テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
231
819
2,081
あのさ
俺だって、別になんも考えてないわけじゃねーのよ。
蓮のことが好きだからさ。
『俺たち風呂友だよなー!』って言ってても、やっぱどうしたって意識しちゃうし。
劇場とかライブ会場で入る大浴場と、家の風呂とじゃ広さも違うし距離も近くなるし。
でもだからって、今まで風呂友として接してたのに急に恥ずかしくなって『蓮、先に入って来ていーよ』とかさ……変に思われるかなぁって思ってさ。
ついいつも通り、『一緒に入ろ』って誘っちゃった。
蓮もちょっと気まずさみたいなのがあったのか、戸惑っていたみたいだけど……頷いてくれた。
でも……
でもね。
やっぱりその……ドキドキはしちゃうわけで。
朝と夜、2回は湯船に浸かりたい派の俺。
物件選びにおいてこだわったのが『尊敬する宮田師匠の家の近く』ってのともうひとつ、『楽々足が伸ばせるくらい大きな湯船がある広い浴室』だ。
おかげで、蓮と2人で入ってもそれなりに余裕はあるんだけど……流石にね。
蓮みたいな長身族と一緒に入れば、やっぱちょっとは窮屈になるわけで。
そんな浴槽の中、向かい合って……伸ばした蓮の足の間に三角座りする俺。
家主なのに、めちゃくちゃ遠慮してます、ハイ。
だって
だってさ……
ちょっとでも足伸ばしたら、蓮の股ぐらに足の裏がジャストフィットしちゃいそうなんだもん!!
てかさ?
ねえ……蓮のって、こんな……デカかったっけ……?
やっ、だって!
こんなマジマジ見たことなかったもん!
そりゃね、お互いの裸なんか見慣れたもんよ。
でも風呂友として一緒にお風呂入ってる時はさ、ジロジロとムスコさんを見るのは失礼じゃん?
蓮だって絶対、俺のをマジマジ見たことないはずだもん。
だからさ
ちょっとびっくりしたし、なんていうか……
いつか、蓮とそーゆーコトする人が現れるんだろうな
なんて。
ほんの少しだけ、嫉妬じみたことを考えてしまった。
(嫉妬なんてする資格、俺にはないのにね)
蓮のことは大好きだけど
蓮は俺のものでもなんでもない。
切ないけど、それが現実。
(そんなん、分かってたことじゃん。なのに、ウジウジウジウジ……俺、女々しい!)
なんか無性に恥ずかしくなってきて、ザブン!とお湯に顔をつける。
そしたら蓮の、慌てたみたいな声が聞こえてきた。
「ちょっ……さ、佐久間くん!何してんの!」
「んぶ…………っ、ぷぁ!」
ぐい、と肩を押されて、顔を上げる。
心配そうな表情の蓮が手のひらで俺の顔を拭って、前髪をグッと掻き上げられた。
「もう……いきなりどうしたの」
「ぅ……いや、あの……ちょっと頭冷やそうかと……」
「お湯に顔つけたって頭は冷えないでしょ。むしろ茹でダコみたいになってるよ」
そう言いながら、蓮は俺の目元を親指でさする。
多分茹でダコになってるのは、お湯のせいだけじゃないと思うんだけど。
「んむ…………そ、そっかぁ……」
「そうだよ。あんまりびっくりさせないで。あと、自分が怪我人だってことも忘れないでね?」
「もう平気なのに」
「頭も腰もまだ痛むでしょ?怪我人だよ」
「ん……ごめん」
素直に謝ると、蓮が仕方なさそうに眉を下げて笑った。
ほんと、ごめんね。
変な妄想とかして、見知らぬ誰かに嫉妬して。
バカな先輩でごめん。
言えないけどさ。
「大丈夫?顔、真っ赤だよ」
「にゃは……ちょっと逆上せたかなぁ」
「そろそろ出ようか。あんまり温まり過ぎるの、腰には良くないだろうし」
「ん。薬塗んなきゃなぁ」
「そっか……肌が弱いから湿布は無理なんだっけ」
「そーなの!ずっと貼ってるとかぶれちゃってさぁ〜」
「じゃ、早く出て薬塗ろ。俺がやってあげるから」
「至れり尽くせり……」
「大したことしてないけど」
大したことしてないわけない。
ご飯作ってくれるのも、一緒にお風呂入ってくれるのも、薬塗ってくれるのも……期間限定でも、同居してくれることだって。
言葉や行動の端々から蓮の優しさを感じて、大事にしてくれてるんだなって思えて。
(ホント、勘違いしそう)
期待するだけ無駄なのにね。
俺はこっそりため息をついて、ザバッと立ち上がった。
---
蓮の方はなるべく見ないように身体を拭いて、髪も拭こうとしたら蓮にタオルをもぎ取られて、丁寧に拭いてもらってドライヤーまでかけてもらった。
ホントに至れり尽くせり。
お返しに、蓮の髪は俺が乾かしたけどね!
