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夜、リビング。
ソファに並んで座ってるのに、桜はずっとスマホをいじってる。
画面は推しのボイスクリップ。イヤホン越しじゃなく、スピーカーから小さく流してる。
「……この声、落ち着く……」
ぽつりと漏れた独り言に、隣の柊真が一瞬だけ視線を向ける。
「……男の声?」
低くて短い一言。
感情は表に出てないのに、桜はすぐ分かる。
——あ、これ嫉妬してる。
「ち、違うよ!推しの声!作品の!」
慌てて説明しながら、桜は内心ドキドキしてる。
柊真はそれ以上何も言わない。
ただ、桜の手首をそっと掴んで、スマホをテーブルに置かせる。
「……俺の声じゃ、足りない?」
その一言が、ずるい。
低くて、少し掠れてて、独占欲が滲んでる声。
「……足りないとかじゃなくて……」
桜は俯いて、指先をぎゅっと握る。
「一人になる時間が、苦手なだけ……」
本当は言いたい。
一緒に住みたいって。
毎日この声を聞いていたいって。
でも恥ずかしくて言えない。
沈黙が落ちる。
柊真はしばらく何も言わなかったあと、静かに口を開く。
「……桜が寂しいなら」
少し間を置いて、
「俺が、帰る場所になればいい」
桜が顔を上げると、柊真は目を逸らしてる。
耳が、ほんのり赤い。
「……そのうち、な」
それだけなのに。
桜の胸は一気に温かくなる。
——言ってないのに。
ちゃんと、伝わってる。