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お前とまた会いたい

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お前とまた会いたい

9 - 第9話 何も分からない

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2025年08月20日

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⚠︎びっくりするほど長い

優しいソ連はいません 結構重い




ソ連「……また、眠れねぇ」

夜の闇に、俺は一人で呟いた。

どれだけ睡眠薬を飲んでも、眠れるのはほんの数時間。夢に出てくるのは、いつもあいつ――ナチスだ。


ソ連「また……お前か」


夢の中のナチスは、昔の姿だ。

まだ幼くて、笑いながら「ソ連、将来はどうしたい?」なんて聞いてくる。俺も笑って答えていた。あの時は、戦争なんて想像もしなかった。

けど、夢は必ず最後に変わる。ナチスの笑顔は憎悪に歪み、あの兵士の刃が俺を刺す。右目を奪われ、血の匂いの中で目を覚ます。


ソ連「……っはぁ、はぁ……」


胸が苦しい。生きているのに、生きている心地がしない。

俺はベッドの上で右目に触れる。そこには何もない。

けれど、確かに「視線」を感じる気がする。まるで、奪われた右目を通してナチスが俺を見ているようで。


ソ連「……やめてくれ、見るな」


どこにもいない相手に、そう吐き捨てる。

でも、見られている感覚は消えなかった。


ガチャ、と扉が開いた。


ロシア「……親父、また寝言がすごかったぞ」

ベラルーシ「お兄様、顔色が真っ青ですわ」


ソ連「……大丈夫だ。ただ、眠れないだけだ」

ロシア「もう何日もだろ。それは大丈夫じゃねぇ」

ベラルーシ「お医者様に言った方がいいんじゃ……」

ソ連「……言うな」


俺は二人を睨みつけるように言った。

自分でも分かってる。眠れないこと、味が分からなくなってること、心が壊れてきてること。

でも、誰にも知られたくなかった。弱い自分を見せたくなかった。


静寂が戻る。俺は天井を見つめたまま、息を吐く。


ソ連「……アメリカ」


あいつの言葉が、耳に残って離れない。


『俺じゃ、ダメなのかよ』


ダメに決まってる。

俺はナチスをまだ好きだ。殺されかけても、目を奪われても、それでも気持ちは消えなかった。

そんな俺が、アメリカなんかに振り向けるわけがない。


けど――あいつの必死な表情を思い出すと、胸がズキズキと痛む。

それは憎しみなのか、罪悪感なのか、それとも別の何かなのか。


ソ連「……分かんねぇよ、俺……」


無意識に、右目の包帯に手を伸ばしていた。

爪が食い込む。ガリッ、ガリッ――。


ベラルーシ「お父様!? 血が……!」

ロシア「やめろ!!」


気づいたときには、包帯の下から赤が滲んでいた。

俺は、自分で空っぽの右目を抉ろうとしていたらしい。


ソ連「……あれ、なんで……?」

ロシア「親父!正気に戻れ!」

ベラルーシ「お父様……泣いて……」


頬を伝う液体に触れる。温かい。

あぁ、そうか。俺、泣いてるのか。


ソ連「……もう分からねぇんだよ。どうしたらいいのか……」


ロシアもベラルーシも、何も言えなかった。

俺が静かに崩れていくのを、ただ見守るしかなかったのだろう。


――次の日。


アメリカ「ソ連」

ソ連「……なんだ」

アメリカ「……昨日のこと、聞いた。お前、自分を傷つけたって」


ソ連「誰に聞いた」

アメリカ「ロシア。……なぁ、もうやめてくれよ」


アメリカの声は震えていた。怒鳴るでもなく、強引に迫るでもなく、ただ必死に俺にすがっていた。

俺は返す言葉を探したが、何も出てこなかった。


ソ連「……お前に何が分かる」

アメリカ「分かんねぇよ。でも……俺はお前に死んでほしくない」

ソ連「……」

アメリカ「ナチスが好きなのは知ってる。俺じゃダメなのも分かってる。けど、それでも……お前が壊れてくのを見てるのが辛いんだ」


ソ連「……なんでだよ」

アメリカ「……好きだからだろ」


胸が締め付けられた。

泣きそうになるのを堪えて、俺は視線を逸らした。


ソ連「……俺はもう、壊れてんだよ」

アメリカ「そんなこと言うな」