だってさ、尽くされっぱなしは性に合わないんだもん。
リビングのソファでドライヤーかけたんだけど、普段は洗面所で済ませちゃうからツナシャチが聞き慣れない音にびっくりしちゃってさ。
キャットタワーの上に昇っちゃったもんだから、モコちゃんがその下で寂しそうに『くぅん……』って鳴いてたのが可愛いやら微笑ましいやら。
すっかり仲良しになったのが、すごく嬉しい。
「なんかもう、ずっと前から家族みたいだなー」
「ほんとに。……っと、佐久間くん、モコたちのことより薬。早く出して」
「はぁーい」
病院で出されたパンパンの薬袋の中から、打ち身用の塗り薬を取り出す。
「ほい、薬!」
「ん。じゃ、うつ伏せに……なれる?痛いならこのまま塗るけど」
「横になるくらいなら平気!」
ぎっくり腰の時と同じで、うつ伏せで寝るのはやめるように言われた。
でもまあ、ちょっと横になるくらいなら大丈夫だろう。
いそいそと横になり、パジャマ代わりのTシャツの裾を捲り上げる。
「じゃ、お願いしまーす」
「任されました。……ちょっと冷たいよー?」
「ん……っ、うひゃ!」
塗り薬をたっぷり掬い取った蓮の指先が、腰に触れる。
その冷たさに、甲高い声を上げてしまった。
「……なんて声出してんの」
「だ、だってぇ……思ってたより冷たくって……ん、ぅひ」
する、と肌の上を、蓮の手のひらが滑る。
ただ薬を塗られてるだけなのに、なんだかやけにドキドキしてしまって……妙な声まで出てしまった。
「ん、ぅ」
「……佐久間くん、その声はマズい」
「ご、ごめ……っんん、ァ」
「ねえ……わざとやってる?」
「ち、違うってぇ!ちょ、っと……くすぐったくて、や、んん」
ダメだ。
声、止まんない。
でもって、蓮の手も止まんなくて。
「っ……は、ぁ」
「……もう……勘弁して」
「ごめ、ん……っ、きもち、わるい、よな?」
「……そんなことないよ。ただ、その……俺もね、男だから。そんな可愛い声出されると、ちょっと……色々、ね」
えっ
もしかして、俺の声で
反応……しちゃった、とか?
おずおずと肩越しに振り返ってみると、蓮が頬を染めて深くため息を吐き出した。
「……佐久間くんの声、心臓に悪い」
「えええっ……ま、マジでごめん!」
「まあ……無意識で出ちゃうんだろうし、仕方ないけどね。……はい、終わり!」
薬を塗り終えた蓮がTシャツを元通りに戻して、腰をポンポンと叩く。
俺はゆっくり起き上がると、蓮と向かい合うように座り直した。
……正座で。
「なんか……すみませんでした」
「いえいえ、こちらこそ……妙な気分になってしまって申し訳なく……」
いえいえ、こちらこそ
いえいえ、俺の方が
お互いに謝罪し合ってんのがだんだん面白くなってきて、同時に吹き出した。
「んふっ、ふっふっふっ……はぁー……おっかしい!」
「クックッ……ほんとにね、俺たち……どうしようもないね」
「な〜?とりあえず、蓮がムラムラしないように気をつけるね!」
「ムラムラって……流石に普段はしないよ」
「そりゃそうだろ!蓮が普段から、俺なんかにムラムラするわけないじゃん!」
この国宝級イケメンが、わざわざ同じグループのメンバーで、先輩で、それも同性の俺に対して欲情する必要なんてこれっぽっちもないわけで。
まあ、自由に恋愛も出来ない立場だし……身近なところで手っ取り早く、みたいなのはあるかもしんないけど。
蓮はそういう不誠実なの、嫌いそうだしな。
───でも
当の蓮は、なんだかちょっと不満そうな顔をしていた。
「蓮?」
「俺なんか、とかさ……自分を卑下するような言い方はやめてよ」
「え……」
「……佐久間くんは、可愛いよ。男同士だろうがなんだろうが、その……普通に勃つし」
「ファッ!?」
そ、そーなの???
