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語彙力なくなるレベルで凄いと思う
「私だって苦しいよ、ここから逃げ出したい」
「じゃあ助けてって言えよ!!ここから連れ出してって僕らに命令しろよ!!!!」
「そんなの、そんなのお前達が苦しむことになる、せっかく、奏斗もたらいも、セラフも…!!!」
「セラが願ってるのはアキラがただ笑ってくれたらいいって、単純な事だよ!!僕らは…っ俺らはアキラが隣に居てくれないと嫌なんだよ!!」
「……なん、で、なんで、そんな」
「お前が好きだから、アキラのこと愛してるから!!だから俺らの傍戻ってきてよって言ってんの…っ!!」
ああ、ずるいな
そんなの、帰りたくなる
帰りたい、傍にいたい
でも、ここからは逃げられない。
なんで、幸せになれないんだろう
ずっと昔から考えていた。
普通の子供として生きていれば今頃4人で仲良く遊べていたのかな。
幸せに暮らせていたのだろうか
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「アキラ」
セラフに名前を呼ばれるのは珍しくて、なんだかむず痒い。
悲しそうな、怒っているような表情をしていたから、きっと裏切ってしまったから、嫌な思いをしているんだろうな。
ごめんって、謝りたいけど
もう身体に力が入らないし、声を出す事も苦しくて断念した。
「俺は君がした事、許さないよ」
そう言葉を口にしたセラフをじっと見つめた、死にそうな時に聞く言葉は大体お説教だったけれど、これは最後の言葉も説教になりそうだと少し笑ってしまう。
ごめん、って、口を動かした。
きっと彼らには分からないと思う
だから、だから
もう
置いていってほしかった。
こんな裏切り者の死に際なんて、お前達の目には汚すぎるよ
だから早く、行って
見ないで
泣いてしまうから
セラフは小さな小瓶を目の前に差し出した。
「飲んで」
そう言って、口元に寄せてくる
ふわりと香るのは薬の匂いだった。
嗅いだことがある匂い、多分、解毒薬なんだなと理解した。
だけど口は開けなかった。
許さないのなら、飲む必要など無かった。私自身、もう貴方達と居れるはずないから。生きてても、きっと今後罪悪感で自殺でもしそうだから
それなら、今ここで苦しくても死ぬべきなんだと、私は思ってる。
頑なに口を開けず、薬を飲もうとしなかった四季凪を見つめ、セラフは小瓶の中に入った薬を口に含んだ。
そのまま四季凪の唇に自身の唇を押さえつけ、薬を流し込むように飲ませた。
急な事により四季凪は驚いたけれどそもそも身体の負担が限界だった彼には抵抗する力もなく、少しずつではあるものの、ゆっくりと薬を喉に通していた事をセラフは確認した。
ぽろぽろと目尻から溢れ出す涙が、頬から流れ出た血を洗い流すように床に落とした。
唇を離し、親指で涙を拭うけれど、彼の目元から涙は途絶えない。
「全部許さないよ、でもお前が自分から死んでいくのはもっと許さない
罪滅ぼしとして俺らの傍に居てよ、俺らと一緒に生きて」
首元のチョーカーを無理やり外した。
小さな針を刺激しないようにゆっくりと抜いた。
身体中の痛みと痺れに襲われている四季凪を抱きしめた。
はくはくと口を開け、何かを言おうとしているけれど、四季凪のいつもの低い声は聞こえなかった。
だけど、きっと
なんで、どうして、そんな事を聞こうとしているのだと分かった。
彼は優しくて、脆いから
自分たちから離れて、死にたいと思っているのだろうと分かっていた。
だけどそんなこと許さない
「アキラ、もういいんだよ」
そう雲雀が口にして、セラ夫に変わってアキラを優しく抱きしめた。
一緒に居た時よりも細くなった腕ややつれた頬、きっと色んな事をされたのだと分かる傷跡や鬱血痕。
身体は勿論、きっと精神的ダメージも大きいはずだ。
「ねぇアキラ、言って」
小さな声で、耳元で雲雀はそう言った。
「俺らは、アキラの事が好きだよ、愛してる、だから助けてって言って
ここから攫ってくれって、言って」
お願い、そう言えばびくりと肩が震えた。
アキラは雲雀にはうんと弱い
それを雲雀は分かってる。
はくりと四季凪の口が小さく開いた。
ぼろぼろと紫陽花色の瞳からは大粒の涙が止めどなく流れている。
聞こえるか聞こえないかの声量で聞こえてくる言葉に耳を澄ます。
こちとら怪盗だ、耳は良い方だと思ってる。
私、裏切り者なんですよ
「うん、だから許さない。でもお前が死ぬのも、俺らは許さない」
また、裏切るかもしれないんですよ
「その時はまたこうやって三人で突っ込んで、お前のこと説教する」
奏斗の事、つっこんでいいの?
