目の前に出された用紙は各課、部から総務に集まる備品の社内用発注書。
本来ならば小野原のような中堅社員ではなく、大体1番若い社員が持ってくるのだけれど。
(それだけバタバタしてるのかな、繁忙期だし)
ひとり納得し、真衣香が小野原の手にある発注書を受け取ろうと手を伸ばすと。
「ごめん、朝、見たんだけど」
「え? 何をですか」と真衣香は短く聞き返す。
すると思ってたよりも近く……目の前に小野原の顔があった。
「坪井くんと、廊下で、その。 話してるとこ見ちゃったんだけど」
「え……!」
(あのやり取りを、見てた!?)
「ふたりって、つきあってるの?」
(そ、そりゃ、そう思われる)
昼下がり。
人が多い人事とは少し席が離れているし。
課長も、もうひとりの総務のメンバーである八木も席を外しているのか見当たらない。
会話を聞かれてしまう心配はないのだけれど、まさかそんな流れになるだなんて予想もしていなかった真衣香は大きく動揺した。
「えっと、それは」
口ごもる真衣香を小野原はジッと見つめる。
どう返そうかと思い悩む真衣香にも理由はあった。
(……どうしよう、言っちゃっていいものなの?)
坪井にとっては共に働く、そして何より毎日顔を合わせる先輩なのだ。
「立花さん?」
「坪井くんとは……」
「はいはーい、何? 俺の話?」
「え!?」と、小野原と同時に驚きの声をあげた真衣香は視線の先をまじまじと見つめ、小野原は振り返り、固まった。
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