懐かしくて、嫌な感覚。
もう忘れかけていた、いや忘れようとしていた、忘れてはいけないあの時が頭をよぎる。
ひびきの祖父:
ひびき、こいつらには全て想いがこもっちょるんじゃ。
ひびき:
でもじーちゃん、せっかく溜まったのにまた0からなんて、なーんかもったいない気がするよ
ひびきの前には、祖父が作った何個もの砂時計が置かれていた。
ひびきの祖父:
なくなっては積もり、積もってはなくなる。
じゃからこそ愛しくて、また見たくなるんじゃ。
人間もおんなじなんじゃ。
ひびきの前には、ひびきと会う前の、
いや、さらにもっと前のちはるがベットに置かれていた。
ひびきは強く思った。
ひびき:
これが…
じいちゃんの言ってたことの意味がわかった気がする。
色を失ったちはるの目は静かにひびきに向いている。
ちはる:
どうして…泣いているんですか
ひびき:
ごめんね急に。平気平気。
涙を拭ってひびきは続ける
ひびき:
君は昨日、事故にあって記憶を失ったんだ。俺は、高校一年のときから付き合ってる君の彼氏。
まえだひびきです。
ちはる:
お医者さんから聞きました。ごめんなさい。
思い出せないんです。
本当に…ごめんなさい。
ドアが開いた。
医者が診察来たため、その日は帰ることにした。
悔しかった。
自分が好きだったのは、馴れ馴れしく話してくれる、’あの’ ちはるだった。
少しでもそう感じたことが許せなかった。
大雨でひびきの足跡はかき消される。
ひびき:
じいちゃん。 やっぱり俺は、砂時計が嫌いだ。
でも、ひっくり返してみようと思う。
ひびきの頬を雨が流れていった。
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