コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
(ほんと美晴は勝手な女だ!! イライラする!!)
美晴が出て行ってから数日で家は荒れた。まずは自分に断りもなく留守にしたことで怒って家で暴れた。何度電話しても応答がないことにキレて暴れた。無茶苦茶になってしまったリビングを放置して実家に身を寄せていたところ、内容証明が届いて話し合いを行っているというわけだ。
和子との話し合いは一向に進まなかったが、彼女は普段から通っているダンススクールの時間だと言ってタクシーを呼び、いそいそ出かけて行った。息子が苦労しているというのに、若い男に現を抜かす色欲ババアが、と内心罵っていたところで、待ちわびていた美晴から連絡が入った。
「おいっ、美晴! いったいどういうつもりなんだっ!!」
『私はもう、幹雄さんについていくことはできません。私というものがありながら、上原こずえと…よりによって私の親友と浮気をしていましたね? ぜんぶ、知っていますよ』
それを聞いて幹雄の全身が波打った。なぜ、知られている――
「こずえさんと浮気なんて、そんなことあるわけないだろうっ」
怒りで誤魔化したが、美晴には通じていなかった。
『買い物に出かけた時、ふたりで仲良く歩く姿を見てしまいました。もう…それ以来辛くて、食事も喉を通らなくて、信じていたふたりから裏切られた私の悲しみは、計り知れません…ううっ』
筆舌に尽くしがたい悲しみに包まれているようなことを、泣きながら告げられた。
「心からあなただけを愛していましたから…こずえを選ばれたのでしたら、私は身を引きます」
それは困る!!
「待ってくれ、いや、それは誤解で…」なんとか弁明しなければ、と焦って幹雄は話し出す。「とにかく、しっかり話し合おうじゃないか」
『以前、こずえは私に会いにきた後、彼氏に会いに行くと言っていましたから。その時、あなたたちを見かけたのです。誤解ではありません』
あの女、余計なことを――幹雄は固めた拳をこずえの顔面に振り下ろしたくなった。気の強くわがままな彼女の顔は、想像内で醜く歪んで破裂した。
「美晴。落ち着け。確かに気が迷った時もある。それは認めよう。だがな、それはお前が悪いんだ。僕や母さんに尽くすと言いながら、イライラさせるようなことばかりやった上に、大事な子供を殺してしまった美晴が悪…」
『私、幹雄さんの秘密を知っていますから。離婚に応じてくださらないのであれば、この秘密を公にします。とても困ることになると思いますよ。よろしいですか?』
子供のことを言及した途端、美晴の声が一気に冷たくなった。まるで機械的であり、さすがの幹雄も背筋がぞっとした。
「わ、悪かった。悪かったから美晴。僕がこれだけ頼んでいるんだ。やり直してくれるだろう?」
『いいえ。もう幹雄さんを愛することはできません。離婚してください。してくださらないのであれば、裁判します』
「なっ…裁判だとっ! そんな金どこに――」
『幹雄さんの秘密を暴露して、クラウドファンディングで資金を集めます。お金のことは心配無用です。なんとでもなりますから』
この女は本気だ――美晴を甘く見すぎていたことに警鐘を鳴らし、幹雄は遂に折れた。「わ、わかった。言うとおりにするから。離婚しよう。だから、秘密だけは頼む、公表は避けてくれ。美晴の望みはなんだ? 請求された慰謝料は払う。それで許してくれるのか?」
美晴がこちらを脅す秘密とはなんだろうか――あまりに多くありすぎて、彼自身どの件で脅されているのか見当がつかなかった。