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ボヤァ〜っと目を開ける。
「はっ!ヤバい!遅刻…」
ハッっと目を覚まして辺りを見るが、そこは自分の部屋ではなく
四角の釜戸に四角のクラフトテーブル、ブロックでできた世界。
2日寝ておらず、昨日初めてベッドで寝たため、起きたとき、未だに学校へ通う世界にいると思ってしまう。
「…あぁ。やっぱ夢じゃない。現実か」
鼻から息を吐き、寝返りをうつ。すると
「冷たっ」
枕が冷たかった。どうやら2日徹夜で鉱石などを掘ったり、走り回ったりしてあまりに疲れたのか
マンガやアニメのようにヨダレを垂らして眠っていたようだ。体を起こす。体が痛い。
「あぁ〜…痛たたた」
ふくらはぎも腰も腕も手も痛い。とりあえず外に出る。
チュンチュンチュンチュン。鳥の声。外はカラッっと晴れている。
地面に水たまりは残っていたものの、空に雨雲は残っていなかった。変わらずお風呂代わりに川へと入る。
「あぁ〜…きもち〜…」
筋肉痛の腕や脚、痛い腰が冷やされ、汗をかいた体も頭も洗い流され、最高に気持ちいい。
川から上がり、芝に寝転がる。芝が濡れる。
「あぁ〜…」
夢じゃなかったことへのちょっとしたガッカリ感もあった。しかし
「晴れたなぁ〜」
前日までの出来事が夢じゃなかったことへの嬉しさもあった。
「コケー!」
「おっと」
よいしょと立ち上がり、服を着てお主の元へと歩く。
「おはよーお主」
「コケッ!」
右手に種を持ってお主に朝ご飯をあげる。その間周辺を見る。すると
「お!果樹園!」
植えた果実のなる苗木が育って木になり、果実がなっていた。
「小麦も!」
小麦も数株育っていた。
「コケ!」
お主がご馳走様と言ったようだ。
「どうーいたしまして?なんていうんだ?」
お粗末さまでしたというのが世の常らしい。
「さて、オレの朝ご飯だ」
とワクワクして畑へ向かう。小麦3株で1つパンができる。
「1、2…」
3株あった。収穫し、クラフトテーブルへ。横に小麦3株を並べる。するとパンの出来上がり。
「おぉ〜」
手に取る。右手の中でパンが具現化する。
「あぁ〜…」
パンの香り。ぐぅ〜…。お腹が鳴る。パンに鼻をピタッっとつける。そこで鼻から深呼吸。
「あぁ〜…」
パンの香りしか入ってこない。なんて幸せなんだ。
「い、…いただきます!」
なぜか変に緊張し、勢いでパンにかぶりつく。
焼かれた少し食感のある外側を歯が突き抜けると中のふわふわに行き当たる。
口の中に表面の香ばしい香り、そして中の小麦の香りが広がる。
「…うまっ…」
美味しすぎてちょっと引いた。外に出る。
芝の香り、川の香り、風の香り。そこにパンの香りが加わる。パンを齧る。
「んん。うまい」
川辺に座る。靴と靴下を脱いで川にポチャンと足を入れる。
気持ちいい。そして美味しい。見上げれば白い雲が少し流れる青い空
目の前にはその青い空に出ている太陽の光をキラキラと反射させ、なだらかに流れる川。
その奥には原っぱ。木や花が生え、さらにその背景には高い山が見える。
こんな景色を眺めながら食べるなんて変哲もないパン。なんの変哲もないパンも、最高に感じる。
最高の景色に最高のパン。あっという間にパンはなくなった。
「ご馳走様でした」
とは言ったものの、もう1つ食べたかった。裸足のまま果実の収穫に行った。
全ての果実を収穫する。クラフトテーブルに行って新しい果実の苗木
ジュースをクラフトして、残りは食べた。そしてジュースも飲んだ。
パンの後にフルーツ、そしてフルーツジュース。3日目にしてやっと食事らしい食事を摂れた。
「さぁ〜て。今日はど う す る か」
とりあえず収穫を終えた果実の木を斧で伐って再度苗木を植える。
前日、洋館があったトウヒの木の森を北としたとき東側
洋館があったトウヒの木の森を前としたとき右側は
走って走って、羊を見つけて羊毛を刈って帰っただけだったので
