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最高の旦那様

16 - 第16話 旦那様は守護獣もコンプ済み。後編

2024年01月16日

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「夫です」


「! やっぱり! 私がこの守護獣屋の店主になれたのは、御方様のお蔭なんですよ」


「なんだ、気がついておらなんだか」


「守護獣から、蟷螂人という人種になった代償なんじゃないのかな?」


「二人とも知ってたんだ!」


「だからこそ、名乗りを上げたのじゃ」


「そうそう。御方のお蔭で、私たちは私たちであれるんだからねぇ」


おっと。

夫はここでも何かしでかしているらしい。

そうじゃなければ、マップには載せないだろうけれど。


「もしかして以前、夫と付き合いがおありでしたか?」


「はい! あの方は当時最高峰の守護獣十体と契約を成さっておいででした」


安心のチートです。

ありがとうございます。


「しかも我らに下位の守護獣と契約させて、勉強をさせてもおったなぁ」


「うんうん。力の使い方が分からなかった子たちがすっごく成長したもんね。最終的に当時守護獣として存在していた全てが御方に敬意を払ったからねぇ……二度とはないだろうなぁ」


コンプリートも完璧らしい。

どんなクソゲーと揶揄されても、完全攻略する人だからなぁ……。


「でも御方様の……最愛、であられますよね?」


「はい、そうです。こちらではアリッサと名乗っております」


「おお! 良き御名じゃ」


「アリッサ様! 是非私たちと契約を!」


「二人とも落ち着いてください! 御方様の最愛様ともなれば、他に守護獣として従う者もいるでしょう?」


「ふん。現時点では我らが最強の二体じゃ」


「それこそ御方と同じように、付き従いたいとは思う子もたくさんいるよ。だけど単純に力が足りないんだよね……」


育てゲーは好物だが、同時進行は苦手だ。

一人に集中して、やっとこさトゥルーエンドが迎えられる程度の頭しかない。

好きだから上手ではないのが悲しいところだろう。

ついでに、彼女等を育てるとか無理ゲーだ。

むしろ自分が守り育ててもらう感覚で間違いないはず。

だとしたら、二人の好意を受け入れた方が無難には違いない。


「今は二人との契約でお願いします」


「そうでなくてはな! 妾、虹糸蜘蛛・彩絲はアリッサ様と契約締結を望む」


「私、白蛇・雪華はアリッサ様と契約締結を望む」


「私、時空制御師の最愛・アリッサは、彩絲及び雪華との契約締結を望む」


本に書かれていた契約締結の文言を唱えれば、視界がまばゆい金色の光で覆い尽くされる。

どこからかふわりと花の香りが届いた。


「契約締結は無事に完了しました。アリッサ様には取り扱い冊子を……と言いたいところですが、この二人の場合は無用です。希望があれば、その都度彼女等が告げるでしょう。二人とも……くれぐれも無理は言わないようにね!」


「ふん。妾は無理や無茶など言わぬ」


「過保護系の無理無茶は言うけどね、彩絲の場合」


「何も言わずに無理無茶をしでかす貴様よりは真っ当だろうて」


何も言わない無理無茶は勘弁です。

夫も得意だけどね。

私のためと分かっていても、少しだけ寂しかったりするから。


「二人とも、私のことを考えてくれるのは本当に嬉しくて有り難いけれど、自分たちの体調や精神の安寧もきちんと考えてくださいね?」


「のぅ、透理《とうり》よ。こんなにも我らを慮ってくれる主に対して無茶など言えまい?」


「御方はどこまでも冷静に私たちを扱ったけれど。それが至高と信じて疑わなかったけれど。こんなにやわらかく受け入れられたら黙って行動なんてできないでしょ。心配、されちゃうもんね」


「嬉しそうですねぇ。貴方たちが心配される状況なんてありはしないんですけどね。それでも、さすがは御方様の最愛様。私は蟷螂人の透理。二人についてや守護獣に関する疑問がありましたら、何時でもこちらまでお知らせくださいませ」


