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💙side



信じられないことが次々と起こっている。

阿部と会えなくなって、もう2ヶ月になろうとしている。最後に会った時、なんで俺は阿部を置いて家に帰ってしまったんだろう。 何度もそのことを悔やんだ。


あの阿部が、普通の状態で、俺に『別れよう』なんて言うはずはないんだ。


あいつは知識ばっかりの頭でっかちで、勉強はできるかもしれないけど、俺のことになると馬鹿みたいに愛してくれて、好きしか言わなくて、理屈抜きの本能だけで俺を求め続けた。

最初は戸惑ったし、本気を疑ったこともあったけど、今では阿部なしの生活なんて考えられないほどに、阿部は俺にとってなくてはならない存在になっていた。隣りに阿部がいないことが、こんなにしんどいなんて、愛されることがこんなに当たり前になっていたなんて、俺はまるで知らなかった。


阿部の体温が、阿部の匂いが、阿部の声が、阿部の目が、阿部の全部が、恋しい。


ベッドで抱かれている時も、しつこいって逃げてたこともあるけど、何度も何度も俺を求める阿部の、俺への接し方はいつも全力だった。


阿部に会いたい。

阿部の声で、『翔太』って呼んでほしい。




夢を見た。

いつか見た夢の続きだ。


白いタキシードを着た阿部が、揃いの純白のドレスを着た俺を迎えに来る。馬車に乗って。

あの時はドレスなんか着たくねーわと言って飛び起きたけど、今日は違う。

差し出された阿部の手を、俺は躊躇なく取った。



💚「翔太、俺と、一生一緒にいてくれますか?」


💙「うん」


💚「翔太、神様に、うん、はないでしょ」


💙「そっか。……はい」



よくできました、と阿部は俺の頭をベール越しに優しく撫でた。そして阿部はそれをゆっくりとめくった。

阿部の顔が、初めて直接見えた。

阿部は微笑んでいた。

大好きな阿部の顔。でも、今日は少し緊張しているようにも見える。



ああ、結婚式だったんだ。



と、今さら気づく。神父はいない。俺たち2人だけ。それでも嬉しかった。

蕩けるような幸福感に浸りながら、俺は阿部の目を見つめた。



💚「キスしていい?」


💙「うん、して……」



いつもの角度に顔を上げる。


阿部の温かで優しい手の感触が頬に直接伝わる。誰もいないかと思ったが、いつのまにかメンバーが笑顔で俺たちを取り囲んでいる。離れたところには仲の良いスタッフの顔も見える。家族もいた。


俺たちは、ゆっくりと唇を重ねた。



💚「ずっと一緒にいよう?」


💙「当たり前だ」



俺の目からは涙が溢れていた。

嬉し泣きだ。それにつられて、阿部の唇も震えだした。

阿部に抱きしめられて、それで、みんなに祝福されて。空から、色とりどりの花びらが舞い降りて来た。現実感がない、夢みたいに美しい光景だった。





💚side



💚「翔太」


俺は、事務所で唯一連絡を取り合っていた担当マネージャーから電話をもらって、翔太の病室に駆けつけた。

翔太はベッドで眠っていた。

とりあえず何も外傷がなくて、ほっとした。

点滴の中に、鎮静剤と睡眠導入剤が入っているらしく、翔太は深い眠りの底にいた。


とにかく目立たないように病院には事情を説明して裏口から入って来たものの、ここへ来るまでに誰に気づかれたかわからないため、長居するのは憚られる。俺は翔太の無事だけを確認するためにここへ来た。



💚「痩せたね」



そうっと頬を撫でる。布団の上で組まれている手の甲にキスをした。それだけで、涙が溢れて来た。


離れている間も、翔太のことを忘れた日なんて一日もなかった。

グループLINEを見なくてもマネージャーからメンバーの様子は逐一聞いていたし、やっている仕事も把握していた。

ただ、翔太の話だけは意識して避けていた。マネージャーも俺の感情を逆撫でしないように積極的には翔太については触れなかった。

俺は家で、狂ったように勉強した。 携帯も、こちらから連絡する時以外は開かなかった。仲間たちから時々連絡が来ているようだったが、一切中身を見なかったし、返さなかった。


理由はただ一つ。

翔太を忘れるためだ。


小森が俺を刑事告訴したと聞いて日を置かずにすぐ警察へ呼ばれた。

逃亡の心配がなく、俺も反省していることから、弁護士の先生には和解で済むのじゃないかと言われている。小森には既に治療費と慰謝料は支払ったが、相手が金目的なら追加で示談金を持ち掛ければ告訴を取り下げてもらい、終わる。ただし、これは相手の胸先三寸の話なので本当のところはどうなるかはわからない。

仮にも俺が犯罪者になってしまったら、もう翔太に関わることは出来ないだろう。ニュースにもなる。会社も辞めさせられるかもしれなかった。



💚「翔太?」



翔太の手を触っていたら、急に手を握られた。

起きたのだろうか?


しかし、翔太の目は開かない。寝息も乱れていない。規則正しい呼吸音の中に、途切れ途切れではあるが、翔太の呟く声が耳に届いた。



💙「キス、して…?」


💚「翔太」



迷ったが、そっと口付けした。


翔太は眠っているはずなのに、涙を流した。つられて、俺もさらに泣いた。


もう無理、もう十分だ。これ以上ここにいたら、帰れなくなる……。


俺は布団の上から翔太を優しく抱きしめると、耳元で言った。



💚「今までありがとう。大好きだよ」



翔太がほんの少し、笑った気がした。

ずっと一緒にいる方法

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コメント

10

ユーザー

あ〜しんどいわ〜😭

ユーザー

どっちの気持ちもわかるから切ない😢 涙の意味も、しょぴが夢で聞いてるのと阿部ちゃんが実際かけた言葉も正反対でますます切ない😢😢😢

ユーザー
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