「アキラがおらんと奏斗の事止めれる人なんて居らんよ」
たらいのパスタ、また食べてもいいの?
「いくらでも作る、アキラが食べたいもの全部作ったげる」
セラ夫と、事務所続けていいの?
「逆にセラ夫だけで事務所なんて出来んよ、アキラがおらんとさ」
途切れ途切れに聞こえる言葉を返していけば、アキラの顔はべちょべちょになっていた。
数十秒の無言を貫き、アキラの口がゆっくりと開かれた。
たすけて
そこまで聞こえ、彼の頭を撫でようとした瞬間、胸板を強く押され、尻もちをついてしまった。
アキラが押したのか、毒が回っているから激しく動いてはいけないと声をかけようとした瞬間、大きな音と火薬の匂いが鼻をかすめた。
自分に覆い被さるように、アキラは腹の上でぐったりと倒れていた。
なんで、なんでアキラばっかり こんな目に合わなくちゃいけない。
どうして、こんなにも傷付かなきゃいけないんだ。
いつの間にか奏斗に引きづられ、俺とアキラは物陰に隠されていた。
「っ…アキラ、アキラ返事しろ、おい!」
名前を呼んでも返事はなかった。
ただ苦しそうに傷口を押さえている。
「雲雀止血出来る?直ぐに傷口縛って」
「分かった、アキラ頼むからこんなとこで死ぬな、頼むから」
冷静になれ渡会雲雀、今ここで動揺したとしても傷口を縛らなければ止血も出来ないしアキラが死んでしまう。
ぐっと傷口を縛ると、ぅ゙、と声が聞こえる
何かを喋ろうとしていた。
「かな、と」
「喋んな、後で聞いてやるから」
「……せら…、せらお、とめて」
「っ…お前、自分が今どんな状態なのか分かってんの、死にそうになってんだよ」
「おねがい」
もういやなんだよ、これ以上セラフにあんなことさせたくない。
小さくそう言ったアキラの髪を撫でる。
さらさらとした黒髪には血液が付着している。
「セラフはアキラの為にしてるんだよ、アキラが嫌なら殺させない、でも落とし前は付けてもらないと、僕らの大事な人がこんな目に合ったんだからさ、それでもだめ?」
ぎゅっとアキラの手を掴み、奏斗は苦しんだ表情でそう言った。
アキラを安心させるために。
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「だから殺すべきだったんだ!お前達を殺そうとしてもこいつが邪魔をしたから計画が全て狂った…!!」
ああ、もうこいつには話なんて通用しないのだろう
凪ちゃんの為にも、殺した方がいい。
「セラフ!」
声が聞こえ、はっと後ろを向いた。
いつの間にか奏斗がナイフを止めていた。
「っ…止めんでよ奏斗!!こいつは凪ちゃんの事っ!!!」
「もうこれ以上セラ夫に殺しなんてさせたくないってさ、お前の大好きなアキラからのお願いだよ、以上ここに居たらほんとにアキラが死んじゃうよ」
「……こいつを、殺さなかったら」
「分かってる、だから僕もこいつを殺さなくても生きていけないくらい苦痛を味わせるつもり、でもこいつよりも僕らには大事な人が居るでしょ」
「___後で回収する為に縛っておく、だから奏斗、一緒に頼める?」
「任せなよ、そういうのは大の得意だし
だからこんなやつよりも早く、アキラを病院に連れていこう。」
「…うん、そうした方がいいや」