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上野文
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こはる
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#探偵
橘靖竜
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最近、地球女の習性が少し理解出来てきた。
コイツらは言質が欲しいから、朝から晩までペチャクチャと喋っているのだ。
特にコイツらの言う【友情】だの【愛】などは、全て相手から自分に有利な言質を引き出さんが為のツールに過ぎない。
コイツらと口を効くのは無駄だとハッキリ理解した。
『村上さーん。
これが俺の辿り着いた真理です。』
「オマエ馬鹿だろ。
普通は中坊の頃にはみんな悟るぞ。
初彼女出来た時点で気づかなかったか?」
『彼女とか出来た事ないですよ。
俺陰キャですもん。
クラスの女と全然接点なかったし。
学習機会ゼロなんだから仕方ないっすよー。』
「そっかー。
時代の違いとか色々あるからなぁ。
まあ頑張れ。
俺も元嫁には散々泣かされたわ。」
『いやいや。
俺なんか×3に加えてチャコちゃんさんの猛攻に晒されてるんですよ。』
「あー、それは人生詰んだかもな。
やっぱり一夫一妻制考えた奴は賢いわ。」
『もう疲れました。』
「分かる。」
『助けて下さい。』
「えっと、助けるというと具体的には?」
『女共の精神を安定させたいんです。
アイツら顔を合わすなりギャオーンするんですよ。』
「ああ、そういう…
まあ出産前のメスは気が立ってるからな。
熊や猪と同じだ。」
『何とかなりませんか?』
「うむ、では奥義を授けよう。」
『お!?
人生の大先輩モード来ますか?』
「女の精神状態は不動産ランクと直結している。」
『え!?
いや、まさか!?』
「いやいや、マジマジ。
不動産のランクを上げれば上げる程、女の精神には余裕が生まれるんだって。
具体的には自分より恵まれてない女を煽り散らしてマウントを取る程の余裕が生まれる。」
『なーんか、そういう生態の昆虫が居そう。』
「アイツらを黙らせたいなら、機械的に不動産のランクを上げてインスタ病に付き合ってやれ。
不動産良ければ(女の側は)全て良し、と昔から言うんだよ。」
『えっと六本木のタワマンを買ったチャコちゃんさんが永続キチガイなんですけど、それは…』
「自分で買った不動産はノーカンな。
あくまで男が提供した不動産でなきゃ鎮静効果はないぞ?」
『えっと、カネが幾らあっても足りないんですけど、それは…』
「だからオマエの換金を俺も必死に手伝ってるじゃねーか。
とりあえず、不動産のランクを上げて行け。」
『いやいや、出産前に引っ越しとか駄目でしょ。』
「ところが女はランクアップする分には上機嫌で付いて来る。」
『マジっすかぁ。』
「うん、そういう生き物だから諦めろ。」
『アレっ?
じゃあ最初から六本木のタワマンに住んでるチャコちゃんさんは、どうやって鎮静化するんですか?』
「…そりゃあ、オマエ。
男なんだからガツーンとやらなきゃ。」
それが出来るのなら俺の右手は死んでないと思うがな…
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「よーう、飛田君。
また等級上がった?」
『ええ、手帳申請したら3級は狙えるらしいです。』
橋本コージ極秘帰国。
言うまでもなく地元愛知には立ち寄らない。
(殺されちゃうからね。)
これからは都内で平穏にFIREするのだ。
東京にはこの手の成金が多いので目立たずに済む。
なので、空港に迎えに行ったその足で橋本が買った広尾の不動産に村上翁と共に向かう。
「村上専務、この度は色々ありがとうございました。」
「いえいえ。
橋本社長が少しでも早く東京に馴染めるように取り計らいます。」
「おぎゃあ! おぎゃあ!」
「えっと飛田君。
後ろの席は?」
『妖怪チャコちゃんです。
赤ちゃんを産むまでは赤ちゃんに偽装して我々の商談を妨害し続ける妖怪だそうです。』
「ばぶー! ばぶー!」
「おお!
僕、子供の頃そういう系の話が大好きだったよ!
親に頼んで水木しげる先生の漫画集買って貰った事もあるしね。」
『あ、良かったら贈呈しましょうか?』
「あんぎゃー! あんきゃー!」
「あ、うん。
今は大人だし、いらなーい。」
そりゃあそうだろう。
橋本は扱っている金額がレベチだからな。
例えマイナー妖怪でもビジネス上のリスクは負える訳がない。
ちな、さっきは村上翁の商談がこの妖怪の所為で潰れた。
取引相手がカンカンに怒りながら帰ってしまったのだ。
「そんな事より、トビタ君の家は近いの?
