たちが隙に潜り込むことを期待していた。信長は、潜伏した忍者たちを一網打尽にするために、囮作戦の一部を用意していた。
そして、夜の帳が降りると、信長は瞬間を待つ。しばらくして、忍者たちが一斉に動き出すのがわかった。信長の目は瞬時にその動きを捉え、彼は罠をしかけていた。
「今だ!」
信長の号令で、兵たちが隠れた場所から飛び出す。忍者たちは、待ち伏せのつもりが罠にかかり、次々と捕らえられていった。信長はその様子を冷静に見守り、敵の動きを確実に潰す。その巧妙な策略は、忍者にとっても予測できなかった一撃だった。
一夜にして岐阜を掌握した信長は、ようやく上杉と武田の両軍からの圧力を一時的に逃れた。しかし、その勝利は長くは続かなかった。上杉謙信の軍が、再び京都に迫る兆しを見せていた。