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翌日の入学式で、上級生の席に座るジョージアを見つけた。友人たちと談笑している。壇上にいる私からは上級生たちがよく見えている。兄を確認しようと少し探していると、ジョージアとばちっと目があったので、それと分からないくらいに軽く軽く会釈する。壇上なので、しっかり会釈すると目立つのだ。それを見ていたジョージアも、周りの友人にわからない程度に頷いていた。なんだか、秘密のやり取りをしているようで、こそばゆい。
壇上には、私以外にも殿下やハリーがいたのだが、昨日の今日なのでハリーは何やら気づいたようだ。見えないように背中をポンっと叩いてきたが、すねることもなくにこやかにしている。
なぜ、私たちが壇上にいるかというと、今、入学式真っ最中なのだが、成績優秀だとかで、壇上で表彰されている。顔を覚えてもらえるようにと、生徒側に向かって立っているのだ。私の学力的に、奇跡に近い成績を収めたので、今回、壇上にいるのだが、2度とこんなことはないだろう。
恥ずかしいので、早く終わってほしい。
さすがに緊張していたので、兄の顔を眺めていようと兄を探していて、銀髪の君を見つけてしまったという顛末だ。
「銀髪の君、アンナのこと見ているね?」
ハリーが、ほとんど口を動かないように私に話しかけてくる。
「そんなことないよ。昨日やらかしたから、どんなあほな子かと思っているんじゃない?」
「そうかな。たぶん……いや、なんでもないよ」
「昨日何かあったのか? 俺だけ知らないとか不公平だぞ?」
二人で話をしていると、ハリーの隣にいた殿下が会話に入ってくる。そういえば、昨日の出来事は、殿下に話していなかった。
「そうですか。殿下、朗報で。かなり強力なライバルが現れました」
「!!!!!!! なんだと!?」
「殿下、こっち向かないでください。ほら、にこやかに。一応、公務みたいなもんなんですから、感情はみださないでくださいね。じゃないと僕が父上に怒られるので」
ハリーが、殿下の暴挙を止めている。私も聞きずてならない単語が聞こえた気がする。
「ハリー、ライバルって何?」
「あぁー横にいたんだっけ……? 忘れろ。俺と殿下が覚えているから、すっかり、さっぱり忘れてしまえ!」
さすがに、ニコニコ笑顔で5分もさらされているので、そろそろ表情筋がやばい。ハリーに食ってかかりたいけど……それもこの状況ではできそうにない。今話したのは、私が身動き取れないでいるからだと思う。策謀において、ハリーは三人の中で随一なのだから……今のタイミングを狙ったのだろう。
「では、殿下より自席におもどりください。その後も続いてください」
やっと、壇上から解放された私たちではあったが、殿下とハリーは隣あっているのに対し、私は少し離れている。さっきの話を聞きたかったけど、このままうやむやにされそうである。仕方ないかと思い、諦めた。殿下たちも今は話していないようなので、とりあえず大人しく入学式を祝ってもらうことにした。
この入学式を境に私は殿下とハリーと共に常に話題の中心にいた。友達もたくさんでき、楽しく過ごせている。ふと視線を感じ、そちらを見るとジョージアと目が合う。
何度話をしに行こうかと思ったことか。そのことあるごとに、殿下かハリーに邪魔をされるのだ。あれ以来、全く話をしていない。
もう雪がちらつく季節になったというのに……。
でも、必ず目が合うとお互い周りに気づかれないように挨拶をする。どちらかが決めたわけでもなく合図を決めたわけではないのだけど、お互いにはわかった。
夢でもみたけど、本当に接点がないのね……?
こうして、目があい挨拶はするけど、それだけ。たまに兄経由でジョージアの話は聞くことはあっても、直接話はできないでいる。私にもこの学園で、トワイス国の友だけでなく、ローズディア公国の友もできたため、そちらの話もちらほら聞くようになった。
「もっぱらの噂なんだけど、昨年卒業したダドリー男爵令嬢のソフィア様が、銀髪の君に婚約を迫っているらしいよ。2つも年上だからね……焦っているって聞いてる」
「でも、銀髪の君も学園を卒業するまでは、婚約の話は両親にするつもりがないって言っているらしいね。男爵から個人的に圧力がかかっているって話だけど……大丈夫なのかなぁ?」
「確かに、貴族は卒業式のエスコートに婚約者が多いですものね。ご自身の卒業式でエスコートしてもらえなかったから、ジョージア様の卒業式でエスコートされたいのでしょ?」
「全く、ずうずうしいわよね。銀髪の君なら、王家からの降嫁もあり得るくらいの身分なのに、あんなさえない男爵令嬢だなんて……おかわいそうだわ」
出会ってから季節も一巡すると、もう次の卒業式の話が持ち切りだ。なんたって、今年の卒業生は銀髪の君がいる。かの人が誰を指名するのか、噂通り男爵令嬢をエスコートするのか、それならがっかりだとか色々な噂話が飛び交っていた。
噂になるということは、みんなが銀髪の君にエスコートされたいのだ。見目麗しい上にダンスもかなり上手。王子様と言われれば、誰もが納得してしまうくらいなのだから……。
さてさて、件の銀の王子は、誰をエスコートすることになるのだろうか。私もとても興味があった。