府中だっけ?
名前は聞いたことあるんだけど。」
『あ、いえ。
渋谷からだと1時間くらいですかね。』
「えー、そんなに離れてるの!?
参ったなあ、僕は土地勘もないし
遊ぶ相手とか全然居ないから、しばらく飛田君にくっついているつもりだったんだけど。」
『あ、そうなんですね。
スミマセン。』
「1時間かぁ。
飲みに誘うのに相当躊躇う距離だよね。」
『いや、まあコージさんでしたら、いつでも付き合いますよ。』
「おお!
じゃあ、早速!
…いや、待てよ。
君の奥さん臨月×3だよね?」
『双子も混じってるので×4です。
本妻も合わせると×5。』
「駄目駄目!
幾ら僕でも、×5の新パパを誘うなんて出来る訳ないよ!
奥さん怒るんじゃない?」
『そうっすねぇ。
狭い戸建てに3人、いや今は4人か…
4人詰め込んじゃってて。
最近、ホントに俺への当たりが強いんですよ。
コージさん助けて下さいww』
「えー、それを独身の僕に聞くーww?」
3人で爆笑しながら車は広尾に向かう。
流石に外交官が多いだけあって豪華な街である。
「へー、いい感じじゃない。
アラブ系、結構目立つね。」
『アレルギー残ってます?』
「しばらくはガイジン見たくない。
ケバブは定期的に食べたいけど。」
『この辺、大使館多いですからねえ。
もうガイジンは諦めて下さい。』
「分かったー。
この辺、夜遊びスポットはあるの?」
『えっと、渋谷の立地ですと…』
「おぎゃああああああああああ!!!!!!
おぎゃああああああああああ!!!」
「うわっ!
びっくりした!!」
「ケガレナキアカチャン!!!!
ケガレナキアカチャン!!!!」
『俺の前でシモの話題をすると発狂するんです。』
「水木先生にこの妖怪をお見せしたかったねぇ。」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
広尾の2棟。
1棟は5階建てのオフィスビル。
やや築年数が古いが好立地+管理会社が優秀なのか全室埋まっている。
その隣のデザイナーズマンションに橋本コージが入居する。
B1・1Fが商業用テナントとなっており、2Fから4Fまでがそれぞれ1フロア丸々1室ずつの住居用分譲、最上階+屋上がオーナーズルームとなっている。
上海の投資会社が転売の為に抑えていたので1F以外の入居者はいない。
(そして1Fのブティックも今月退去とのこと。)
資金繰りの関係で投げ売りしたのを橋本が買い叩いた形。
「へえ、結構駅から近いね。」
『ええ、一応商店街って位置付けらしいです。
商店街組合にも加入しなきゃ駄目っぽいです。』
「えー、僕そういう付合い嫌いなんだけどね。
飛田君が代わりに入ってよ。」
『いやいや、俺府中民ですし。』
「じゃあ、部屋空いてるからあげるよ。」
『俺、障碍あるんでマンションは辛いっす。』
「ワープしてきなよ。
この部屋を僕の寝室にするからさ、こっちの押し入れあげるよ。」
『でかっ!!
押し入れデカっ!!』
引き戸なので橋本は【押し入れ】と表現したが、階段との隙間スペースを利用した大型クローゼットである。
その反対側にウォークインクローゼットもあるので、間取り図で見るより豪華な部屋である。
「そうかな?
ドバイに比べれば大したことないけど。
プール付いてないし。」
橋本は段ボールをノソノソと開けると、お洒落な柄のクッションマットを押し入れに敷いてくれる。
この男の中で俺のワープポイントとする事は確定したらしい。
『じゃあ、たまにお邪魔します。』
「え?
ここに住むんじゃないの?」
『いやいや。
子供ももうすぐ産まれますし、遊び歩いている訳にはイカンでしょ。』
「じゃあ。」
何が「じゃあ」なのかはさっぱり分からないが、×3に空いている部屋が割り振られる事に決まった。
例によってワンセット扱いされて不機嫌な女共だったが、【広尾】という単語を聞いた瞬間に露骨に態度が変わる。
1時間後にニコニコしながらやって来た。
「飛田南でーす♪」
「飛田梢で御座います。」
「飛田らぁら(本名)です♥」
コイツラに飛田姓を許した記憶は1ミリもないのだが、勝手にそう名乗っているらしい。
親父、ゴメンな。
「ども、橋本です。
部屋の割り振りは飛田君と相談して下さい。」
『コージさん、それは流石に悪いですよ。
兎に角!
