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自室へ戻ろうとしていた足を止め、踵を返す。
やはりさっきのは言い過ぎたと思い、謝ろうと元来た道を戻っていた。
覚えのない人たちの傷付いた顔。
ポロリと出てしまった言葉。
あれは”俺”の本心なのだろうか。
記憶にないはずの彼らに言われて傷付く自分が何故か頭に浮かんだ。
それが浮かぶ度に叫びたくなる程に、胸を締め付けられるくらいに苦しくてつらくなる。
それらから逃れる為に、出た言葉。
だから、3人の会話を聞いて彼らの自分可愛さの言葉に心が更に冷めていく感じがした。
無意識なのだろう。
彼らを忘れた自分に非があるのは確かだ。
ただ、他人扱いも気を遣うのもあんな顔を見たくないと言われるのも全て心外であった。
腫れ物に触るように扱われているのは感じている。
でも、そう扱われる覚えもない。
今の俺にとって彼らは無関係の赤の他人と同義だ。
こうなる前の俺がどれだけあの人たちと仲が良かったかは正直分からない。
彼らの様子を見るに、良好な関係であったのだろうけど。
それなら尚更、俺に対するそういう態度をとるのは事態を悪くするのではないかと客観的に思った。
「……」
無意識に俺自身が彼らと境界を張ってるせいでもあるのかもしれない。
しかし、あの言い方に遠回しに自分達も傷付いているのだと自身の可愛さが出ているように思えた。
「…ふっ」
小さく笑いが込み上げた。
先生曰く、俺と彼らの間に何がありそれから逃れる為に俺はあの3人を忘れた。
自己防衛。
自身の心を守る為。
大切であるが故に忘れることにした。
「なるほど…。こういう無意識の積み重ねが俺は嫌になったってワケか」
返した踵は元の方向へ向き、その瞬間には申し訳なさが消え去っていった。
「仕事を放棄はできないし、…さて、どうしたものか」
もう少し休養をしたら、自分のやるべきことに専念することとしよう。
そうすれば余計なことは考えなくて済むから。