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朝、仕事に出てから家に帰って晩ご飯までの時間なら、そんなに気にせずLINEのやり取りができると、翔馬に送った。
《わりと、時間制限あるんだね。仕方ないよね?フルタイムの仕事と主婦とやってるんだから。俺の方はいつでも構わないよ、送ってくれるのは。返事ができないことはあるけどね》
〈ごめんなさい〉
フルタイムの社員でもないけど、LINE可能な時間はそれくらいにしておいたほうがいいと思った。
《家族、というか夫婦は円満なんだよね?そんなふうに家族の前ではLINEしないってことは》
〈円満?円満だったら、面白いことを探してサイトに登録したりしないです〉
《奥様はなにかご不満でも?》
〈不満、色々ありますよ〉
《そうなんだ。俺でよければ聞くよ》
それから私は、夫との関係や子どものことや仕事先のことをあれこれ愚痴った。そのどれもに翔馬は共感してくれて、慰めてくれてそして私なりに頑張っていると褒めてくれた。
《ミハルは、ちゃんと自分の役割を果たしているし、家族に何か迷惑をかけてるわけでもない。もっと自信持っていいよ、俺が保証する》
___なんか、安心する
私を私として認めてくれる人がいることが、こんなにもうれしいなんて。
〈そんなふうに誰かに言ってもらえるって、うれしいです〉
《会ったことないけど、きっとミハルはいい女なんだと思うよ。言葉遣いも丁寧だしね》
〈会ってしまったら、幻滅されること間違いないから絶対ダメです〉
《どうして?ミハルは俺に会ってみたいと思わない?》
___え?まさか…
どくん。
〈幻滅されて、嫌われたくないのでこのままでいいです、というかこのままがいいです〉
焦って返事をする。
「ただいま!」
陽菜が帰ってきた音がした。
〈またLINEしますね〉
それだけ送ってスマホを閉じた。
まだ、ドキドキしている。直接会いたいと言われたわけじゃない。でも、あのままだったら“私も会いたい”と言ってしまいそうだった。心に澱のように積もっていた不満をどんどん曝け出していったから、気持ちまで持っていかれそうになっていた。
「おかえり、陽菜。オヤツにはシュークリームが買ってあるよ」
「やった!じゃあ、麦茶出しといて」
「はいはい」
現実に会ったりしてはいけない。会ってしまったらそれはもう、不貞になってしまう。そんな気がしていた。
___不貞?
そう考えてしまう私はもう、きっと…
翔馬のことが好きだ。