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復讐の序章で泣きわめかれてもね……
私は自室で頬の傷を確かめながら、この薄い紙で出来たような小さな傷よりも、遥香のプライドについた傷の方が大きいのだろうと思った。
切れているというより、点々といくつか血が滲むような小さな傷。
数日で気にならないと思う。
「自尊心なら、他人の評価に左右されにくいだろうけど…遥香のはくだらないプライドだからね。他人からの評価に価値があって優位性を感じるんだよね……クズが!って叫んでいたのは傑作だったわ……」
私は小さく独り言を言いながら、簡単に頬の傷を消毒すると
「ぃた…ぃ…」
洗顔した時よりも、消毒液が沁みてぎゅっと目を閉じる。
それから着替えて、ワンピースのポケットからボイスレコーダーを大切に取り出すと
「あ……」
エプロンのポケットから、篤久様のハンカチが落ちた。
ネイビーのハンカチには、掠り傷程度の血がついても分からないな……
私はハンカチとボイスレコーダーを持って、平机の前に座った。
そして、イヤホンを耳につけ録音データを確認する。
はっきりと録音された遥香の声を聞きながら、このあとの計画の詳細をじっくりと考えた。
もうこれで最終段階に入る。
今までは遥香の名前も私の名前も分からないように加工していたけれど、次は全てを晒すつもりだ。
そう思うと、篤久様に申し訳ない気持ちがする……
私はネイビーのハンカチを握りしめ
「篤久様……」
中園を晒すことにもなる申し訳なさで、不覚にも涙がこみ上げてきそうになる。
慌てて歯を食いしばると、奥歯がおかしな音を立てた。
でも、それに気づかないふりで、私は【奴隷家政婦】の投稿をする。
『今日は事件の証拠となるかもしれない音声録音になったので、ほんの一部しか投稿できない』
と初めてデータの投稿だけでなく、説明文を入れる。
そしてデータは
『……アンタみたいな底辺の奴隷は、口答えが出来ても使えないことがよーくわかったわっ!』
この一部分だけ。
あとは、初日からのデータを加工なしで整理することに時間を費やした。
おそらく、来週にはこれを使うことになる。
篤久様がかばってくれたけれど、公にかばってくれたことで、あの腐った魂の母子は二人で私を追い出しにかかるに違いないもの。
そう覚悟していたのだけれど、遥香母子は思わぬ形で反撃してきた。
コメント
7件
思わぬ形ってなんやろ😰 真奈美ちゃんには、みんながついとるで💪💪💪
反撃〰😠返り討ちあるのみ👊👊👊
傷は残らなそうでよかった…😌じゃないと全てが終わった後でもその傷を見るたび思い出すもの… 最終段階に入るのね。 篤久様や篤志様は晒されることについてはお怒りにならないと思う。逆に喜ばれるのではないかと… 思わぬ形とはどんな反撃なんだろう。あ!真奈美ちゃんみたいに自分の動画サイトに泣きつく?メイドに真奈美に嫌がらせされた!って。あれらはご主人様まで騙してきたからね、ちょっとやそっとの反撃じゃないと思う。 でもたとえどんな形で反撃してきても、とにかく冷静に、そして加工なしのデータを早めに使おう。