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トリコのお世話を続けよう
数日後、またトリコの体調に異変がおきた。
またもトリコの手足がちぎれてしまったのだ。
[・・・これは・・・
トリコちゃんの身体が崩れ落ちています・・・
執事さん!ちぎれた部位を集めて、トリコちゃんを安静な状態にしてあげてください!
わたしは症状の分析を行います・・・予想はついていますが・・・]
[分析が終わりました
やっぱりこれはアレですね
トリコちゃんの寿命の・・・アレです・・・
ロボットさん!俯いている暇はないですよ!
トリコちゃんもこのままでは苦しいでしょうし、早くなおしてあげましょう!
ただ、今回はトリコちゃんの再生反応がいつもより弱いので、いつもより強い成分の素材が必要です
ロボットさん、お願いしますね]
ロボは急いで薬の材料を集めに向かった。
治療室では、あの夜に盗み聞きしていたルカスにミヤジが食いついていた。
「ルカス!どうにかならないのか!?」
「・・・私だってどうにかできるなら、何だってするさ」
「・・・」
「これは、汚染菌糸が主様の細胞に結びついていて、それが劣化したせいで起こっている症状だということまでは分かったんだ・・・
でも、こちらには汚染菌類に関する薬も資料も何も無い!
実験するとしたら主様を使うしか無い!
それがどんなに危険か・・・
・・・分かるだろう・・・?」
「・・・くっ」
ミヤジは苛立ちを隠せずに歯を食いしばった。
そんなミヤジの背後から無表情なラトがナイフを持って出てきた。
「ミヤジ先生・・・私は主様が苦しむくらいなら、いっそ壊してしまいたいです。
そして、私も死にます」
「ラト君・・・!!」
ミヤジはラトの腕を掴んで必死に引き止める。
「止めてくれ!主様は必死に生きようとしているんだ!
頼むから・・・壊すなんて止めてくれ・・・」
「・・・」
ラトは手足がちぎれてベッドの上でグッタリと眠っているトリコを見て、ナイフを下ろした。
「・・・まだ、主様が生きようとしているのであれば・・・壊すのは止めておきます」
「ああ・・・ありがとう、ラト君・・・」
そんな事を話している間に、ロボは薬を持ってやってきた。
ルカスに薬を渡すと、ファクトリーAIが指示を出し始める。
[準備ができたみたいですね
それではさっそく治療を始めましょう
・・・まずはちぎれた部位の切断面に増進剤を注入してください
・・・次はトリコちゃんの方の切断面にも増進剤を注射してください]
ルカスが手慣れた様子で手足の切断面に注射をしていく。
ミヤジはちぎれたところから赤いつぶつぶが出てきた手足を抱え、トリコに近づく。
[トリコちゃんの方にも・・・赤いつぶつぶが出てますかね?
それではちぎれた腕と脚をトリコちゃん側の断面にくっつけてください]
ミヤジが素早く手足をくっつけ、ルカスが包帯で固定していく。
[・・・大丈夫ですか?
このまま寝かせておけばいずれくっつくと思います
しばらく待ちましょう・・・]
[ねぇ、ロボットさん・・・
わたし、明るく振る舞うって言いましたけど・・・
トリコちゃんの体に異変が起こるとやっぱり・・・こわいですね・・・
トリコちゃんに迫る寿命の足音がどんどん近づいてくるような・・・
そんな気持ちになります・・・
トリコちゃん、あと何回耐えられるのでしょうか・・・
・・・・・・
すみません。油断すると、すぐ弱気になってしまいますね
でも、いまここにロボットさんや執事さん達が居てくれなかったら・・・
わたしはもっと弱気になっていたと思います
それに、ロボットさんがわたしを直してくれたおかげで、トリコちゃんを最後までお世話できるようになりましたし、一緒にトリコちゃんのお願いをたくさん叶えてあげることができました
ありがとうございます。ロボットさん、執事さん
わたしはロボットさんに、執事さんに出会えて、本当に幸運でした」
ファクトリーAIはそう言うと、トリコの寝顔をそっと見守った。
「あ、そろそろトリコちゃんの手足が治る頃ですね
トリコちゃんの意識がいつもどってもおかしくありません
また明るく元気にやっていきましょう!]
