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🖤「阿部ちゃん、何してるの?」
せっかく家に来たっていうのに、俺の可愛い人はパソコンに向かって何か夢中で操作をしている。
💚「これね、今プログラミングでお世話になってる人が開発してるんだ。画面から自分を複製してアバターにできるんだけど、どうもプログラムの調子が悪いみたいで」
言いながらキーボードを叩き、時折『んー』とか『あっ、こうか』『いやでもこうするとこっちが』とか独り言。
🖤「ねぇ、それ今じゃないといけない?」
💚「ちょっとプログラムが中途半端だから、もう少し待って?」
🖤「もう」
後でお仕置きだ、なんて思いながら、ここにいても仕方ない。せめて早く作業が終わるように差し入れでもしようとコンビニにお菓子とコーヒーを買いに行った。
そう、俺が家を開けたのはほんの20分くらいのこと。
家に戻ると、リビングに阿部ちゃんの姿はなかった。
🖤「あれっ?」
パソコンは開かれたまま。どうせわからないけど、と思いながら興味本位で覗き込んでぎょっとした。
画面の中から、阿部ちゃんが懸命にディスプレイを叩いている。俺が覗き込んだのは見えているようで、今にも泣きそうな顔をした。
🖤「阿部ちゃん、どうしたの?なんで?」
💚「プログラムを打ち込んでたら急に……」
🖤「戻れる方法はあるの?」
💚「ちょっと難しいけど。めめ、俺が言うコードを打ち込んでくれない?最後までプログラムを入れれば正常に動くはず」
🖤「わかった」
パソコンはそんなに得意じゃないけど、阿部ちゃんに言われた通りキーボードを叩いてプログラムを打ち込んでいく。
中身は全然わからないけど、一応それで合ってはいるようだ。阿部ちゃんがプログラムを声に出しながら、時々うんうんと頷く。
💚「…で、最後に……」
🖤「うんうん」
あと少しという所で、隣に置いていたコーヒーに手が当たった。
🖤「やばい!」
咄嗟にパソコンを持ち上げて倒れるコーヒーから守る。
何かキーを押した気がするけど構っていられない。
画面の向こうから阿部ちゃんの『あっ、まだ…』と慌てた声が聞こえた気がしたけどそれどころでなかった。
俺は机にこぼれ、床に滴るコーヒーを拭く事に集中し、頭上まで掲げて今被害のない所に背を向けて置いたパソコンがどうなったかまで気にかける余裕はなかった。