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混血の吸血姫と幼馴染の村人

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混血の吸血姫と幼馴染の村人

62 - お目覚めのお姫様と乙女心よりも複雑な父心。

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2024年01月16日

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ゲボルグが旅立った後、改めて3人で報告会を開いた。

「それじゃあミルキィママさんは血を吸われてもレベルダウンしなかったんだ。家族…血の繋がりのせいかな?」

血は繋がっていなくとも、レビンはミルキィを家族、又はそれ以上と認識しているので、言い直した。

「そうね。その可能性はゼロではないわ。でも、私は以前から思ってたの。レビンくんだからだと」

「僕?」

「ええ。ゲボルグさんの話だと魔族を救った魔王様もレビンくんと同じ黒髪だったじゃない?もしかしたらレビンくんはそういう種族の末裔なのかもしれないわ」

そういうとはどういう?とレビンは思うが、ここで大事なのはミルキィにこれからも自分の血を…レベルを吸わせても良いのかという事に尽きる。

「それも問題ないのじゃないかしら?これはもう二人の問題だからあまり口を出したくないわ。ミルキィがレビンくんと同じように魔王と呼ばれる強さを目指すなら、避けては通れない道よ。

後、これは想像だけれど、ミルキィは普通にレベルが上がらないか、もしくは普通にレベル99になっても眠りにつかないのじゃないかしら?

あくまでもレビンくんが言っていたレベルの消化はレベルドレインで得た分だけ。

そんな気がするわね」

レイラの話は信憑性も証拠もない。しかし否定できる材料どころか、むしろそうじゃないと違和感を感じるくらいには想像しやすかった。

二人はその話に一先ずの納得を見せ、以前のような無理をしたレベル上げはしないし、レベルドレインも必要以上にはしないが、『気にしない』と結論づけるのであった。

いかにも二人らしい答えに、レイラは『若いって良いわね』と思ったが、自分もまだまだ若いと、すぐに心の中で否定するのであった。



その日の夜。

「パパはいつ頃来れるのかしら?」

ミルキィとレビンは寝室で遅くまで語り合っていた。

二人がこれだけ離れていたのは、もちろん生まれて初めての事。

片方は寝ていただけとはいえ、積もる話が積もり積もっているのだ。

寝室が同室なのは、もちろんレイラの策略である。

「うーん。バーンナッドさんは王様だからなぁ。でも、ミルキィとレイラさんにめちゃくちゃ会いたがってたから、意外に遠くない事かもね」

「そう。それより貴方。声が低くなったわよね。それに背も高くなってるし…」

「そう?自分では気づかなかったなぁ。そういえばズボンが短くなった気がする…」

レビンは服の心配を。ミルキィは男らしくなり、さらに魔王と呼ばれるほど強いレビンに危機感を持った。

もちろん女性関係の話だ。

「エ、エルフの皆さんは、みんな噂通りの美人だったのかしら…?」

「?そうだね。バーンナッドさんも美男子って感じだったよ。僕の父さんとは大違いだ!ははっ!」

何がレビンの笑いのツボなのか……

「美人だったのね…まさか…誰かといい感じになっていないわよね?!」

「いい感じってなに?みんな良くしてくれたよ?虐められてないから、会っても怒っちゃダメだよ?」

(…はぁ…レビンが少し大人びていたから焦ったわ……レビンはレビンね。それも困るけど…)