たつの?俺で???蓮が?????
きょとん、と目を丸くして
じわじわ顔中が熱くなっていく。
視線を泳がせていると、蓮も頬を赤くして呟いた。
「……現に今だって、その……ね」
「う、うん……」
チラッと蓮のソコに目をやって、光の速さで視線を逸らした。
なんかもう、申し訳ない気持ちでいっぱい。
でも、ちょっと……嬉しかったりもして。
だってさ、好きな人がさ
自分相手にそーゆー気持ちになってくれるんでしょ?
そんなん、嬉しいじゃんね。
たとえそれが、単なる生理現象だったとしてもさ。
でも蓮は申し訳なさそうな顔をして、小さくため息を吐き出した。
「……なんか、ごめん。気持ち悪いこと言って」
「いっ……いやいや!気持ち悪くなんかないよ!俺の方こそ……ホント、色々ごめんな……?」
「ん。……この話は一旦終わりにしよう。なんか変な雰囲気になってきた」
「そっ……そーだな!あ、アイス食べよ、アイス!」
そう言って、ぴょんとソファから飛び降りる……と。
「いっ……たぁ……!」
腰に激痛が走り、その場に蹲る。
「佐久間くん……!」
慌ててソファを降りた蓮が、俺の傍らに膝をついた。
「だ、大丈夫?痛む?」
「だい、じょぶ……へへへ、いつもの感じで降りちゃったよ」
「もう……怪我人だってこと忘れないでって言ったよね?」
「ごめんて。もう平気…………っ、わ!」
ひょいっと軽々俺を抱き上げた蓮に、ソファへ戻される。
「アイスは俺が取ってくるから。ここでおとなしくしてること」
「う……ん、面目ない」
「気にすることないから。それより、何味にする?」
「え、えっとぉ……いちご」
「了解」
優しく俺の頭を撫でて、蓮はキッチンへ向かう。
その背中を見つめながら、ドキドキする胸を押さえつけた。
お姫様抱っこなんて初めてじゃない
頭を撫でられたことだって何度もある
なのになんで、こんなにドキドキするんだろ。
(ヤバい、かも)
好きが溢れ出さないようにって思ってたのに。
なんかめちゃくちゃ、蓮に翻弄されてる。
「むり、しんどい」
小さく呟いて、俺は抱えた膝に顔を埋めた。
*****
一生進展しない両片想い^^
コメント
2件
一生片思いなんてこの2人には 無理です、🖤🩷は両想いだと気がついた瞬間暴走機関車になってメンバーを振り回す宿命の2人ですv(´∀`*v)ピース
いやもう、読んでてこっちが照れるわ…!風呂場のシーンから薬塗りのシーンまで、ずっとドキドキが止まらなかった。蓮くんが「佐久間くんの声、心臓に悪い」って言うところとか、あれ実質ポートレート宣言じゃないですか…(笑) でもそれ以上に、佐久間くんの「好きだけど諦めてる」感が切なくて。あの「一生進展しない両片想い」って最後の一文が、もう全てを物語ってる。お互い好きなのに、お互いに「まさか自分が」って思ってるもどかしさ。この絶妙なバランス、本当に上手いなあ。続きが気になって仕方ないです!