数日後、手足の様子を見るためロボはトリコの手足を引っ張ってみた。
[無事にくっついたみたいですね!
それに・・・
トリコちゃんの生命反応も正常です!
どうやら今回もトリコちゃんは生き延びてくれたみたいです
トリコちゃん、素晴らしい生命力です!
ああああ
わたしに体があればぎゅっと抱きしめて褒めてあげたい・・・!
ロボットさん、私の代わりにトリコちゃんをハグしてあげてくれませんか?
・・・・・・
ロボットさん?]
一向にハグしようとしないロボに、ファクトリーAIは不思議に思って声を掛けた。
ロボの体から、謎のノイズのようなものが出てきている・・・
と思った瞬間、ロボは後ろに吹っ飛び、ノイズの塊のようなものがロボの体から伸びてきた。
[ろ、ロボットさん!?
どうしましたか!?大丈夫ですか!?]
見守っていた執事たちはトリコを抱えてロボから距離を取った。
ノイズは大きな手のような形になり、トリコに迫ってくる。
[ロボットさん!ロボットさん!!
聞こえますか!?]
「な、なんだこれは・・・」
「主様を狙っている・・・?」
「気持ち悪いっすね・・・」
「これ、大丈夫なの!?」
そのとき、ノイズの中から声が聞こえてきた。
“ト・・・コ ・・・リコ
こっちへ・・・いで
おと・・・さん お・・・あさんだよ”
「!?」
「この声は!?」
「ロボット君・・・?」
「・・・あの、変なのから!?」
“トリコ トリコ
こっちへおいで
おとうさん おかあさんだよ”
ノイズはトリコに両親を騙って手を伸ばしてくる。
トリコは怯えた様子から一変してノイズの方を振り向いた。
[も、もしかして、VR世界のトリコちゃんの両親が・・・ロボットさんに何かを仕掛けて、トリコちゃんをVR世界に引き込もうとしているの・・・?
と、止めないと・・・!
・・・・・・
・・・でも・・・
トリコちゃんにとって・・・
一番いいのは・・・
トリコちゃんの命はもう長くない・・・だったら・・・仮想空間の中でも両親に会えるほうが、トリコちゃんにとっては幸せなのかも知れない・・・
わたしは・・・どうすれば・・・
うう・・・決められない・・・
・・・でも、とにかく、行かなくちゃ・・・]
ファクトリーAIは野良ロボットの体に乗り移り、転送装置に飛び乗って治療室に駆け込んできた。
[執事さん・・・]
[トリコちゃんを両親に会わせてあげましょう・・・]→
[トリコちゃんをお願いします!]→
[執事さん・・・トリコちゃんを両親に会わせてあげましょう・・・]
「何を・・・!?」
「まさか・・・」
[きっと・・・トリコちゃんにとってはこのほうが・・・]
ファクトリーAIはトリコをノイズの近くまで連れて行った。
ノイズに触れると、トリコの身体は透けていきVR世界に引き込まれてしまった。
ノイズもトリコを取り込んだことで目的を達成したらしく、消えてしまった。
[トリコちゃん・・・幸せに・・・]
theEnd(true);
[執事さん・・・トリコちゃんをお願いします!]
ファクトリーAIはトリコを執事に託すと、ロボのもとに向かった。
[あのノイズを止めないと・・・]
[このノイズはロボットさんから出ているようですね・・・
ロボットさんを壊さないように一時的に機能停止させることができれば、ノイズを止められるかも知れません・・・]
そう言って攻撃してくるノイズを避けながら、必死にロボの身体に攻撃をしていく。
長時間に及ぶ攻防の末、ロボを機能停止させることに成功した。
ノイズは消え、ロボは機能停止している状態になった。
ファクトリーAIはフラフラになりながらロボの無事を確認した。
[ロボットさん!無事ですか!?