探索という探索はしていない。なのでとりあえずそっちの探索に向かうことにした。
前日と違い、歩いてゆっくりと探索する。原っぱ。花が咲いており、ところどころにオークの木が生えている。
「メェ〜」
変わらず羊の群れがいた。群れといっても5匹程度だが。
「よぉ〜」
「メェ〜」
前日できなかったことをやる。羊に抱きつく。
「あぁ〜…モフモフぅ〜」
ベッドよりもモフモフでふかふかで、臭いがするかと思いきや、全然臭いもなく
「このまま寝たい…」
という思いを振り切って羊たちの毛を刈る。毛の刈られた羊の皮膚を触ってみる。
「おぉ〜。あったかい」
野球部の坊主頭と違い、皮膚は柔らかかった。野球部の坊主頭と同じく、チクチクはしていた。
「あぁ、きもちーな」
「メェ〜」
「よし。君らがここにいることは覚えとこう。いつかうちの近くに来てもらおう」
「メェ〜」
「じゃ、またね」
羊たちに別れを告げ、探索の続きをした。
結局、洋館があったトウヒの木の森を北としたとき東側、洋館があったトウヒの木の森を前としたとき右側は
原っぱが続き、小高い丘、その奥にはトウヒの森が広がっていた。ということで、一旦拠点へと引き返した。
「そっかそっか」
謎に自分で納得する。川を境に拠点側はある程度探索した。ま、トウヒの森の奥は探索してはいないが。
「川越えか…」
なにかめちゃくちゃ大変そうに言っているがたった川幅2〜3メートル。
対岸はすぐそこである。丸石でテキトーは橋をかけて対岸に渡る。
対岸は少し丘のようになっており、1メートルのブロック1つ1つを大変な思いをして上る。
「んしょ…っと」
その先に見えたもの。原っぱ。変わらず原っぱ。しかしその奥には白い木の森が見てとれた。
「お。白樺じゃん」
白樺の森だ。白樺は木材ブロックにすると他の木々よりも白い木材となる。
なので建設材料としては重宝するのだ。しかし
「また森かぁ〜…」
トウヒの森に白樺の森。当分木材に困らないのはありがたいのだが
「探索、めんでぇ〜」
探索がめんどくさいのだ。木々で周囲の景色は同じで
どこまで進んだのかわからなくなるので迷う。とりあえず白樺の原木ブロックがほしいので
斧で白樺の木を2本ほど伐って白樺の苗木も入手した。
一旦拠点へ帰ってチェストに白樺の原木ブロックと苗木を入れた。
「さてと。…どうしよ」
本当はもっと探索がしたい。地図を持ってトウヒの森の奥や白樺の森の奥も探索したい。
そのためには当たり前だが地図が必要。地図を作るには紙が必要。その紙は
「サトウキビか」
サトウキビが必要である。
「川辺散歩でもいきますか」
サトウキビは大抵水辺に生えている。川沿いを歩いていく。海に行き着く。
今度は海沿いを歩く。するとすぐに大きな裂け目に突き当たる。
ボートを使って海を迂回して裂け目を越える。すると昨日の小高い丘に来たので上る。
「うぅっ」
昨日のゾンビのことを思い出すと身震いする。丘を下り、海沿いを進んでいく。
トウヒの森が現れる。トウヒの森に迷い込んだら大変だが
今は海沿いに歩いているのでそこは平気。しばらくトウヒの森を右手に歩いていると
目的のサトウキビではないものが現れる。
「あ、スイカだ」
緑に黒いストライプ。スイカである。それにしても四角いスイカ。
「四角いスイカは…こう考えるとおもしろいな」
自分が画面を見ながらゲームをプレイする側だったときは
それこそゲームだと思っていただろうから気にもしなかったが
実際目の前で見ると印象が違うものだ。斧でスイカを取る。
4枚の薄切りされたスイカが入手できた。その場で食べる。
種は気になったが、その赤い果実の瑞々しさに負け、かぶりつく。
「んん〜…んっま」
しかもなぜか種が全くない。見たときは黒い種があったのに
食べ終え、皮だけになるまで種が気になることはなかった。さらに例の如く、皮もパッっと手元から消えた。
「あっぶな」
