コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
レイブの驚きも無理は無い、何故ならこの時代にポツポツ点在している里の人口は大きな物でも数百人単位なのである。
令和の時代でこの観察をご覧になっている皆さんにはイマイチ、想像し難いかも知れないよね……
そうだ、こう言ったら判り易いかもしれないな!
冬篭り前にバストロに連れられて訪れた里を例にして比較してみよう。
彼らがアキマツリで最初に訪れた町は百人程の村人が暮らす、比較的大きな町だった筈(はず)だが覚えておいでだろうか? そう人情深いあの里長(さとおさ)が治めていた里だ。
そうそう、ペトラがこの春の再訪を求められた少女、可愛らしいジェスが暮らすあの町のことである。
あの跳ね橋で守られていた小さな集落、あの町を皆さんの時代の言葉で表現すると、なんとビックリ、サンクトペテルブルク、そうなのであるのだ!
へ?
あんな小さな里が?
令和の人間からすれば五百万の人口を誇ったロシア連邦第二都市が?
元のレーニンゆかりのレニングラード、聖ペトロの聖地がぁ?
そう思われる事だろう…… しかし、これは事実、悲しい現実なのである……
この時代ではヒトは少し前にレイブが言った通り、脆弱で絶滅を危惧される中で、何とか生き抜いている、そんな弱いヨッワッイ! ……存在なのだ。
レイブ少年やその他の面々は知る由も無いが、実の所、この時点で地球全球上に生存している人類は、|僅《わず》か二百万にも満たない、そうなのである……
つまり、皆さんの時代の四千分の一以下なのだ。
と言う事は、ユーラシア北部(結構広大)な世界しか知らないレイブからすれば、むかしむかしの世界はそこら中にぎゅうぎゅうに神様、『アクマ』が詰まって溢れかえっている、そんな人混み、いやアクマ混み風に思えてしまった、そう言う事なのであった。
御伽噺(おとぎばなし)を非現実的に感じてしまったせいだろうか、それともそこら中にアクマがフラフラ歩いていて、毎朝毎朝、
『オッス、オラアクマ!』
『アハハ、オラモアクマ!』
『オラモ!』
『オラモォ!』
『『アハハハッ!』』
的な言葉を交わしあう世界を想像しているのかは定かでは無いが、言葉を失い口を噤んでしまったレイブをそのままにガイランゲルはジグエラの言葉を引き継いで続ける。
『ははは、数の多さにビックリしてしまったみたいだな、だが驚嘆するのはここからなんだぞレイブ! 遥か昔の世界にアクマと呼ばれている神様達が居たか居ないか、その信憑性を著(いちじる)しく下げている、いいや下げざるを得ない伝承、おっと、御伽噺が伝えられているんだぞ、これが傑作でなぁ~ははは』
「そうなんだね、更なる伝承が…… 教えてくれる? どんな言い伝えなの?」
ガイランゲルはニヤニヤしながら答える。
『それがなぁ、今の世界が抱える諸問題、突然襲い掛かる魔力災害や、魔物狂乱、所謂(いわゆる)スタンピートとか、歳を経た一般人が苦しんでいる一部分の石化現象、古い言い方では癌や血栓、臓器不全の諸症状、アクマが復活すればそれらがいっぺんに解決するんだとさ、信じられないだろう? たった一人、一匹、いや確か一柱と数えるんだったかな? 正しいアクマ、名前を持つアクマがこの世に戻ってくればオールオッケイ、全ての問題が瓦解する、そう言われているんだぞ! 流石に眉唾、だろう? だから俺もジグエラも他の竜達も、伝承ではなくて御伽噺、そう言っているんだ、どうだ? レイブお前にも判るだろう? 夢見がちな誰かが考えた妄想の類なんだなってさ、はははは』