side深澤
ここだ。
俺への手紙に書いてあった場所。
水平線が光る海。
まだ夜が明けたばかりの海は少し暗くて、でも、太陽が辺りをだんだんと明るくしていく
俺は、ある1点へと、1秒でも惜しいように、歩き出す。
ふっかへ
まずは、ごめん。
ごめんで済む事ではないのは分かってる。
突然、死んだこと。
突然、振ったこと。
1つだけ、言い訳させて。
俺が、ふっかのことを振った理由は、この病気があったから。
病気のせいでふっかに辛い思いをして欲しくなかった。
だから、振った。
好きなのに振るって、相当辛い。
でも、それよりも辛いのが”愛する人の死”だから。
最期に好きになったのが、愛したのがふっかで良かった。
ふっかには、これからも、幸せになって欲しい。
俺より好きな人を見つけて、その人と幸せになれば、俺は満足。
でも、時々、俺のことも思い出して見てほしい。
“岩本照ってやつがいたな”
ほんの少しでいい。
俺のことを、時々思い出して、10年経ったら忘れて。
そしたら、ふっかは幸せになれると思うから
幸せにならなかったら俺がお前をこっちの世界に連れ込むからな。
じゃあ、また会う日まで。
これが、”1枚目”の内容。
“2枚目”は…
俺が永遠の愛を誓った場所 猫岩の砂
とだけ書いてあった。
そして、照が俺に永遠の愛を誓った場所が、この、人気のない海。
猫岩とは、猫の耳のようなとんがりがある岩のこと。
そして、照と永遠の愛を誓ったのもこの猫岩
ここに行けと言っているのだろう。
猫岩に着くと、足元を見る。
すると、ある一点だけ、掘り起こされて、また埋められたような跡があった。
そこを、手が汚れるのも構わず、爪に砂が入るのも構わず、掘り進める。
すると、指先が、ひんやりとしたものに当たる
それを取ってみると、小さな箱だった。
ふっかへ
箱にはそれだけ書かれた紙が貼ってあった。
恐る恐る箱を開けると、真っ白なUSBが入っていた。
すぐに海を出て、タクシーを捕まえる。
そのまま家まで行って家のパソコンにUSBを差す。
画面に浮かび上がったのは、
「照__」
『あ、あ、聞こえてる?』
『てか、それよりも上手く撮れてる?』
『ふっかがこれを見てるってことは、探し出してくれたんだよね』
『え、てかほんとにふっかが見てる?』
『見てるよね。』
『うわ…いざとなったら何話せばいんだろ』
『えっと……』
『まずは、ごめん。』
『手紙にも書いたけど、やっぱり、声に出して伝えたかったから』
『ふっか、今、みんなはどうしてる?』
『康二とか、絶対泣いてるよね笑』
『ふっかは……?』
『ふっかは、泣いてる?』
『本当は、今すぐふっかのところに行って、慰めてあげたいんだけど、無理だよね』
『過去から未来に行くなんて。』
『ふっか、このUSBが埋まってたところ、覚えてる?』
『俺が、ふっかに告白した場所だよ』
『覚えてないか笑』
『結構前のことだもんね笑』
『ま、俺は覚えてるけどね。』
『ふっかと過ごしたたくさんの日。』
『SnowManの岩本照として過ごしたたくさんの日。』
『すごい楽しかった。』
『これも、ふっかが俺の横にいてくれてたから。』
『今まで、俺に好きを届けてくれて、ありがとう。』
『……呼ばれたみたい。』
『ごめん。もう終わりだ。』
『俺は、もう、向こうに行くよ。』
『最後に、これだけ言わせて。』
『ふっか、愛してるよ。』
「照__」
最後に俺に見せた彼の姿は、涙を流していた。
俺が最後に照とした会話はなんだったか。
最後ぐらい、ちゃんと話せば良かった。
最後に、照が使った時間は、俺への時間だった。
美しい最期を見せてくれた彼。
俺は、きっと、照以外の人を好きになるなんてないだろう。
でも、それ以外のことで幸せになる。
必ず、SnowManを日本一、いや、世界一のアイドルにしてやる。
だから、見てて。
俺と、SnowManの、最高の物語を。
照
愛してるよ
side岩本
USBに入れる動画を撮り終えた。
いよいよ、俺の最期が迫ってきている。
扉をノックされる。
入ってきたのは、
ピンク髪の男。
「泣いてる…?」
いつの間にか流れていたものを指摘され、慌てて服の袖で拭く。
「いよいよ……だね……」
俺は頷く。
そして、口を開く。
「お願い…してもいい?」
「ん?いいよ」
「なに?」
「これを、猫岩の下の砂に埋めて欲しい」
そう言ってUSBの入った紺色の小さな箱を渡す。
「俺でいいの?」
「うん。」
「てか、佐久間がいい」
「やってくれる?」
「もちろん。照が言うならね」
「ありがとう」
「じゃあ、よろしくね」
「任せとけぇ!」
その後、すぐに先生が入ってくる。
「体調はどうですか?」
「なんともないです」
「では、行きましょう」
俺の左腕には点滴。
今から、手術を行う。
でも、そんなことを行う体力なんて無いことは自分自身がよく知っている。
「頑張れよ」
佐久間にエールを送ってもらい、ベッドから降りる。
でも、降りたと同時に視界が黒に染まる。
一瞬で、俺の肺は空気を送るのを辞め、心臓は血液を流すのを辞め、脳は働くことを辞める。
side佐久間
「岩本さん!!!!」
照が倒れた。
先生は驚きを隠せないが、俺は、落ち着いている。
こうなることは、照自身が分かっていた。
すぐに数人の看護師と医者が駆けつける。
俺は、邪魔をしないように、そっと部屋を出た。
side岩本
猫岩の前。
ここは、俺がふっかに永遠の愛を誓った場所
さっき、ふっかを振ってしまった。
だから、ここで、もう1度、
「ふっか、愛してるよ」
君に誓いを。
『ありがとうございましたー!!』
みんなで挨拶をして照と帰る
「ねぇ、ふっか?」
「ん〜?」
「ふっかはさ、俺の前から突然いなくなったりしないよね」
「当たり前じゃん」
前に、俺がしたような問いを照がする
それに、俺は当然のように答える
そして、照の腕に巻き付く
「俺は、照から離れないし、照も、俺が離さない」
「うん」
照も、それに答えるように、俺の腕を自分の方に寄せる
2人で、家に帰った
濃紺の空が広がっていた
コメント
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いい話すぎる、、 主さん天才です、、尊敬します、 ボロ泣きです…
あれ、久しぶりに見て、 前にも見たはずなのに涙ボロボロやん…(この先も寝るまで見てボロ泣します…)