トレイの上へ置かれて差し出されたのは小指にちょうど入るくらいの、淡黄緑色の石がはめ込まれた、小さいサイズの指輪。


「通信機になっております。アリッサ様が念じれば私へ声が伝わる仕様です。本来私から連絡する用件はまずないのですが、時折連絡を差し上げてもよろしいでしょうか?」


「ええ、喜んで」


「ふふふ。ありがとうございます」


「主よ。我らはどういう形態で侍ろうか?」


「アクセサリー形態をお薦めするわ。私たち目立つから」


「アクセサリー形態?」


「これじゃ」


「うわー! 綺麗っ!」


二人が一瞬でアクセサリーに変じる。

彩絲が虹色に輝く蜘蛛型のバレッタで、雪華が純白でなめらかなラインの、幅広めな腕輪だった。


『念話は普通にできるぞ』


『緊急時は即時変身を解く感じで大丈夫だと思うよ!』


「二人とも戦闘特化した守護獣ですが、彩絲は索敵、雪華は隠蔽が得意です」


「どちらも有り難い能力です。宜しくお願いしますね」


『こちらこそ、末永く頼む』


『頑張るからね! 腕が鳴るわっ!』


アクセサリーをつけながら頼めば、やる気に満ちた返事があった。

声ではなく思念だったが、違和感もない。

こんなときは、日々の妄想力に感謝したいところだ。


「お代の方ですが……」


『我らが払うぞ!』


『当然よ!』


「最後まで言わせてよ……と、いうわけで代金は二人から徴収します」


「いいの? 主人から、たぶん国が買えるんじゃないかな? ってくらいお金を持たされているけれど」


『こちらで築かれた財全てと思えば、国どころか世界も買えそうじゃなぁ』


『きっと、全額持たせているよねー。本当に最愛なんだなぁ』


呆れ半分、感心半分。

夫は彼女等にも私について存分に語っていたようだ。

照れる。


「忠誠度が低いと、お金をお客様から頂戴する感じですので。忠誠の証と思ってください」


「わかりました。二人ともありがとうね。主人ほどじゃないけど、美味しい手料理をご馳走します」


『肉料理を所望する』


『卵メインの料理がいいかな』


「……私も何時か御一緒してもよろしいでしょうか」


「勿論、喜んで。拠点を決めたら招待しますね」


「ありがとうございます!」


鎌と昆虫腹がぶんぶんと振られた。

頭皮と手首が熱いので二人も興奮しているようだ。

これは早々に拠点を決めたい。


「それでは、また連絡しますね」


「お待ちしております」


出口まで見送ってくれた透理は、私の姿が見えなくなるまで手を振って別れを惜しんでくれた。



クエスト画面を開くとクリア表示がされている。


*守護獣と契約をしましょう。をクリアしました。

新しいクエストが発生しましたので、確認してみてください。


……彩絲と雪華ですか。

他にも女性はいたのですが、現在は誰かの守護獣になっているんでしょうね。

餌づけが利く二人ですので、貴方の手料理でめろめろにさせてあげてください。

……私も貴女の手料理が食べたいところですが、我慢しますね。


私も夫料理が食べたいです。

でも、異世界料理も食べたいです!


拳を握り締めつつ確認すれば、新しいクエストが出ている。

優先順位も一番上だった。


*冒険者登録をしましょう。

彩絲の囁きに従って窓口を選んでください。

説明は受けてはいけません。

余計な情報は渡さないように。

冒険初心者向けキットだけは入手するべし! ですよ。


「あーギルドは信用できない系かぁ」


『主は、愛らしいからのぅ。御しやすく見られて、難癖をつけられかねぬ』


『いざとなったら、私たちが人化して蹴散らすから大丈夫だけどね!』


「うん。おんぶにだっこで申し訳ないけど、よろしく頼むね」


『無論じゃ』


『護るよー』


頼りがいのある二人の出会いと、仲介者の透理、どこまでもフォローを忘れない夫に感謝しながら私は、マップを確認しつつ冒険者ギルドへ足を運んだ。

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