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ダークエルフの王を捕虜としたレビンは、無事にその役割を果たし、エルフ達と合流した。

戦後処理?なんですかそれ?

レビンはこの後が戦争と同じく…いや、それ以上に大変なことを知らない。

まずは相手の最高権力者を捕らえたことにより終わった今回の・・・戦争の後始末だ。

「えっ!?次があるんですか!?」

「ない事を願うよ。その為の戦後交渉だからね」

はぁ…気のない返事を返したレビンを見て、バーンナッドは安堵のため息を漏らした。

(この子なら、どれだけ強大な力を持ったとしても変わぬままだろう)

相手を押さえつける。奪う。権利を主張する。

そういったものに全く興味を示さないレビン見て、多くの民の生活を預かる一国の王として、バーンナッドは安堵するのであった。


肝心の戦後交渉であるが、多くのダークエルフがレビンの人外さを認識していた為、交渉は荒れることもなく簡単に終わる。

そもそもエルフはちょっかいかけないでくれたら、後は好きにして良いというスタンスだ。

流石に被害が大き過ぎた為、今回はかなりキツイ罰則をダークエルフに課したのだが、レビンにはそれもどうでもいいこと。

レビンにとって、今回の結末で譲れないものはただ一つだけ。それは、ミルキィのルーツの一つである、エルフの国の平穏であった。

ダークエルフはバーンナッドが告げた全てを受け入れる他なく、戦後交渉はここに一つの終わりを迎えた。


ダークエルフに課せられた罰だが、その中の最たるモノを一つ。

『人族と過度に接触しない』

というモノ。

これは人族の影響を受けたダークエルフが、今回の様な事を犯してしまうのを防ぐ為だ。

今回の事も、交流のある人族の商人からダークエルフの王が世間話をしたことが発端だった。

商人は良くも悪くも取引相手を気持ちよくさせる言葉を紡ぐ。

その商人も、まさかそれが戦争に繋がるとは夢にも思わないことだっただろう。

『何故ここまで賢いダークエルフがエルフと同列なのか信じられない』

『エルフが進化したダークエルフはエルフの上の存在』

『上の者が下の者を従えるのは世の常』

甘言に酔ってしまったダークエルフの王は、エルフを従える為の戦争を起こしてしまった。

それも、人族の知識と知恵を使って。

「もし、また同じ様な事を起こしたり、約束を破った場合は、我らエルフの盟友である『魔王』がダークエルフを駆逐するであろう」

これにより、少なくとも15年以上続いた戦争が終わりを迎えた。




「私も国が落ち着いたら会いに行くと伝えてくれ。気をつけて帰るんだよ」

レビンがミルキィの元に帰る時が来た様だ。

「はい。復興頑張ってください。ミルキィも絶対元の光景が見たいって言いますので」

レビンはバーンナッドを始め、この国の全ての国民に見送られながら、復興途中のエルフの国を後にした。


戦争は終わったが、実は別の戦いが同時進行していた。陽の光が当たらない戦いは、いつの世にも存在している。

別の戦いを少し覗いてみよう。

「フレア」

その言葉と共に、赤い閃光が森を照らした。

遅れてくる爆音。

その爆発地点にいるモノが、ゆっくりと立ち上がる。

「し、しつこいのであるっ!!フレア!フレア!フレア!」

魔の森の濃密な魔素により、普段は連発不可能な魔法を連射する。

魔法の着弾地点には半径10m程のクレーターが出来ていた。

その中心にいた魔物に動く気配はない。

「はぁはぁはぁ。やっと、倒せたで、ある」

いくら魔力の回復が早いとはいえ、ゲボルグは膝に手をつき疲労困憊の様子だ。

「待っているである!死ぬなよレビン!」

疲れていたゲボルグではあったが、自身の子供と同じような年齢のレビンを助ける為に奮い立つ。そこに……

「あれ?ゲボルグさん?どうしたんですか?こんなところで」

「えっ?」

ゲボルグは自身の身の危険が伴う魔物との戦闘により、周囲に注意を払えていなかった。

レビンはレビンでまっすぐ帰ろうとしたのだが、爆発音が気になりここへと向かってきたようだ。

ダークエルフがまだ何かしているのかもと思ったのだ。

「レ、レビン?どうして?」

「どうしてって…あっ。戦争は終わりましたよ。エルフの国は復興に向かってます」

