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浮気調査は、ひとまず3週間。
「その間は、ひたすら我慢してください」と言われた。
香帆が騒いだり、疑ったりすると、颯真が用心する。
『泳がして、油断させて、証拠をつかむ』作戦だ。
香帆には地獄のような3週間だった。
なんて気持ち悪いんだろう。颯真と同じ家にいるのが嫌だ。
他の女を触った手で、家具や家電に触れるだけで気持ち悪い。
風呂やトイレを共有することも気持ち悪い。
でも「泳がせるため」に、日常の家事は続けた。
回数は減らしたけど、弁当も作った。
颯真の服や下着は、手袋をした手で洗濯機に入れた。
こんなに気持ち悪くて、吐気が続くのに、颯真は普通に暮らしている。
嬉しそうに外出する。毎日を楽しんでいる。
そこが悔しい。
香帆を気にしていないからだ。
(私が、やつれて病気になっても、気付かないの?)
(浮気がバレなければ、私はどうでもいいの?)
(颯真にとって、私は何なの?)
(心も身体も夫婦じゃない。家事をするだけの家政婦なの?)
家にいると心身が衰弱する。
普通に過ごせるのは、仕事中だけだ。
颯真と違って、美緒は少しの変化も気付いてくれる。
「疲れてるみたい。少し痩せたんじゃない?」
「うん。母の体調が悪いから」
「気を付けてね。香帆まで倒れたら大変よ」
(美緒は優しい。颯真も気付いてくれたらいいのに)
(なんで気付かないの? こんなに苦しんでるのに!)
気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い! 気持ち悪い!!
許せない、許せない、許せない! 許せない!!
颯真への香帆の思いは、悲しみから憎しみに変わった。
颯真に対する憎悪だけが、大きく大きく膨れ上がった。
身も心も疲れ切った香帆の、苦しい苦しい地獄の3週間が過ぎた。