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#ドS
side|久遠武人《くおんたけと》
その日、アメリカから来たご夫婦の結婚記念日のサプライズパーティーを計画・実行し、それは成功。
俺は久しぶりに定時に帰る事が出来た。
その夫妻は、後はチェックアウトだけなので、他のコンシェルジュに話を通してあった。
帰ろうとした時、私服に着替えた琴宮とばったり会った。
「お、琴宮、今上がり?」
「うん、そうよ。
お疲れ様ー。」
琴宮は久しぶりに機嫌良さそうにそう答えた。
「お疲れ!
軽くメシでもどう?」
俺はダメ元で誘ってみる。
「いいわよ、その代わり武人の奢りよー?」
彼女はお茶目にそう言った。
そんな事で夕食を共にしてくれるなら、俺は破産するまで奢り続けるだろう。
それくらい彼女が好きだった。
彼女が居るから、このホテルに残っているとも言える。
何度か、他の高級ホテルからのヘッドハンティングはあった。
だが…
俺の答えはいつも、NO、だった。
「いいよ。
どこがいい?」
俺は嬉しさを隠して尋ねる。
「かしこまった所は嫌だわ。
美味しい居酒屋があるのよ、この道の先に。」
という訳で琴宮おすすめの居酒屋に向かった。
席は会社帰りのサラリーマンやOLで溢れていた。
少し待って、カウンターの席で良いと伝えて入る事が出来た。
適当に料理を注文して、彼女はウーロンハイ、俺はハイボールを頼んだ。
「でね、天羽オーナーが…!」
「その時天羽オーナーが…」
「天羽オーナーったら…」
琴宮はウーロンハイを飲みながら、天羽の話ばかりをした。
俺の嫉妬心には簡単に火がついた。
「琴宮、お前アイツに惚れてるわけ?」
俺は不機嫌そうにそう聞いてみた。
「まっさか!
お客様の1人よ!
私がお客様を恋愛対象にしないのは、武人がよく知ってるでしょ?」
キョトンとして言う彼女に、俺はいささか呆れた。
天羽オーナーの話をする時の彼女は恋する乙女そのものだったからだ。
とにかく、俺の目にはそう映ったし、琴宮が自分で気づいて無いだけで、彼女は天羽に惹かれている。
そう考えた。
俺の胸は締め付けられ、それを酒を飲んでなんとか誤魔化した。
ちょうどよく酒が回り、出来上がった俺たち2人は、少し夜の道を歩く事にした。
「じゃあ、私はここからタクシーで…」
琴宮が帰ろうとしたその時、俺は彼女を後ろから抱きしめた。
「た、武人っ!?」
「好きだ…」
「えっ…?」
「コンシェルジュとして再会した時から、ずっとお前が好きだったんだ。」
俺は遂に告白してしまった…
NOと言われるのは、分かり切っているのに…
案の定、琴宮は小さな声で、「ごめんなさい…」と言った。