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朝、家を出ていつもの駅に着く。電車を待っていると「ゆいな!」と声をかけられる。
いつもなら声をかけるのはあやだが今日は違う。
「はよー」
同じ委員会になって昨日趣味のアニメや漫画の話をしながら帰り親しくなった住吉 奏樹が声をかけてくれた。
「おはよう」
「ねぇその寝癖なんなの?」
そうきくんはいつも真面目っぽいから寝癖なんて珍しい。
「んぇ?なおした気がするけど」
「なおってないよ笑」
ふわふわな髪の毛に触りたい。けど異性だから。
「わかんない、ゆいな、なおしてよ」
そうきくんは猫みたいに私に、じゃれてくる。
何も分かっていなさそうな無邪気さが可愛く見える。ずるい。
「え?うん、いいけど」
「し、つれいします」
予想通りふわふわでサラサラで綺麗な髪の毛だった。
「よし!なおったよ!」
「ありがとう」
そうきくんは満面の笑みでこっちを向く。
「ねぇ?寝ぼけてるの?」
「寝ぼけてなんかないよ〜」
朝はいつもこんな雰囲気なのかな?
「あ!ゆいなー!」
いつもこの時間帯に声をかけて来る子。
それが七瀬 彩だ。
「あ、あや…おはよう…」
「おはよー!」
「ねぇ隣の人はだれ?」コソッ
そう言ってあやはそうきくんを指す
「同じクラスでしょ、住吉 奏樹くんだよ」
「え、あぁ住吉くんか!雰囲気違いすぎて気がつかなかった。」
そう言ってあやは悪気のなさそうに笑う。
「ねぇ、七瀬さん」
「ん?なーに?」
あやは期待の眼差しでそうきくんを見る。
なんの期待か?あやは自分がモテていることに気がついている。
だからきっとそうきくんが私を置いて一緒に行こうと言うのを期待しているのだろう。
実を言うと私はそうきくんがそう言うんじゃないかと考えている…。
「もう話終わった?」
「え?うん!」
あやの期待はもっと大きくなる。
そして私の考えが的中しそうで怖い。
「ならもういいよね、」
そう言ってそうきくんは私の手を掴む。
「ゆいな行こ」
そう言って早足であやの元を離れる。
「え?ちょっと!」
置き去りにされたあやはそう叫ぶ。
どうせ電車を降りれば柊くんと学校に向かうんだからいいでしょ。
いつも降りる駅の近くで柊くんはあやを待っている。そこから私は一人。
正直いうと今嬉しかった。
「ゆいな?ごめんね、七瀬さんと行きたかった?」
そうきくんは慌てて心配してくれる。
「全く!なんならそうきくんと行きたいなって思ってたよ!」
これは嘘じゃない。本当に思ってる。
「なっ…///」
そうきくんは何故か顔を真っ赤にしてそっぽをむく。
「どうしたの?」
「大丈夫?」
「大丈夫だから…。ちょっと離れて。」
いつの間にか私はそうきくんと近い距離にいた。
「うわっごめんね、」
丁度電車が来て車両の中に足を踏み入れた。
今日も相変わらず混んでいる。座れそうにない。
「ゆいな、こっちおいで」
そう言ってそうきくんは私の腕を引っ張って端に寄せる。
誰にも当たらないようにそうきくんは私を壁の方に立たせて周りを腕で囲む。
なんかハグしてるみたいで恥ずかしい。
そうきくんはぶつかられても一歩も動かず私を守ってくれる。
「そうきくん大丈夫?」
「全然大丈夫だよ、ゆいなこそ苦しくない?」
「うん、大丈夫」
こんな時に私の心配をしてくれるなんて、眼鏡外して前髪切ればきっとモテるだろうなぁ〜
「…?」
カチャッ
わぁかっこいい。綺麗な目。
「ゆいな…?なんで眼鏡取るの?」
「…!」
無意識にそうきくんの眼鏡を取ってまじまじと瞳を見ていたことに気づいて咄嗟に眼鏡を掛け直した。
「ごめんね、ちょっと外したの見て見たくて…」
「うん全然いいよ」
「ゆいなはさ俺の眼鏡外した方が好きなの?」
まただ、私をからかうように聞いてくる。ずるい。
「うん、好きだよ」
本当のこと。そうきくんは眼鏡が無い方が好き。
「でもね、私以外の前で眼鏡外さないで?」
他の人にこんなかっこいい姿見せたくない。
わがままだなぁ。
「ん、///分かった」
またそうきくんは顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。照れてるのかな。
プシュー
「ついたよ」
「行こ」
そうきくんは手を繋いで電車の外まで連れていってくれる。
そこからまたアニメの話をする。
楽しい。そうきくんが隣にいると安心する。
なんか懐かしいな。ん?懐かしい…?今年初めて会ったけどな。
「あ、ねぇ東堂さん?」
「…!」
この声は知ってる。大好きな人の声。
「どうかしたの?柊くん。」
私の好きな人、柊 輝だ。
「あや、知らない?」
「あや…?」
私に話しかけてくれたと思ったらあや…か。
「ごめん、今日は一緒に来てないからわかんない。」
「な、んで?」
「え?」
「なんで一緒に居なかったわけ?」
「何言って…」
「あやは可愛いんだから誘拐とかされるかもしれないだろ?東堂さんが男に守ってもらう必要なんかないだろ?!」
そう言って柊くんは私に怒りの目を向ける。
「ひかる…?」
「あや!」
「どうかしたの?」
「いや、なんでもないよ」
「行こっか」
幸せそうな雰囲気、好き同士が会話する時の目。嫌いだ。
「おい!待てよ」
そうきくんが柊くんを呼び止める。
「は?」
「ゆいなに謝れよ」
そうきくんは私の一歩前に立って話し始める。
「お前、ゆいなが七瀬さんの護衛か何かだと思ってる?」
「何言ってんの?」
「七瀬さんを危険な目に合わせたくないならお前が守れよ!」
「俺、行き先違うし」
「その程度なんだよ、」
「は?」
「その程度なんだよ!七瀬さんへの心配が!」
「何言ってんだよ、お前?」
「いいからゆいなに謝れよ」
「ひかる…。」
「あや、」
やめて、やめて二人で幸せそうに見つめ合わないで…!
私の心が…!
ギュッ
え?そうきくんの匂い…?抱きしめてくれたの?
「大丈夫だから。俺の事だけ考えてて」
「そうきくん…」
「お前自分が悪いって思っていよな?」
「ごめんけどお前みたいなクズに時間潰す方がもったいない。」
「俺らもう行くから」
「行こっか、ゆいな」
そうきくんはそう言ってそっと手を繋ぎゆっくり歩き始めた。
そしてハンカチをくれた。
「なんで、ハンカチ?」
「気づいてないの?ゆいな、涙出てるよ、」
気づかなかった。勝手に涙が出てくる。好きな人にいいように使われて、自分の好きな人と幸せそうにしてる。
失恋ってこういうことだ。
前から分かってたけど目の前にすると辛くなる。