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晴れた空からは、温かな日差しが降り注ぐ。

水田で作業をしていた手を止め、高地は腰を伸ばした。

「ふう…。大方進んだな」

そのとき、目線の先に道を歩いてくる人物を捉えた。

「おーい優吾ー!」

ちょんまげ姿の男は名を呼びながら駆け寄ってくる。

「慎太郎か…?」

近くまで来ると、高地の表情がぱっと明るくなった。

「おう、慎太郎ではないか! 久方ぶりだな」

ここは相模の農村。慎太郎は、同郷で幼馴染である高地の家に来たのだった。

「如何した? 用でもなければ、かような所には戻ってこんだろう」

「いや、それがな、母上から父上が危篤だという文をいただいたんだ。しかし先刻着いたら、容体は落ち着いていたんでおまえに会いに行こうと思って。土産は何もないが」

「そうだったのか。どうだ、元気にしていたか」

勿論もちろんさ。優吾こそ、気張っているか?」

ああ、とうなずく。「立ち話もなんだ、上がっていくと良い」

泥で汚れた手足を洗い、田んぼの隣の家に招き入れる。刀と持っていた麻袋を下ろした慎太郎は、室内を見回す。

「いやあ、何も変わっておらぬな。懐かしい」

ふっ、と優吾が笑う。

「こちとら、なーんにも変わっちゃいねーさ。今は田植えの時期だから忙しいが。それはそうと、新選組の仕事はどうだい? どんな格好いいことをしとるのやら」

「格好なんて良くはねえ。金目の仕事は、近藤さんや土方さん、沖田さん辺りに回っとるから」

いつの間にか、高地につられて慎太郎もくだけた口調が戻ってくる。

「それでな、今日は昔話だけしに来たわけじゃねえんだ。優吾。おまえ、新選組に入らないか」

唐突な言葉に、高地は目を瞬かせた。「…はっ?」

「驚くのも無理はあらぬ。だが、丁度募集をしているんだ。優吾は昔から、俺と共に武術に励んでいただろう? 今からでも遅くはない。どうだ、来てみないか?」

「…そりゃあ、行きたいさ。今でも憧れておる。だがな、俺は米を育てなきゃいけない。手放す訳にはいかねえ」

言って、着物の袖をまくった。

「しかし今が絶好の機会だよ。逃せばもう次はないかもしれん」

うーん、と高地は唸る。

「江戸や京にも、憧れとる奴は多くいるだろう。特に池田屋の事件で名も上がったからな。俺なんかが入れるか…」

「俺の推薦だ。挑んでみる価値はあるだろう?」

暫しの沈黙ののち、頷いた。

「一度、京に来てみるとよい」

慎太郎も満足そうに首を振り、立ち上がる。「では」と辞去しようとしたとき、

「…俺も共に京へ行く」

高地の声に、慎太郎は振り返った。

「これから戻るのだろう? やはり行きたい。俺も連れて行ってくれ」

途端に嬉しそうな顔になり、肩を二度叩いた。

「参ろう」


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