テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
💛「もしもし」
照は部屋のソファに座り直した。
母の声は少し焦っていたが、切羽詰まった様子ではない。
「照、お父さんがね」
照は思わず背筋を伸ばす。
💛「何かあった?」
「大したことじゃないの」
「腰を痛めちゃって」
照は胸をなで下ろした。
💛「びっくりした」
「病院にも行って、お医者さんからもしばらく安静にって言われたから大丈夫」
💛「そうか」
「でもね」
「家のことが少し大変で」
母は少し申し訳なさそうに続ける。
「無理じゃなかったら、一度帰ってこられる?」
照はカレンダーを見る。
今週末は珍しく何も予定が入っていない。
💛「帰るよ」
「本当に?」
💛「うん」
💛「そのくらい何とかする」
母は安心したように笑った。
「ありがとう」
────────
土曜日。
照は実家へ向かった。
久しぶりの実家。
玄関を開けると、母が笑顔で迎える。
「おかえり」
💛「ただいま」
リビングへ入ると、父がソファで苦笑していた。
「悪いな」
💛「無理したんだろ」
「庭の木を切ろうと思ってな」
💛「業者呼べばいいのに」
「まだ若いつもりだった」
照は呆れながら笑った。
💛「もう若くない」
「言うようになったな」
親子で笑い合う。
────────
昼過ぎ。
照は庭の片付けをしていた。
父は窓越しにその様子を眺めている。
「大きくなったな」
母が微笑む。
「昔は照が転ばないか心配して見てたのに」
「今じゃ頼る側だ」
────────
夕方。
作業が終わり、三人で食卓を囲む。
母の手料理。
久しぶりの味だった。
「仕事はどうなんだ?」
父が尋ねる。
💛「忙しい」
「でも楽しいよ」
父は満足そうに頷く。
「そうか」
少し間が空く。
「そういえば」
「辰哉くんとは元気か?」
照の箸が止まる。
父も母も、高校時代から辰哉のことを知っている。
照は少しだけ照れながら笑った。
💛「うん」
💛「元気」
それだけ答えた。
でも、その表情だけで十分だった。
母は父と目を合わせ、小さく笑う。
────────
その夜。
帰りの電車。
照は窓の外を眺めていた。
スマホが震える。
💜「実家どうだった?」
照はすぐに返信する。
💛「父さん元気だった」
💛「腰は痛そうだけど」
すぐに返事が来る。
💜「安心した」
💜「今度帰ってきたら、ご飯でも行こ」
照は笑う。
💛「行こう」
────────
電車が本社の最寄り駅へ着く。
ホームへ降りた照は夜空を見上げた。
実家も。
本社も。
支社も。
帰る場所はいくつかある。
でも。
心が一番落ち着く場所は、もう決まっていた。
照はスマホの待ち受けを開く。
辰哉と撮ったあの日の写真。
💛「あと少し」
そう呟いて歩き出した。
その頃、支社では。
終業間際の辰哉が、部長に呼び止められていた。
「深澤」
「来月から新しい後輩が入る」
「その教育係を任せたい」
辰哉は驚きながらも頷く。
💜「分かりました」
新しい出会い。
それが、これから二人の日常に小さな変化を運んでくることになる。
2,625
9,447
junp
1,806
コメント
1件
第32話、読み終えたよ〜!🌸 照くんの実家帰省エピ、めっちゃほっこりした😭💕 親に「辰哉くんとは元気か?」って聞かれて照れる照くん、その一言で全部伝わる感じがエモすぎる…! 「心が一番落ち着く場所はもう決まってた」のくだりで胸がぎゅってなったよ💛 ラストの辰哉side、新しい後輩の教育係…!?今後の展開が気になりすぎる…!続き待ってる〜!✨