ソ連「ナチスを忘れられねぇ。目を奪われても、殺されかけても……それでも、まだ好きなんだよ。そんな俺が……誰を愛せるんだよ」


アメリカは何も言えなかった。

ただ、俺の震える手を強く握りしめた。


ソ連「……放してくれ」

アメリカ「嫌だ」

ソ連「放せって言ってんだ!!」


怒鳴ると、アメリカは一瞬びくりとしたが、それでも手を離さなかった。

その温もりが、逆に俺を追い詰めていく。


ソ連「……気持ち悪い」


自分でも、何を言っているのか分からなかった。

アメリカは苦しそうに目を伏せ、それでも俺の手を離さなかった。


その夜、俺はまた眠れなかった。

右目の疼きと、心の空洞だけが残っていた。






ロシアから聞かされたとき、最初は耳を疑った。

「親父が自分で眼を抉ろうとしてた」――そんな話、信じたくなかった。


アメリカ「……嘘だろ」

ロシア「嘘ならよかったんだけどな」


ロシアの顔は真剣で、ベラルーシも不安そうに下を向いていた。

心臓が嫌な音を立てる。

俺はすぐにソ連の部屋へ向かった。


ドアの前に立ったとき、いつもより重く感じた。

ノックする指が震えていた。


アメリカ「ソ連」

ソ連「……なんだ」


低く、かすれた声。

開いた扉の向こうに立つ彼は、かつての威圧的な姿とは別人のように見えた。顔色は悪く、包帯からは新しい血が滲んでいた。


胸が締めつけられる。

俺は何も言えず、ただ彼を見つめることしかできなかった。


アメリカ「……昨日のこと、聞いた。お前、自分を傷つけたって」

ソ連「誰に聞いた」

アメリカ「ロシア。……なぁ、もうやめてくれよ」


声が震えていた。情けない。

俺らしい強がりなんて出てこない。ただ必死だった。


ソ連「……お前に何が分かる」

アメリカ「分かんねぇよ。でも……俺はお前に死んでほしくない」


それが本心だった。

分からなくても、理解できなくても、俺はただソ連に生きていてほしかった。


ソ連は黙って俺を見下ろした。

その目は空っぽで、でもどこか泣き出しそうにも見えた。


ソ連「……ナチスが好きなのは知ってる。俺じゃダメなのも分かってる。けど、それでも……お前が壊れてくのを見てるのが辛いんだ」


そう言う俺に、ソ連は小さく笑った。

笑ったのに、目には涙が溜まっていた。


ソ連「……なんでだよ」

アメリカ「……好きだからだろ」


自分の声が震えるのが分かった。

言いたくなかった。言えば拒まれるに決まってる。

それでも、もう隠せなかった。


ソ連「……俺はもう、壊れてんだよ」

アメリカ「そんなこと言うな」

ソ連「ナチスを忘れられねぇ。目を奪われても、殺されかけても……それでも、まだ好きなんだよ。そんな俺が……誰を愛せるんだよ」


胸を抉られるような言葉だった。

俺じゃ駄目なんだと突きつけられて、それでも諦めきれない自分が情けなかった。


それでも、俺は彼の手を掴んだ。

震えていても、冷たくても、その手を放すわけにはいかなかった。


ソ連「……放してくれ」

アメリカ「嫌だ」

ソ連「放せって言ってんだ!!」


怒鳴られた。

その声に一瞬怯んだけど、手を離すことはしなかった。

ここで放したら、本当に彼が消えてしまう気がしたから。


ソ連「……気持ち悪い」


その一言は、刃みたいに胸に突き刺さった。

呼吸が止まるほどに痛かった。


でも、それでも――彼の手を握る力を緩めなかった。

どんなに拒まれても、憎まれても、俺は諦めるつもりはなかった。


アメリカ「……勝手に言ってろ。俺は放さねぇ」


そう言ったとき、ソ連は俺を見なかった。

ただ、遠くを見て、泣いていた。


――その夜、俺は眠れなかった。


頭の中で何度も彼の声が響く。


『俺はもう壊れてんだよ』

『ナチスを忘れられねぇ』

『気持ち悪い』


苦しくて、胸が張り裂けそうだった。

けど、それでも手の中に残るあの冷たい感触を、忘れることはできなかった。


アメリカ「……なぁ、ソ連」


俺は天井を見上げながら呟く。


アメリカ「お前がナチスを忘れられなくてもいい。俺のことを気持ち悪いと思ってもいい。……でも、それでも俺は、お前を諦めねぇ」


届かないと分かっていても、そう誓わずにはいられなかった。


ソ連が壊れていくのを止められるのは――俺しかいないと信じたかったから。


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