乙女心は複雑なのである。

「ああ。でも、ミルキィより美人な人はいなかったなぁ」

『ミルキィってやっぱり美人なんだね』と続けたが、ミルキィには聞こえていない。

ミルキィは顔を真っ赤にして狼狽えている最中だったからだ。

その後、まともに話が出来なくなったミルキィを置いて、レビンは先に眠りへと就いた。



翌朝ミルキィの顔には濃い隈が出来ていた。

「凄いわね。100日くらい眠っていたからだけど…貴方、強くなりすぎよ…」

ミルキィは無双しているレビンを見て、そう伝える。

「そうでしょ?このくらい朝飯前だよ!」

そう返事をしたレビンはミルキィに力を見せつけているのだが……

別に無駄に魔物を狩ったりしているわけではない。

「レビンくん。お茶が入ったから休憩にしましょう?」

「はーい!」

相変わらずの土木作業をしていたのだ。



リビングのテーブルにて。

「それで?どうだったの?」

温かいハーブティーを出しながら、レイラが問う。

「ばっちり。ちゃんとレベルは上がったよ」

「そう。やっぱりレビンくんだけのようね」

そう話すのはレベルドレインの事だ。

しかし、実母の前で異性の血を吸った会話をされたミルキィは、顔を赤くして俯いてしまう。

それを見たレビンは『ヴァンパイアって血を吸った話が恥ずかしいのかな?』と的外れな感想を抱いたのだった。

ミルキィはレビンが好きな事をとっくの昔にレイラへと伝えていた。

つまりは…そういうことだ。

そんな娘の反応を嬉しそうに眺めるレイラ。

何か言えばそれは間違いで、必ず後から怒られるのがわかっていて、何も喋れないレビン。

穴があったら入りたいミルキィ。

三者三様の想いが交錯したティータイムとなった。

そんな風に時に作業に従事して、時に二人で出かけたりしながら暫くの時を過ごした。



そして、家族が揃う日が15年振りに訪れた。

「今日も寒いね。ここには雪は降らないのかな?」

「そうね。ナキ村だと家から出られないくらいは積もっている時期ね」

ここにきて数ヶ月。年を越え、今は冬の中でも寒さが一番厳しい時期だ。

「ここは魔素のお陰なのか雪が降らないのよ。村で初めて冬を迎えた時は驚いたわ」

レイラもナキ村の冬の厳しさを知る一人だ。

「僕はナキ村以外での冬は初めてだから、雪が積もらない冬は変な感じだなぁ」

「私もよ」

子供たちは雪の子である。雪が降れば大人はげんなりするが、子供にとっては雪もオモチャの内。

和やかな時間が流れる中、最初に気付いたのはレイラだった。

急に走り出したレイラを見て呆気に取られるレビン。

遅れて魔力探知で気付いたミルキィだったが、ここには自身とレビンがいる。

(だけど…この魔力は…)

魔物ではない。そう思ったミルキィはレビンの様子を伺う。

レビンは元々良かった視力に高レベルの補正が掛かり、常人では見えないところまで見ることができる。

遠くを見ていたレビンだったが、視線をミルキィに戻し伝える。

「ミルキィ。僕は夕方まで散歩に出掛けてくるね」

「な、なんでよ?私も行くわ」

「ダメだよ。ミルキィはここでレイラさんが戻ってくるのを、もう少し待っててあげて。それで僕が出かけたのをちゃんと伝えるんだよ」

ミルキィは気付いていた。

しかし、いざとなると怖いのだ。

それに気付かないレビンではないが、これは三人・・の問題だと考えていた。

生まれて初めて幼馴染を拒絶したレビンは、遠くで抱き合う二人をもう一度確認すると、反対方向へ向かって歩き出すのであった。


「ママ…」

レビンを見送ったミルキィの元へ、二人がやってきた。

しかし、どうしていいのかわからないミルキィは、母親に涙目で懇願する。

まるで幼子のように。

「ミルキィ。…あら?あの子にはどうやら気を遣わせたみたいね」

レビンがいない事の意味をすぐに理解したレイラは、隣に立つ男性の背中を押した。

どうやら男の方も、どうすればいいのかわからなかったようだ。

「君がミルキィだね。赤髪の美しい子。全てを見通す紫の瞳。そして私の愛しい娘。

君には苦労と迷惑を掛けた。

一体どんな顔をして会えばいいのか…あった今ですら、わからない……

こんな情けない父だけど、これからも君の父親でいさせてくれないだろうか?」

一国の王であり、数々の責任やプレッシャーの中で生きてきたバーンナッドだが、これほど情けない姿を晒したのは初めてである。

声が震え、足も震えている。

ミルキィはそんな父を見て『私だけじゃない…この人も怖いんだ』と、次第に落ち着いてきた。

「パパは情けなくないわ。他の人の為に、ママや私と離れる勇気と愛情を持った、立派な人よ!