口から果汁が溢れそうになるほど瑞々しく、美味しかった。そのまま海沿いを歩いていく。
トウヒの森、トウヒの森、トウヒの森。
「こりゃ入ったら二度と出てこれないかも」
冗談半分、本気半分だった。また小高い丘が現れる。
その横には小高いなんて生ぬるいものではない、普通に高い山が聳え立っていた。
「わお」
小高い丘を登ろうとしたとき、小高い丘の地面の付け根の辺りに
ぽっかりと洞窟への穴が空いていることに気づいた。少し覗いてみようと洞窟へ近づくと
「ウオォ〜…」
ピリピリピリッっと全身の毛が危機感で逆立つように背筋が凍りついた。ゾンビがいる。
その洞窟の上部から恐る恐る覗いてみた。するとそこにはゾンビが3体ほどいた。
相変わらず緑色の肌に、光の全くない、光を吸収したいまうかのような黒目。
相変わらず恐ろしい姿だったが日陰から出てこない。
そう。ワールド メイド ブロックスの世界のゾンビは日光にあたると燃え上がるのだ。
なので日が落ちない限り
「怖いけど、ここなら安全だもんねぇ〜…」
と震えた声で挑発だってできてしまう。
「ウオォ〜…」
「うおっ」
ビビらないとは言っていない。小高い丘を登る。
その奥はトウヒの森は終わっており、また平原が広がっていた。
「おぉ〜?なるほど?」
平原の奥にはまた小高い丘、そして山があった。
「そろそろ本格的に登山ですか?」
冗談ぽく言ったものの、いつかは登山をしなくてはならないという事実を誤魔化すかのように
「おぉ!牛!あぁ!鶏!」
と言いながら小高い丘から駆け下りた。
「モォ〜」
「牛さん〜。今バケツ持ってないんだよぉ〜…。牛乳ぅ〜…うぅ〜…」
牛に抱きつきながら膝から崩れ落ちる。
「あったかいねぇ〜」
「モォ〜」
「コケッ」
「あぁ。お主のお嫁さん」
※この鶏がオスかメスかはわかっておりません。なんならお主がオスとも判明しておりません。
「種…持っているけどぉ〜…」
今きた方向を振り返る。
「この道一緒に戻る?」
「コケッ?」
今来た道をお主のお嫁さん(いろいろ仮)を連れて帰る。小高い丘を越え、裂け目を越えるためボートに乗り
「あ!ボート!」
思いついた。ボートにお主のお嫁さん(いろいろ仮)に乗ってもらい
海沿いを見て、サトウキビがあれば回収。無ければ無いで海を沿って、川に入って帰ればいい。
「あぁ。楽じゃん」
ということで早速、海にボートを浮かべ、種を使いお主のお嫁さん(いろいろ仮)をボートへ誘導した。
「おぉ」
ボートにちょこんと乗るお主のお嫁さん(いろいろ仮)の姿が
「可愛いな」
可愛かった。優恵楼(ゆけろう)もボートに乗り込む。
「コケッ!コケッ!コケッ!」
「ごめんごめん!」
揺れるボートに慌てるお主のお嫁さん(いろいろ仮)。ボートの揺れが収まり
「んじゃ。出発進こー!」
「コケー!」
出発した。オールを使いボートを漕ぐ。平原の奥の小高い丘越える。
島はそこで終わっていた。そして割と近くに陸があった。
「あの距離ならぁ〜…」
といろいろ考えたが
「まだ保留で」
距離とか地図がないとかいろいろ考慮して保留とした。
とか考えながらボートを進めていくと山の裏の海沿いにサトウキビを発見した。
「いいね!今日は収穫がすごい」
ボートから降りてサトウキビを回収する。
「コケッ!」
「ありがと!」
ボートに乗って来た道を引き返す。小高い丘、牛のいる平原
「牛乳ぅ〜…」
トウヒの森、また小高い丘、川の入り口。そこから怖い思いをして建てた目印の柱が見えた。
何度見ても誇らしい。川に入り、幅の狭い川を慎重にボートで漕いでいると
段々と目印の柱が大きく、高くなっていき目の前に来た。
「ヨーホー。さて到着だ。…ヨーホーの意味わからんけど。よく海賊とか船乗りが言ってるイメージない?」
「コケッ?」
ちなみに「ヨーホー」は「yo-heave-ho」の略で「わっしょい」とかいう意味だそうです。
さらに「yo-ho」は「yo-ho」で意味があり
