テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
どれくらいそうしていただろうか。不意に
「大丈夫か?」
そう声を掛けられた。顔を上げるとほとんど白に近い少し長い銀髪を後ろで纏め、サイドには緑が混じった少年が心配そうに風夜を見ていた。
「……え……あ、うん。大丈夫だよ“銀さん”」
すると少年は目を丸くした。
「俺、自己紹介したっけ?」
その言葉で、風夜も自分が先程目の前の白髪の少年にごく自然に『銀さん』と呼んだ事に気付いた。
「……えっとぉ……そのぉ……」
風夜は必死に脳を回転させる。
「す……すまない先生に聞いたんだ!君達について!」
捻り出した答えはちょっとばかり無理があった。聞いたとてあんなサラッと出てくるはずがない。しかし、とても純粋なその少年____銀さんは
「そうだったんだな!」
と微塵も疑わずにその嘘を信じた。
(あー怖っ……ブラックの前でも同じ失態を犯したし……気を付けねぇと……でもなんで僕は分かったんだ?やっぱ僕の“記憶”とやらが戻りつつあるのか?)
「や、やっぱ大丈夫じゃないのか?」
銀さんが心配そうに顔を覗き込んで来たのでまたびっくりし、
「あ、いやいや。大丈夫だよ。ちょっと考え事してただけ。気にしないで」
と慌てて答え、その場を走り去った。
「どうも大丈夫には見えねぇけどな」
銀さんはそうポツリと呟き、グラウンドへ向かった。
「くっそ……モヤモヤする……」
風夜は空き教室に逃げ込み頭を抱える。
(知らないはずなのに“知ってる”……知ってるはずなのに“知らない”……)
「“すまない先生”」
水色のスパークが弾ける。
「“ブラック”」
黒色のスパークが
「“赤ちゃん”」
緑色のスパークが
「“マネー”」
橙色の
「“銀さん”」
白銀色の
「“バナナ”」
黄色の
「“レッド”」
赤色の
「“ブルー”」
青色の
色とりどりのスパークが目の前で弾ける。それは花火のように綺麗でそして懐かしくて。彼らの名前を呼ぶその音も喉の震えさえも、全てが懐かしくて。
『僕は……“風夜”……
“すまないスクール3年B組の生徒”で
“最後の編入生”……』
風夜の目から再び涙が溢れる。
(……なんでこんな大切な事を……忘れてたんだろう……)
涙はまた一つ一つが文字となりどこかへと消えてゆく。数秒後には……
「なんで……僕は泣いてるの……?」
風夜は再び首を傾げていた。
パァァァ……
ペラッ……