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#イラスト
しおもも
2,514
真実を知ったあとの激しい抵抗も、今や遠い過去の出来事のようだった。
部屋の窓から差し込む光の角度が変わるのだけが、時間の経過を教えてくれる。イギリスはもう、手首を縛られてなどいなかった。けれど、彼は自らベッドから降りようともしなかった。
「……フランス」
薄暗い部屋に扉が開く音が響くと、イギリスはベッドの中からゆっくりと顔を上げた。
かつての気高く毅然とした紳士の面影は、もうどこにもない。琥珀色の瞳は光を失ってとろりと濁り、ただ部屋に入ってきた男だけをひたむきに追っている。
「ただいま、僕の可愛いイギリス。いい子でお留守番できていたかい?」
フランスがベッドの端に腰掛け、優しく微笑む。イギリスは押しに弱いその性質のまま、吸い寄せられるようにフランスの膝の上へと這い寄り、その細い腕をフランスの首に絡ませた。
「はい……。ずっと、あなたを待っていました。……私を、置いていかないでください、フランス」
口調は丁寧な敬語のままだが、その内容は完全にフランスへの依存に染まりきっていた。
世界中から大罪人として指名手配され、居場所を失ったイギリスにとって、今や自分を存在させてくれるのはフランスのこの腕の中だけ。彼を拒絶することは、自らの死を意味していた。
「置いていくわけないじゃないか。君は僕の、世界で一番大切な宝物なんだから」
フランスは満足げに目を細め、イギリスの細い腰を引き寄せた。
指先がイギリスの服の隙間から滑り込み、白い肌を愛撫するように這う。イギリスはその愛撫に、ビクッと身体を震わせ、フランスの胸に顔を埋めた。
「あ……、はぁ、っ……。フランス、もっと……もっと私を、壊してください……。何も、考えられなくなるくらいに……」
「ふふ、可愛いね。本当に、僕だけのいい子になった」
フランスが顎を持ち上げ、無理やり視線を合わせる。イギリスの目からは、自らの境遇への絶望と、それでもこの男にしか縋れない歪んだ快楽が混ざり合い、ぽろぽろと大粒の涙が溢れ出していた。
「ひぐっ、う……、私は、もう……あなたの、お人形、ですから……。だから、お願い、します……。私を、一人にしないで……っ」
泣きじゃくりながら、自らフランスの唇に縋り付くイギリス。
その涙をフランスは愛おしそうに舌で 舐めとり、深く、息が詰まるほどの口づけで、彼の呼吸を奪っていく。
かつて世界を股にかけた『大英帝国』は、今やフランスの邸宅の、たった一枚のベッドの上だけで生きる存在となった。
外の世界がどれだけイギリスを非難しようと、ここには聞こえない。彼を傷つけるものは何もない。あるのは、狂った男の圧倒的な、甘い愛だけ。
「そうだよ、イギリス。君には僕だけ、僕には君だけだ」
世界を敵に回して手に入れた、僕だけの王。
フランスは、自分の腕の中で完全に堕ち、涙を流しながら微笑むイギリスを、二度と離さないと誓うように、強く、強く抱きしめ続けた。
二度と開くことのない、美しく甘い檻の中で。
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