日本語で「ヤッホー」「おーい」「えんやらや」「よいしょ」などという意味があるそうです。
ボートを降りてボートを回収する。いきなりボートが無くなり
お主のお嫁さん(いろいろ仮)は一瞬宙に浮き、羽で羽ばたきながらゆっくりと川へ入っていった。
「おぉおぉ。ごめんごめん」
優恵楼(ゆけろう)は種を右手に持つ。すると
「コッコッコッコッ」
と鳴きながらお主のお嫁さん(いろいろ仮)は陸に上がってきた。
「お主〜お嫁さんですよぉ〜」
「コケッ?」
お主の囲いの一部のフェンスゲートを開ける。
「コケッ」
お主も種に釣られて外に出てくる。
「おぉ。お主は出てきちゃダメよ。戻って戻って」
優恵楼(ゆけろう)が囲いの中に入る。するとお主とお主のお嫁さん(いろいろ仮)も囲いの中に入ってきた。
右手の種を引っ込める。急いで囲いの外に出てフェンスゲートを閉める。
「…どっちがお主?」
「「コケッ」」
「…」
混ざった。
「お主!」
「コケッ!」
「お前がお主か」
「コケッ」
奇跡的返事をしたお主。
「お主ー。お嫁さんだよぉ〜」
「コケッ」
「コケッ?」
「おぉ。早速いちゃついてる」
どうやら奇跡的に女の子だったらしい。
本来、ワールド メイド ブロックスの世界の動物にはオスもメスもないのだが。そこは相違点があるようだ。
「お主のお嫁さん…奥さん…お奥ちゃん。お奥ちゃん!」
「コケッ?」
優恵楼(ゆけろう)のネーミングセンスは壊滅的なようだ。看板の名前も書き直す。
お主♡お奥
「よしっ」
よしではない。しかし優恵楼(ゆけろう)的にはよしなようだ。
「さてさて…」
サトウキビの本数を確認する。5本。
「5本かぁ〜…無理だわ」
一応サトウキビを横に3本並べることで紙が3枚できる。5本あるので3本使えば紙が3枚できる。
しかし優恵楼(ゆけろう)はその5本を育てることを選んだ。
拠点を出てすぐの川沿いに5本のサトウキビを植える。
そして育てること数日。朝起きて川に入るときに成長具合を確認し
数日の間にディナーマイニングをして鉱石を集めたり
辺りを少しだけ探索したり、洞窟を発見して、少し入ってみようかなぁ〜と思ったけど、入り口でゾンビが
「ウオォ〜」
と泣いて(鳴いて)いたので逃げ帰ったりした。
数日経った後、いつも通り川に入り、体と頭を洗い、服を着替え、お主とお奥にご飯をあげた後
「そろそろいいかな」
サトウキビは成長すると縦3メートルまで伸びる。なので収穫のときは上2メートル分を折る。
しかし実際目の前で成長し切ったサトウキビを見ると
「た…高いな」
優恵楼(ゆけろう)が身長が170cmほど(高校での健康診断での身長)。
3メートルといったら優恵楼(ゆけろう)の…2倍はないがそれくらいである。
どちらにしろ見上げる。ザザッっという気持ち良い音を響かせサトウキビを穫る。
草と甘さが混じったような香りがする。早速クラフトテーブルに向かい、紙を作る。
「テテトテーン!」
緑の帽子に服を着た勇者が思い浮かんでしまうような
著作権に引っかからないか心配な効果音でした。お次に製図台というものを作る。
3×3のマス目の縦6マスを使う。まずは2×2のマスに木材ブロックを置く。
木材ブロックの種類はなんでもオーケー。
そしてその2×2に置いた木材ブロックの上の横2マスに紙を1枚ずつ置く。
k k □
■■□
■■□(※「k」が紙。■が木材ブロックです)
こんな感じ。ちなみに
□ k k
□■■
□■■
こうでもオーケーです。
「テテト」
著作権が怖いので割愛します。とりあえず製図台が完成しました。
「さてと。初めての地図」
ワクワクしながら製図台の側面に横長に空いた穴に紙を入れる。
すると製図台の上面のガラス張りの部分に作成予定の地図が出る。
その上には「まっさらな地図」という文字が出ている。
製図台の角の地球儀を右に回すと先程紙を入れた横長の穴から
ザザガガッというなにかを刷るような音をたてながら地図が出てくる。くるんと丸まっていた。