3人共、もっとちゃんと御礼を言って!!
えっと、では一番安い部屋を教えて貰えますか?
我々はそこに入居しますんで。』
「え?
いっぱいあるんだから1人1部屋でいいじゃん。」
「「「きゃー♥」」」
どれだけカネが余ってるのかは不明だが2~4階までの部屋を気前よく提供してくれる。
女共は早くも自分がどの階を取るかで笑顔のままで揉め始めた。
頼むからこれ以上俺に恥をかかすなよ…
『コージさん、流石にヤバいっすよ。
弊社から家賃を納めさせて下さい。』
「あー駄目駄目。
日本円だと税金掛かっちゃうから。」
『じゃあ、コレ。』
「ん?
何?」
『アレキサンドライトっす。
売れば相当なカネになりますし…
本命女性へのプレゼントにするのもアリです。』
「うーん、女の子にそこまでの価値はないからねー。
1晩1000$が本来の上限じゃない?
まあいいや、友情の印として大切にするよ。
形見にだけはしないでね。」
流石に石ころ1つで報恩に代わるとは思わないので、別に何か支払うと申し出る。
5分程押し問答した挙句、幾つかのインサイダー工作に助力する流れとなった。
「まあ、これでいいじゃない。
どのみち奥さん達に広い部屋を探してたんでしょ?」
『そうっすね。
本当にありがとうございます。
アイツら同士を隔離出来て安心しましたわ。』
「おぎゃあああああああ!!!!!
おぎゃああああああ!!!!!
ほんぎゃあああああああ!!!!」
「?」
『?』
「チャコちゃんも!!!!
チャコちゃんもおおおお!!!!!」
「ゴメンねー。
このマンションの賃貸区画は3世帯だけなんだ。」
『メッ。
六本木のタワマンで我慢しなさい!』
「あんぎゃあああああああああああああ!!!!!」
「飛田君、どう?
この後、2人で一杯行こうよ。」
『すみません。
最近は義父がうるさくて。』
「おぎゃああああああ!!!!
おぎゃああああああ!!!!」
「ああ、本妻さん月内だもんね。
順調?」
『はい、極めて安定しております。
元々頑健な女性ですし、何よりメンタルが安定してますから。』
「あぎゃああああああああああん!!!!」
「お、いいじゃん。
やっぱり精神面が一番重要だよね。。」
『ええ全くです。
女なんて精神良ければ全て良しですよ。』
「…おぎゃ!?」
『「はっはっは。」』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『ただいまー。
お義父さん、今日は早いですね。』
「ああ、スタンピード問題も一段落したしな。
合衆国さんも魔族への責任追及は行わないと議決してくれた。」
デサンタチームの法人登記も正式決定。
元王国軍なので国籍こそ付与出来ないが、5年期限市民権に関しては規約通りに付与されるそうだ。
「くどいようだが…」
『ええ、俺はキャラバンには同乗しません。』
「これは親のエゴだが…
娘を未亡人にだけはしたくないのだ。
理解してくれよ。」
俺は深々とブラギに頭を下げる。
出逢った頃の義父には殆ど白髪など無かった。
本心から申し訳ないとは思っている。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ヒロヒコ。
父が無理を言ってゴメンなさいね。」
『お義父さんの心配は当然だよ。
俺の所為で難しい舵取りを強いられているらしいしね。』
ブラギは黙っているが、彼の立場は悪化している。
当然だろう、ハーフドワーフの孫が出来てしまう以上、政治家として氏族から全面的な信頼を得るのは難しい。
去年までは殺到していた弟子入り志願者が今年は1人も居ない。
もうそれが全ての答えなのだ。
「でもキャラバンに同乗するんだよね?」
『…。』
エヴァには敵わないな。
流石に俺をよく見ている。
『いや…。
キャラバンには参加しない。』
「…。」
『決着は俺1人で付ける。』
エヴァの腹からはっきりと胎動が伝わる。
その鼓動は何かを訴えるかのように力強かった。
まあオマエの母親はアタリだからいいじゃねーか。
コメント
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毎回、飛田君の苦労がエスカレートしてて笑っちゃうんだけど、今回の「不動産ランクで女の精神安定」理論は村上翁の奥義としてめっちゃ腑に落ちた。橋本コージ帰還でさらにカオスが加速する予感。チャコちゃんの妖怪っぷりも相変わらずで、水木しげる先生に見せたかったって台詞に吹いた。最後のエヴァとのシーン、静かで芯がある感じが良かった。飛田君、一人で決着つけるのか…次が気になる。