レビンから告げられた言葉に、ゲボルグは脱力した。その脱力は本気のものであり、魂まで身体から抜け落ちたように見えるものだった。

「えっ!?どうしました!?まさかさっきの戦闘で怪我を!?」

「バカモンっ!勝手に飛び出しおって…はぁ。無事ならいい。それより話を聞かせてくれ」

レビンにとってはただの森。

しかし、ゲボルグにとってレイラ宅からエルフの国までの道のりは、命懸けの旅路であった。

もちろん中心部は避けて迂回していたのだが。

何はともあれ無事に合流できた二人は今度こそ帰路に就いた。



最速で。最短で。真っ直ぐに。何処かで聞いたフレーズの様に、レビンは魔の森を突っ切りレイラ宅へと三度辿り着いた。

今回はゲボルグと共に。

「ただいまぁ!レイラさん!あっ間違えた!ミルキィママさん!」

レビンはエルフが……いや、レイラの最愛の人が生きているという喜ばしい報告が出来ることにより、色々と見落としていた。

「おかえりなさい。色々悪かったわね」

入り口を開けて中に入ると、いつもの声がレビンを出迎えてくれた。

「気にしなくて良いよ。それよりレイラさんは?」

「…ママにそんなに会いたいのかしら…?私より?」

レビンの挨拶に答えたのは、なんとミルキィだった。しかし、レイラに良い報告が出来ると長い帰路でずっと思っていたので、当たり前のようにいつも隣にいた人物が目覚めた事実に、レビンは未だ 気づかない。

「ママ……えっ!?ミルキィ!!?目が覚めたんだねっ!!」

一度ミルキィをスルーしたレビンは『レイラさんはどこぉ?』とキョロキョロしていたが、異変に気付き二度見三度見をして、漸く現実を受け入れられた。

「えぇ。もう少しロマンチックな再会かと期待した私が馬鹿だったようね…」

「?ん?…兎に角良かったよ!体調はどう?今血を飲む?」

レビンは難聴系主人公を発症した。

「ママから聞いたわ。病気じゃないのだから気にしないで。それより……パパは?」

ミルキィはレイラから全てを聞かされていた。

初めは、とてつもない迷惑を幼馴染に掛けてしまっている事を悔やんでいたが、レイラから諭されて気を取り直していた。

気を取り直した後は、今度は戦争に向かったレビンと、未だ見ぬ父親の安否が心配であったが。もちろんレイラも。

「うん。その事について報告があるんだ。レイラさんにも一緒に聞いて欲しいんだけど…」

「私はここよ。良かったわ。無事に帰ってきてくれて。ゲボルグさんもお上がりになって」

トントンッ

どうやらレイラは2階にいたようだ。階段を降りながら二人の会話に割って入り、玄関で所在なさげに立ち尽くすゲボルグを迎え入れた。



「うぅ。パパ…よかった…」

ミルキィは起きて説明を受けてからは、レイラにずっと父親の事を聞いていた。

自分を愛していること。本当はそばに居たいという気持ち押し殺し、エルフの国の為に立ち上がったこと。

ミルキィは涙を流しながら喜ぶ。いや、安堵か。

レイラは涙こそ流さなかったが、感極まっている様子で肩を震わせ、色々な感情を押し殺していた。

「うむ。良かったのである。我はこれより家族の元。魔族の国に帰るのである。

レビン。これは魔族の国の場所を記したものである。

レビンなら容易く辿り着くであろう。もし興味が湧いたら来てみると良い」

魔の森で修行をしていたゲボルグは、レビンに巻き込まれたお陰で想定より早く修行を終えた。

ミルキィ元のパートナーが目覚めたので、ゲボルグ臨時パートナーはもう必要ないとゲボルグは考えたのだ。

レビンがどう思っていようと関係なく。

「ゲボルグさん。色々とありがとうございました。ミルキィと必ず行きますね!」

「うむ。楽しみにしている」

そういうとゲボルグは席を立った。

レビンが立ち上がり見送ろうとするのを、ゲボルグは手で制した。

『見送りは不要である』

そうカッコつけたゲボルグはこの後森で迷うのだが、それはまた別のお話。




レベル

レビン:80(179)

ミルキィ:99→0(99)

〓後書き〓

もう少しで完結です。楽しんで頂けているでしょうか?もし、そうであれば幸いです。

ミルキィが急に起きていて、驚いたことかと思います。少なくとも作者は投稿前に見直して驚きました。(あれ?こんな展開だったっけ?)と。

混血の吸血姫と幼馴染の村人

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