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20 ◇最後の一線は越えていない
さて――
既婚者の正義と独身とはいえ、結婚はしたいであろうまほりが会社で、
出先で、家で、イチャイチャ学生のように毎日のように会話をし、メールをし、夜の街にも
繰り出していながらずーっとキスやペッティング止まりで付き合いが続いたのは何故なのか?
最後の一線を越えられなかったのは?
実は重に正義のほうに原因があった。
満島まほりと親しい間柄になる半年ほど前のこと。
業務改善、設備の導入検討などにおけるプレゼンで、他の部署の課員をダントツに引き離し、
優れていると表彰されたことがあった。
その時に、上司より『成功祝いに今夜はいいところへ連れて行ってやる』と言われ
夜の街に繰り出したことがあった。
そんな誘いを正義が受けたのは入社以来、この時が初めてだった。
正義の勤める会社では、社風的には有り得ないことだったのだが、たまたま2年前に
異動で来た前島(部長)はその辺に緩い人物だった。
この時、正義は怯みに怯んだ。
「部長、私には妻がいるのでちょっと……まずぃ――」
と断りをいれたのだが、「何言ってるんだ。俺も既婚者だ、気にすんな」
と相手は意に介せず、夜の店に強引に連れ込まれた。
そして、『さぁ、お飲みになって』とホステスから酒を注がれ、気がついた時には
女性とホテルの部屋にいた。
途中で気がつき怯んだものの、こなれた綺麗なお姉さんに下着姿で迫られて
正義はついその気になってしまい、致そうとしたのだが、性急過ぎたのが
いけなかっのか、緊張していたのがいけなかったのか、はたまた飲み過ぎで
だめだったのか? 神のみぞ知る……状態で、とにかくできなかったのである。
またこの時のホステスにはやさしさが足りず、正義はきつい言葉で詰られてしまい……。
そう!
この時の経験があるため、正義は本格的な不倫にのめり込むことに躊躇いがあったのである。
まほりに好かれる男、まほりに憧れられる自分をずっと演出して、恋人気分でいるためには、
過去のような醜態はとてもじゃないが晒せない。
そう、自分の身体に自信がないために、いわゆる身体の関係にまでは発展しなかったのである。