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君に届くように

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君に届くように

5 - 頼らない脆さ

♥

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2025年02月26日

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大森視点

やはり後輩である星崎から逃げられたために、

確実に捕まえられそうな楽屋で話をしたいと思い、

直接訪ねることにした。

まだ化粧が途中の星崎から入室を促されて、

いざ楽屋に入るとびっくりした。

どう見ても衣装は私服、

化粧も大量のコスメを使いこなして自力、

スタイリストやメイクさんがついていないだけではなく、

星崎のそばには誰もいないため、

マネージャーすら見当たらなかった。

あの噂はどうやらら本当らしい。

それを考えると仕事を取るために、

地道な営業周りもしているのだろうか?

こんな状態でよくデビューできたものだ。

とても一人の人間がこなせる仕事量ではない。

「あれ、

本人だけ?」

藤澤が一人でこなして、

体でも壊さないのかと、

心配そうに星崎を見つめる。

一人で処理できないほどの仕事量を抱えているのだとしたら、

確かにこのまま放ってはおけない。

何か力になりたいものだ。

「まさか全部自分でやってるとか?」

若井も星崎の体を心配して、

やはり驚きを隠せないようだった。

そんなやり取りが耳に入っていないのか、

星崎が目を閉じたまま、

まるでキスをねだるように少し上を向いて、

ファンデーションを塗り、

慣れた手つきでアイラインを引き、

テキパキとアイシャドー、

チークまで完璧に仕上げた。

悪くないどころか化粧をしなくても綺麗な顔をしているが、

化粧をするとより目を惹く顔立ちだなと感心させられるほどだ。

「うん、

いいんじゃない?」

鏡に映る自分をみて星崎が満足気に微笑みながら、

幾通りかのポージングをしている様子を見て、

仕事に対するストイックさやモチベーションの高さを窺い知ることになった。

表情や仕草だけではなく、

オーラと言えばいいのか、

今日も完璧にこなしてやるという気合が空気感から滲み出ていた。

目の前の鏡に触れると急に怖いくらいの真顔になり、

星崎が意味深なことを呟いた。

「誰も信じない、

誰も受け入れない、

信じられるのは自分だけ」

自己暗示なのだろうか。

まるで呪文のように唱えていた。

少し異様さすら感じるその行動で、

呆気に取られていると、

ふいに星崎が振り返った。

しかし俺たちと目が合うと一瞬で、

顔ごと目を逸らされた。

俺はその理由に引っ掛かりを覚え始めた。

「先⋯輩?」

俯いてはいたものの明らかに、

ヤラかした後みたいなバツの悪い顔をしていた。

多分どこから聞かれていたのかが分からなくて、

挙動不審になっているのだろう。

ただ気になるのは、

さきほどよりも表情が硬く顔色が悪いように感じた点だ。

もしかして体調でも崩しているのか?

原因は業務の多さからきているなら、

誰かが止めなくては、

星崎が倒れるまで仕事をしそうで、

過去の自分とダブって見えて、

強烈な焦燥感を感じた。

「えっと⋯⋯何か?」

体調不良を誤魔化すためか平静を装いながら、

星崎が聞き返してきた。

本当は無理して仕事しているんじゃないの?

俺らとはうまくやっていく気がないの?

どうして自分の体をぞんざいに扱っているの?

音楽をちゃんと好きでやってるの?

はっきりさせたいことはいっぱいあるのに、

視線すら合わせようとしない星崎にだんだん苛立ってきた。

すると怯えきった目をした星崎と視線が合う。

睨んだつもりはないが、

俺から明らかに不満が滲み出ていたのを感じ取ったのか、

ビクッと肩が跳ねた。

全員が無言でいるため、

楽屋の空気は重々しいものになっていた。

コンコンッ

「TASUKUさん!

スタンバイ⋯⋯あれ、

お取り込み中でしたか?」

にこやかで感じのいい笑顔のままスタッフは入ってきたが、

三人というよりかは、

僕たちを見ると困惑気味な表情に変わった。

「あ、

準備できてますので、

すぐ行きます!」

明らかにホッとしたような表情をする星崎に、

そんなに嫌なのかと俺はショックを受けた。















雫騎の雑談コーナー

はい!

という感じでですね、

やっと5話まで進みました。

有り難いですね。

♡がポチポチされていると、

やっぱり書く側からしたら励みになります。

いつも本当に読者様には感謝ですな。

ではでは〜本編に行きましょう。

自分のことは全て自分でする。

まあよくいえばプロ意識の塊ですが、

悪くいえばぶっちゃけ独りよがりですよね。

そんな中でも一人で戦っている。

強いけど、

脆さもある。

そんな何ともいえない危うげな感じをどうにか、

表現したくて書いてみました。

これで果たして伝わっているのかは疑問ですが、

何かを感じ取ってもらえればいいなと思います。

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