「おぉ。これが地図。ゲームのときとはちょっと違うけど、これはこれで海賊感あってなんか良き」
海賊感あってなんか良いという独特の感性の優恵楼(ゆけろう)。
丸まった地図を広げる。すると徐々に薄ぼんやりと地図が浮かび上がってきた。
「おぉ」
薄ぼんやりとしていた地図が段々濃くなって、はっきりと自分のいる周辺の地図が浮かび上がった。
しかし地図にはレベルというか段階があり
最初のレベルだと、本当に今自分のいる周辺、128メートル×128メートルの範囲内。
優恵楼(ゆけろう)が探索した範囲内である。たぶん。
なのでもう一度製図台に地図を差し込んで紙を追加で入れた。
すると製図台のガラス張りの部分に拡大された地図が映し出され
その上には「地図#1 2/4レベル」と出ていた。
「正直こんくらいでいい」
レベル2はレベル1の倍、256×256である。製図台の角の地球儀を右に回す。地図が出てくる。
「あ、そうだ」
鉄のインゴットとブラットストーンを手にまたクラフトテーブルに向かう。
ブラットストーンを中心にその上下左右に鉄のインゴットを置く。
□ I □
I ■ I
□ I □(「I」が鉄のインゴット、■がブラットストーンです)
「テ」
割愛します。できたのがコンパス。針が中でゆらゆらしている。無駄に自分が回ったりした。
コンパスを持って製図台へ。もう一度地図を差し込む。丸まっているから入れづらい。
そして製図台上面にコンパスを入れ込む部分があるのでそこにコンパスをはめ込む。カチッ。
「ピッタリ」
製図台の角の地球儀を右に回す。コンパスが内部に収納され、地図が出てくる。
丸まった地図を広げる。そこには自分がいるポイントが映し出されていた。
丸で自分が向いている方向が尖っている。
「よし。これでトウヒの森も怖くない」
夜でなければ。地図を手にトウヒの森へと繰り出す。
来た道を忘れないように置いた丸石ブロックがあり、懐かしくなる。
「もう何日経ったかね」
トウヒの森の中の変わらぬ景色を眺めながら考える。
「もう割と慣れたな」
ただまだ食料は安定しない。小麦畑も徐々に広げて、小麦は段々と安定して収穫できるようになった。
フルーツも収穫でき、フルーツ自体を食べられ、そして加工してジュースも飲める。森の洋館の入り口に来て
「たしかこん中にいろいろあるよなぁ〜…」
少し中を覗いてみる。陽の光が差し込み明るいが
陽があたっていないところは松明の火の光がぼんやりと照らすだけで、薄暗く不気味だった。
「フゥ〜ン」
どこからともなく高くも、どこか低い声が聞こえる。
「うっ…」
怖いとは口にしなかったが怖かった。
「失礼しましたぁ〜…。訪問販売は今日で引退します」
謎のボケをかまして森の洋館から離れる。とりあえず夕暮れギリギリまで川の拠点側を探索した。
「GPS機能のお陰で探索楽になったなぁ〜」
歩いた地形が自動で記され、自分のいる位置も出ている。
もはやスマホ、スマートフォンである。探索が楽になり、ルンルンで帰ると
夕陽のオレンジに照れされ夕陽のオレンジを反射している
怖い思いをし、頑張って建てた塔が目に入った。
夕陽に照らされていない部分の陰が、より濃い陰になっている気がして
哀愁すらも感じさせる出立ちだった。
「…っ」
走り出す優恵楼(ゆけろう)。塔に抱きつく。頬に丸石の日中陽に照らされて温かくなった
でもその温かさの中にもある表面の微かに冷たさが伝わる。
「ごめん!オレすっかり地図に魅力されちゃって!
あんなに怖い思いをして建てて、ずっと頼りにして、見たら安心してたのに。ほんとごめん」
言葉を発することも動くこともしない、相変わらず夕陽に照れされている塔だったが
どこか安心し、嬉しそうに感じた。ペチペチと塔を触り
「コケッ!」
「コケー」
お主とお奥にご飯をあげ、優恵楼(ゆけろう)もパンを食べ
フルーツを食べ、ジュースを飲んで、ベッドに入り、1日を終えた。