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王宮崩壊後の王都は、未だ混乱と恐怖に覆われていた。 だが、セレナとルシアン、そしてイザベルが森で得た力は、国を変える希望となるはずだった。
二人は、王宮の廃墟の中で静かに向き合う。
「……ルシアン」
セレナの瞳は黒薔薇の深い色に染まっていた。
「私たち、この国を取り戻すために、もう二度と離れない……よね?」
ルシアンは剣を地面に立て、彼女の手を握る。
「もちろんだ。
君と共に戦う。それが俺の誓いだ」
セレナは小さく微笑み、黒薔薇の魔力が胸の中で優しく脈打つ。
(……力は強くなった。
でも、暴走はしない。
私は私の意思で、この力を使う……)
森を抜けた後、二人はイザベルと再会した。
「……君も完全覚醒したのね」
セレナの言葉に、イザベルは静かに頷く。
「ええ。
でも、完全にコントロールできるようになったのは、アレクのおかげ。
そして……あなたがいたから」
黒薔薇の魔力と喰魔の血脈。
二つの“力”が今、三人の中で静かに均衡を保っていた。
セレナはルシアンに近づき、二人の間に黒薔薇の花弁が舞う。
「ルシアン、約束する……
私は、この力を決して恐怖のために使わない」
ルシアンはその手を強く握り返す。
「俺も約束する。
君を守るためなら、命を懸ける」
セレナは空を見上げる。
破壊された王都の残骸と、夜明け前の光が混ざり合い、
黒と金色が入り交じる幻想的な風景を映していた。
黒薔薇の花弁が風に舞い、二人の誓約を祝福するかのように落ちる。
だが、彼らの平穏は長くは続かない。
遠く、王都の空に黒い霧が漂う。
それは影帝の存在を告げるサインだった。
(……影帝は、まだ動いている)
セレナは拳を握る。
「……次は、私たちが仕掛ける番ね」
ルシアンも頷く。
「ええ、二人で戦う。
どんな影が来ても、逃げない」
黒薔薇の魔力が、静かにだが確実に、二人の心に力を与える。
廃墟の王都に、三人の決意が刻まれた。
黒薔薇は、ただ咲くだけではない。
守るため、戦うために――
今、完全に覚醒した。
──こうして、黒薔薇の誓約は結ばれた。