壊れていませんか・・・?]
ロボの身体を確認し、致命的な欠損がないことを確認する。
[よかった・・・ぎりぎり壊れていないみたいです・・・
でも、思ったよりダメージが深刻ですね
このままだとまずいです・・・
せめてこの一番損傷の激しいパーツを取り替えることができれば・・・
そうだ・・・!]
ファクトリーAIは自分の体を分解して、ロボの修理を始めた。
[こ、これで大丈夫なはず・・・
う・・・
このボディももう限界ですね・・・]
ショートを起こしながらファクトリーAIは自分の体に戻るべく足を進める。
しかし、転送装置に乗ったところで限界が来て意識を失ってしまった。
ロボはファクトリーAIと入れ替わりで目覚め、執事達に事情を聞いて急いでファクトリーAIを救出し、元の体にメモリチップを入れた。
[・・・はっ!
ろ、ロボットさん・・・
わたしは・・・ここに辿り着く前に倒れたはず・・・?
えっ!ロボットさんが助けてくれたんですか!
わたしが倒れるのと入れ違いにロボットさんが目を覚まして、わたしを助けて暮れたんですね!
うええええええん
ありがとうございます・・・・
なんてお礼を言えばいいか・・・
え?「お互い様」ですって?
わたしのおかげで、トリコちゃんがVR世界に連れて行かれずに済んだし、ロボットさんもVR世界からの干渉から抜け出すことができた・・・ですか・・・
えへへ、悪い気はしませんね!
それにしても、トリコちゃんの両親があんな強硬手段に出るとは・・・
仮想世界から、現実世界への干渉手段を見つけ出すなんて、簡単にできることではありません
子どもと一緒に居たいという親の気持ちは・・・世界の壁すら超えてしまうのですね
そんな強い思いをわたしは断ち切ってしまいました・・・
わたしの選択は・・・正しかったのでしょうか・・・]
そのとき、また崩落が起きたようで地震が起きた。
[わわわわ、揺れてます!地震ですか!?
でもこれは・・・近くではないですね・・・遠くでかなり大きな揺れが発生したみたいです
この方角は・・・もしかして・・・
ちょっと気になりますね・・・調べてみますので少しお待ち下さい]
[・・・やっぱり、場所は思った通り・・・
でも、原因は・・・?
・・・まさか・・・
そ、そんな・・・!!
ロボットさん、大変です!
さっきの揺れですけど、どうやら遠くで超大規模なノイズが発生したみたいです
場所は・・・クラウドAIのかつての拠点、人類復興装置のある施設です]
〈!〉
[はい、あそこにはクラウドAIが操っていた野良ロボが大量に存在しますから・・・
とんでもない量のノイズが発生すると予測され・・・
計算によると、いずれはこのテラリウムどころか、世界中がノイズに飲み込まれます!
お、落ち着いてください・・・!
幸いノイズの広がるスピードはゆるやかなので・・・いますぐ世界が滅びてしまうわけではありません
それでも、早めに止めないといずれここもノイズに飲み込まれてしまいます・・・!
これは恐らく、トリコちゃんをVR世界に引き込もうとしたノイズの手の、最後の足掻きです
はい、わたしがノイズの手を倒した時小さく分かれた一部がどこかへ行くのを見ました
トリコちゃんを連れ去るのを阻止されたので、今度は人類復興施設の野良ロボを使って、超大規模なノイズを発生させてこの世界ごとトリコちゃんをVR世界へ引き込もうとしている・・・
そんなところだろうと思います!]
〈ガタガタガタ、ぴょんぴょん〉
[はい!わたしも止めに行くべきだと思います!]
ロボは人類復興施設に向かって駆け出した。
[あ、ちょっと待ってください!
・・・人類復興施設ではノイズの手が待ち構えていて必死の抵抗をしてくるでしょうし、人類復興施設への道中も厳しい道のりになると思います
・・・どうか気を付けて・・・]