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side 大森
夜は静かだった。
仕事が終わって、やっと三人揃って家にいる。
リビングの明かりは少し落としてあって
ソファに三人並んで座っていた。
涼ちゃんは僕の肩に軽く寄りかかっていて
若井は反対側から腕をソファの背に回している。
自然と、僕は真ん中。
逃げ場がない。
「……近くない?」
僕が小さく言う。
涼ちゃんがくすっと笑う。
「近いね」
でも離れない。
むしろ少しだけ寄る。
若井もその様子を見て、肩を引き寄せる。
「嫌?」
低い声。
耳のすぐ近く。
僕の心臓が一気に跳ねる。
「嫌じゃないけど……」
視線を逸らす。
頬がじわっと熱くなる。
こういう空気に弱い。
涼ちゃんが僕の顔を覗き込む。
「顔赤い」
「赤くない」
即答。
でも耳まで赤い。
若井がくっと笑う。
「嘘」
指先で顎を少し持ち上げる。
視線が合う。
僕は逃げようとするけど、後ろはソファ。
逃げられない。
「ほら」
若井がゆっくり距離を詰める。
唇が触れるか触れないかの距離。
僕の呼吸が止まる。
「……キスするよ」
その一言で。
完全に真っ赤。
「言わなくていいから!」
慌てる僕。
涼ちゃんが横から笑いながら言う。
「若井、意地悪だね笑」
でも。
そのまま涼ちゃんも反対側から近づく。
僕は固まる。
「ちょ、待って」
「待たない」
涼ちゃんが優しく言う。
次の瞬間。
左右から軽いキス。
たった一瞬。
でも、 逃げ場ゼロ。
僕の頭が真っ白になる。
「……ずるい」
小さく呟く。
若井が笑う。
「さっき“嫌じゃない”って言った」
涼ちゃんも頷く。
「むしろ嬉しそう」
僕は顔を両手で隠す。
「……っ、見ないで」
でも。
若井がその手をそっと外す。
「可愛い」
涼ちゃんも優しく言う。
「ほんとに可愛い」
僕の心臓はまだ早い。
でも、 嫌じゃない。
むしろ。
この距離が落ち着く。
若井がぽつりと言う。
「今日は甘えたい日?」
僕は少し考えて。
小さく頷く。
「……うん」
その答えで。
若井と涼ちゃんが同時に笑う。
「じゃあ今日は」
涼ちゃんが肩を抱く。
「甘やかす日だね」
僕はまた顔を赤くする。
でも今度は、すごく嬉しかった。