私なら…きっと、無理よ。

私はそんなパパを尊敬しているわっ!

私の方こそパパは頑張っていたのに、ずっと死んだと思っていてごめんなさい。

ずっと、私のパパでいてくれますか?」

枯れたはずの涙が込み上げてくるほど嬉しいはず。それなのに、バーンナッドの胸中は複雑であった。

『それほどまでにレビンくんの事を……』

ミルキィが離れられない相手を知っているが故に。

もちろん娘に許されたどころか尊敬していると言われたバーンナッドは、一瞬そう思うも、すぐに天にも昇る気持ちになった。

「もちろんだとも!これからもよろしくね。ミルキィ」

「うんっ!パパ!」

3人は仲良く家へと入っていった。

話は山ほどある。しかし時間は有限なのだ。



「ただいま。時間があったから、遠出して鹿を狩って来たよ」

レビンの帰還であった。

バーンナッド以外の二人はレビンが加わっても変わらず話が出来るが、バーンナッドは別だ。

(くっ。帰って来てしまったか…)

まるで本物の魔王の如く恐れられていた。

「まあ!立派な雌鹿だわ!魔法を使えばすぐに食べられるように出来るから、今日はご馳走ね!」

狩ったその日に食せる事は、狩人でも中々ない。

色々な処置も必要だし、熟成した方が単純に美味いからだ。

内臓は出来るだけ早く食さなければならないが、レビンの出身地に内臓を食べる文化はなかった。

内臓は薬の材料など、他の用途として使われるので無駄はそれほどない。

ここには魔法の使い手がいる。そして種族特性として、あまい血抜きしかしていなくても後からしっかりと血抜きできて臭みも取れる。

解体はレビンも手伝ったが、料理となると別だ。


「こんな光景、夢みたいだよ…」

愛しの妻と可愛い娘が並び、キッチンで料理をしている。

その景色を見て感極まっているバーンナッドは言葉が漏れた。

そしてテーブルを挟んで座るレビンは自分に言われたと思い、それに応えた。

「二人とも料理上手なので楽しみですね!」

レビンは自分よりも先に娘の手料理を食べていた。その事実にバーンナッドは胸にナイフを突き立てられた思いをした。

「くっ!そ、そうなのか。それはたのしみだなあ」

棒読みだが、何とか平静を装い応えることが出来たのだった。

(レビンくんはエルフの…いや、私の救世主だ。しかし!それとこれとは別だ!)

やっと会えた娘が取られる危機に、バーンナッドは大人気ない対応を見せる。

「そうだ。レビンくんもご両親に会いたいだろう?明日くらいから10年ほど帰って来たらどうかな?」

「ぷぷっ。それってエルフジョークですか?10年は人族には長すぎますよ。

それに今ナキ村は雪に閉ざされているので、魔法が使えない僕一人だと帰れないで…あっ。ミルキィに頼めば……『ダメだっ!!』えっ?」

レビンはバーンナッドがジョークをいったのだと勘違いした。

そして、バーンナッドにしてみれば本末転倒な、娘を連れ去られる話に変わっていたので慌てて否定した。

バーンナッドを待つ期間にミルキィはレイラに魔法を習っていた。

魔法の適正が高いミルキィは、短期間で水と火を操れるようになっていた。

レビンはその火魔法を使ってもらう算段だったのだ。

莫大な量の雪を溶かすには魔力の多いミルキィでも魔力が足りないが…レビンは小さな事は気にしないのだ。

そんなすれ違いの二人の会話だったが、バーンナッドのあまりの勢いに、場が静まり返ってしまう。

「あ、いや、その、ジョークだよ!エルフジョーク!こんな真冬に旅をさせるわけないじゃないか!はっはっはぁ…」

最後はため息になってしまった。




レベル

レビン:80→79(179)

ミルキィ:0→1(100)

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